「股旅道中」 (立花照也)。
立花照也の歌う「股旅道中」。野村俊夫作詞、関美津男作曲で、東京の独立系マイナーレーベルである、ショーチクレコードからリリースされています。この会社はやはり“ショーチク”と呼ばれ、京都にあった昭和蓄音機(後のエトワールレコード)とは全く無関係でして、新譜の登場は昭和9年と他の同規模のレーベル比較して遅いスタートを切りました。販路は一般のレコード店ではなく、銀座などの繁華街に立ち並ぶ数々の夜店であり、無名のポータブル等と共に数十銭単位で売られていました。此の会社のマークは、日本から撤退して間もないパルロフォンのロゴを反転させて無断使用すると云う、今なら裁判沙汰必至の盗用を行うなど随分豪気な話ですが、著作権や商標権に関する配慮が希薄で、其の所在も曖昧だった当時は、驚く事もない日常茶飯事だったと言えるでしょう😁。
「股旅道中」は其のタイトルが暗示している様に、東海林太郎のヒット曲である「旅笠道中」を意識しており、実際イントロの僅かな箇所はそっくりパクっています。もっともそれ以外はオリジナルのメロディであり、ギリギリセーフと言ったところ。三番構成の明るい旋律で、作詞は「忠治子守唄」や湯の町エレジー」に「東京だよおっかさん」を書いた野村俊夫、作曲者の関は「大利根月夜」「君忘れじのブルース」の長津義司でした。従って一流の作家によって製作されているので、メジャーとも張り合えるレベルの一曲であり、特に長津の存在はこれらのマイナーレーベル楽曲のレベルアップに繋がったのです。歌う立花照也は残念ながら何者かは分からないのか、中々良い声の持ち主。誰かの変名かも知れません。裏面は勝丸の「恋しやお柳」で、昭和11年頃の発売かと思われます🙂。