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月の沙漠 (柳井はるみ)。

柳井はるみ歌唱による「月の沙漠」。日本の名歌百選にも入る名作童謡で、大正12年春に押し絵作家の加藤まさおが作詞、少し間を置いてから佐々木すぐるが曲を付けました。昭和期に幾多の自作曲をレコード化した佐々木ですが、其の楽曲中でも最初に評価を得た歌でもあります。作詞者は講談社発行の少女倶楽部に連載を持っていた売れっ子作家でしたが、結核を患いまして千葉県の御宿で療養生活に入りました。「月の沙漠」はそこでの療養中に思い付いたとされますが、題名の「沙漠」の沙は砂浜を指しており、其の言葉から発せられる雄大なイメージを持つ海外のそれとは違うものです。三番から成る歌詞は少女趣味的な幻想を纏っており、物語には白い上着を着て駱駝に跨がり沙漠を旅する王子様とお姫様が出て来ますが、其の白い上着が何を意味するのか、意味深さが漂います🌓。

さて柳井はるみが歌う当曲ですが、最初はヒコーキレコードから昭和7年初夏に発売され、其の数ヶ月後に同レーベルとオリエントが統廃合された、一枚80銭のリーガルレコードから再登場。引き続き「月の沙漠」の再発売盤は大変好評でして、昭和10年頃でもカタログに残っていた程です。歌手の柳井はるみとは、此の年デビューしたばかりの松島詩子の変名で、コロムビア黒盤から「ラッキー・セブンの唄」で御目見えしました。井田一郎の編曲で、前間後奏のメロディは明らかに彼が付け足した旋律であり、寂しげな沙漠の宵闇と道中を想起させます。松島詩子のコロムビアでの録音は大半が柳井名義であり、一部の楽曲を除いて全てリーガル盤からの発売でした。その中にあって「月の沙漠」は彼女の初のヒット曲だと言えるでしょう。裏も彼女が歌う「青い鳥」が組まれました😀。

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