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浮草の宿 (春日八郎)。

春日八郎の歌う「浮草の宿」。服部鋭夫作詞、江口夜詩作曲で、戦後派男性歌手として大活躍した春日八郎の全盛期の一曲です。本名は渡部実、大正13年生まれで故郷は福島県会津坂下町でした。就職も兼ねて上京し、東洋音楽学校に学んだ後に応召されましたが、幸運にも台湾で終戦を迎えます。復員後、一度は地元に就職するも歌手への夢断ち難く、キングレコードのテストを受けて合格となりました。しかしすぐにデビュー出来る訳でもなく、せっかく入れた歌がお蔵入りになるなど苦労を重ねる羽目に。そして昭和27年に出した「赤いランプの終列車」がホームランとなって、以降は人気歌手としての忙しい日々が始まりました。時に数週間に及ぶ地方巡業を行う事もあり、移動の車中で新曲の楽譜を受け取っては、帰京した折にまとめて録音と云う過密スケジュールだったのです😓。

「浮草の宿」はその多忙最中に入れた一曲で、しんみりした裏町調流行歌です。4番構成で、静かなギターの音色が聴く人を夜の港町の居酒屋へと誘います。一夜泊まりのマドロスが酒場を訪ねると、カウンターには幸薄な一人の女。見ず知らずの二人は盃を手に夜更けも忘れて身の上話に興じ、やがて朝が訪れるとマドロスは別れを告げて航海へ…。曲名の浮草とはそんな明日なき日々を送る男女を指しているのでしょうか、小節の聴いた春日の高音が切なさを歌い上げておりました。作曲者の江口夜詩は若い頃は軍艦に乗っていたので、船員の気持ちを描いた歌には定評がありました。作詞の服部鋭夫(1920〜1990年代?)は東海地方在住の詩人で、同じく春日が歌った「長良川旅情」も手掛けております。裏面は西村つた江の「せめてものブルース」で、昭和31年に発売されました😀。

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