見出し画像

あなたのあたし (杉狂児、市川春代、松平晃)。

杉狂児、市川春代、そして松平晃の歌う「あなたのあたし」。山崎謙太作詞、原野為二作曲で、日活多摩川作品第一号として製作されたトーキー映画「花嫁日記」の主題歌です。作詞を手掛けた山崎の原作で、監督は渡辺邦男が担当。出演は杉、市川の他に星玲子、松本秀太郎、北原夏江らに加えて松平晃が歌手役で出て来ます。日活は京都の大将軍撮影所など幾つかのスタジオを持っていましたが、元々多摩川撮影所は昭和8年に倒産した日本映画と云う会社が所有していました。間を置かず日活が買収し、そして今も角川映画の管理下にあって残存しています。「花嫁日記」は一時間余りの喜劇映画だそうですが詳細は分かりません。復刻盤解説書掲載の写真を見ると、和装で愛くるしいルックスの市川と若々しい杉、何よりも二枚目俳優にも劣らない松平晃の笑顔が印象に残った次第です⭐️。

主題歌「あなたのあたし」は、原野為二(池田不二男)の作曲で、ワンコーラスあたりAメロとBメロに分かれています。一番では松平が、二番で杉が歌った後で斉唱になり、そこで市川春代が舌足らずな歌声を聴かせてくれます。歌は本職でない為、素人臭さが拭えない点は御愛嬌と言った感じですが、そこを可愛いさで補っていました。明るい夢見心地なメロディ、特に市川のソロパート♬紫の幕を下ろした乙女の日…のキーが上がる箇所が一番のポイント。満ち溢れる幸福感の中に見え隠れする、処女の日々への惜別を綴っているのです。此の曲は当時日本公開されたドイツ映画「会議は踊る」の主題歌である“唯一度の恋”が影響されているとされ、確かにサビの箇所に其の影響を感じますが、曲の完成度の高さは原野自身の旋律と、名アレンジャー仁木他喜雄の手腕にあると言えるでしょう😀。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?