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紺屋高尾の唄 (音丸)。

音丸の歌う「紺屋高尾の唄」。深草三郎作詞、明本京静作曲とありますが、深草とは明本が作詞をする際の変名です。紺屋高尾とは元々は落語の演目であり、さらには浪曲化されてより有名になるのです。物語は江戸時代、神田紺屋町の染物屋の奉公人久蔵は遊んだ事のない大変真面目な男でしたが、ある時町中で見た高級花魁の高尾大夫に一目惚れ。主に大名や豪商を常連とする花魁は高嶺の花であり、久蔵は悲嘆に暮れます。せめて一晩でもと、彼は以降三年掛けて花代の十両を貯め、金持ちのフリをして御座敷へ。憧れの高尾を前に感極まった久蔵は自らが奉公人である事を明かし、そして次に会えるのはまた早くても三年後と別れを惜しみます。ずっと自分を想っていてくれた事に心打たれた高尾は、年季がもうじき明けるので、そしたら自分を嫁に貰って欲しいと告げるのでした🥰。

一途な恋が苦労の果てに成就すると云う、日本人好みの物語故か先述した様に落語以外でも歌や映画になって親しまれました。此処に入れた音丸のバージョンは三番構成であり、豊吉と小友の二人の弾く三味線に尺八、オーケストラ伴奏と云う出来です。例え花魁だとて、高尾は一途な男気に惚れる…末鍋下げても紺屋の女房、一生あたしは主の側…そんな彼女の心境を三十路前の音丸が奥床しく歌いました。音丸は既婚者であり、元々は民謡歌手をしながら嫁ぎ先の麻布の下駄屋の御内儀をしていました。御座敷経験がない為か、花街の艶っぽさが今一つ薄いのですが、そこがまた彼女の魅力でもあったのでしょう。高尾大夫が客の熱意に絆されて華やか世界から職人の女房になったのに対して、音丸は逆に下駄屋の旦那と別れ、芸能の世界へと羽ばたいたのは、何処か皮肉なものですね💬。

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