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逢ひに来るなら (中野忠晴)。

早くも秋たけなわ。と云う事で今夜は中野忠晴の歌う「逢ひに来るなら」を。佐藤惣之助作詞、古賀政男作曲で、デビューして一年目に於ける中野が歌った流行歌の一つです。昭和7年春に武蔵野音楽学校を主席で卒業した彼は、藤山一郎が抜けた後のコロムビア男性歌手陣強化の為に米倉俊英と並んで入社。その背景事情として、学生時代より公私に渡る付き合いのあった山田耕筰の勧めもあった様です。一般的にはロス五輪のテーマ曲である「国際オリンピック派遣選手応援歌」が彼の名を一躍有名にしたのですが、実際のデビュー曲は古賀作曲の「夜霧の港」でした。続いて古賀メロディでは「高原の唄」「武雄の唄」を歌い、それ以外では「浪子の唄」「恋しい青空」「山小屋の唄」を吹き込み、毎月に亘って中野忠晴の新曲が続々とリリースされ、猛プッシュが行われたのです🎼。

「逢ひに来るなら」は中野の為に書かれたのではなく、元々は朝居丸子が歌った新民謡「野州小唄」が原曲です。栃木県向けのご当地ソングとして昭和6年夏に発売されたのですが、恐らくは曲の出来を惜しんだ作曲者の意向で歌詞を流行唄に改めて再登場したものと思われます。詩は四番構成、三日月光る秋の宵に薄野で逢おうという内容ですが、サビの🎵逢ひに来るなら濡れる気で…とは、何やら艶気ある展開が待っている様な。奥山貞吉が編曲しており、伴奏にはバンジョー、クラリネット、フルート、サックスなどが用いられており、静かな秋の夜を想わせるサウンドでした。録音は昭和7年のお盆明けに行われたのですが、どうにも中野の歌声には冴えがありません。もしかしたら夏風邪に悩まされての録音だったのかも。裏面には関種子の「愛は紅ひ」が組まれていました😀。

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