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梅と兵隊 (田端義夫)。

田端義夫の歌う「梅と兵隊」。南條歌美作詞、倉若晴生作曲で、彼の歌った時局歌謡の中では大変よく売れた一曲です。昭和14年にオーディションに合格して住み込みで修行した後、晴れて「島の舟唄」でポリドールからデビューした彼は、同年に「大利根月夜」がヒットして間を置かずに売れっ子歌手になったのですが、時は日華事変の真っ只中。彼も其の渋みあるその歌声を持って此の方面に進出する事になり、体制賛美の国策歌謡よりも現場の兵隊目線の歌に於いて、唯一無二の旨味を発揮するのです。「国境千里」「月下の歩哨線」「祖国へ一路」など、他社の戦時歌謡とは違う大衆好みの楽曲を次々と歌い、東海林太郎が抜けた後はポリドールの看板歌手として上原敏に次ぐ存在となりました💬。

「梅と兵隊」は女流歌人である南條歌美(1890〜1973)の作詞。肌寒い戦線の片隅に咲き香る梅の花に故郷の母を想い出したり、塹壕での休憩時に友と語り合ったりと、飾らない兵士の姿が歌われています。シロホンやアコーディオン、バンジョーが奏でる心地よいサウンドをバックに、バタヤンは鼻唄気分で朗々と歌っており、発売されると忽ち好評を得ました。三番まである歌ですが、演奏時間三分とないシンプルなメロディというのもヒットの決め手になったと言えるでしょう。南條歌美は女性流行歌作詞家の走りでしたが、故郷である徳島県三好市(旧池田町)には彼女の功績を讃えて此の歌の歌碑が建立されました。其の際は田端と作詞家の石本美由起も除幕式に招かれたとの事です😀。

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