戦場の子守唄 (東海林太郎)。
土曜日は戦時歌謡を中心にお届け致します。さて今夜は東海林太郎の歌う「戦場の子守唄」。佐藤惣之助作詞、服部逸郎作曲の戦時歌謡です。日華事変勃発以降各レーベルから続々と戦時歌謡がリリースされてヒット曲を競う中、東海林太郎もまた「麦と兵隊」や「上海の街角で」等を始めとして、此のジャンルでも頭角を表しておりました。またポリドールで曲を提供していた作曲家も従来の大村能章や阿部武雄に加えて、倉若晴生や長津義司、そして鳴瀬純平達も加わってバラエティー豊かな陣容を呈します。其の一人として新たに加わったのが“レイモンド服部”こと服部逸郎。しばらくの間はコロムビアでモダンな流行歌を提供していましたが、移籍してからは彼もまたポリのカラーに沿ったより大衆的な楽曲を多く手掛けて行くのです。東海林とは「忠治子守唄」が大ヒットしました🎼。
「戦場の子守唄」は凡そ時局歌にしては勇壮さとは違う感傷的なメロディで、知る人ぞ知る一曲。内容は大陸で出会った戦火で母を失った赤ん坊を日本軍の兵士が抱き上げ、そして涙して憐れむという内容です。暫しの間子守唄を聴かせては、敵地の子供であれど何が憎かろう…と云う、崇高な日本軍兵士の心情を東海林の寂しく、そして呟く様な歌い方が印象に残りました。作詞の佐藤惣之助といえば、既に東海林の「赤城の子守唄」を作詞しており、恐らくは其の実績を元に此の曲を書いたものかと思われますが、其の様な制作背景を踏まえても尚胸打つものがあります。一番の結び“戦場は、男ばかりで乳はなし…”には、戦地でのどうにもならない現実と、救いの無い悲しみが溢れているではありませんか。裏面は上原敏の「軍旗の下に」で、レコードは昭和14年春に発売されています😀。