恋ごころ (井上ケイ子)。
井上ケイ子の歌う「恋ごころ」。西崎義輝作詞、福島信夫作曲とありますが、作曲者はその名前が示すとおり古関裕而の変名です。これと言ったヒット曲が出ないまま迎えた専属2年目、彼は他に新條純一の云う名前も用いて、二軍レーベルにも楽曲を提供する様になりました。コロムビアレコードでは「期待の新星」と目されていた古関裕而も、当時は相当肩身の狭い思いをしていた訳です。さて丁度その時期は四家文子や藤山一郎に代表される様な、特に官立の音楽学校で学んだ人材が求められており、特に有望な在学生には各レーベルからスカウトとアルバイト録音のお話しが舞い込んでいました。そんな時代、昭和7〜8年の短期間だけ流行歌を吹き込み、後にソプラノ歌手として活動したのが井上ケイ子です。明治44年生まれで、当時はまだ東京音楽学校在籍中の21歳の才媛でした🎼。
春の行進曲 70939(H)
八重子の唄 70942(H)
大京都行進曲 26978(黒)
海のメロディ 29079
くちづけ 70985
仁川行進曲 27017
はつ恋 27039
今宵の涙 27040
新八戸小唄 27108
新大館小唄 27109
見果てぬ夢 65708(R)
恋ごころ 65709(R)
うす雪小唄 27294
以上、延べ13曲をコロムビアとその傘下のマイナーレーベルに残しましたが、実際はもう少し録音があるかと見ています。卒業後は校歌のレコードの録音、またある時はラジオで国民歌謡を担当したそうですが、いずれも堅実で派手さのない声楽家として活動しました。此の「恋ごころ」は、スローテンポのワルツで書かれた清楚なラブソングで、出だしの旋律はジャズソング「ハワイの唄」とよく似ています。全四番構成であり、間奏には二回バタ臭いメロディが出て来ます。編曲者井田一郎が付け加えた旋律かと思いますが、外国曲なのか彼のオリジナルなのかは分かりません。秋の夜長、気になる男性を仄かに想う乙女心のホワンとした心情がよく現れており、この様な健全で癖のない楽曲は福島信夫=古関裕而の得意とするところでした。レコードは昭和7年暮に発売されています😀。