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軍国夫婦郵便 (塩まさる・新橋みどり)。

塩まさると新橋みどりの歌う「軍国夫婦郵便」。佐藤惣之助作詞、毛利清美作曲の戦時歌謡で、戦地と銃後の夫婦のやり取りを描いた、所謂“便りもの”でした。盧溝橋事件に端を発した日華事変は、局地紛争に留まらず戦火は全面戦争へと拡大して行き、中華民国の首都南京が陥落しても尚、中国軍は奥地の重慶に政府を移して抵抗を持続し、とうとう泥沼化してしまいました。内地では農家の働き手や家族の大黒柱達に次々と赤紙が届き、方々の駅頭から多くの男性達が出征して行く光景は日常茶飯事となり、その世相を反映した歌が次々と書かれました。特に上原敏の「上海たより」は大ヒットし、似た様な歌も続々と現れます。ひたすらに「聖戦遂行」や「愛国精神」を掲げた歌よりも、一兵士の故郷や家族への想いを綴った内容の歌が受けるのは、当然と云えば当然なのでしょう🎼。

「軍国夫婦郵便」は7番構成で、男女互いに一番づつ歌い、最後のみ共唱という当時のデュエットソングの典型的な作りになっています。出征兵士を塩、新橋が家を守る妻を演じながら歌っており、歌詞は国への赤誠を尽くすと言った感じの戦時下らしい内容でした。メロディはマイナー調の至ってシンプルな出来で、何処となく美ち奴の「あゝそれなのに」を思わせる気だるい感じですが、不思議と泥臭さが薄いキングらしいサラッとしたサウンドです。此の様なシンプルで身軽なタッチは編曲を担当している細川潤一の得意とする所。歌う塩まさるは福島県平(現いわき市)の出身で、大学卒業後は鉄道関係の仕事をしておりました。昭和12年に29歳で歌手デビューし、最初に売れたのは「軍国子守唄」。暫くキングで歌った後、テイチクへ移籍し「九段の母」が大ヒットしています😀。

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