神風だから (小林千代子・波岡惣一郎)。
小林千代子と波岡惣一郎の歌う「神風だから」。豊坂のぼる作詞、中山晋平作曲で、『神風』と言っても神風特攻隊ではありません。昭和12年5月、ロンドンで挙行されるジョージ6世の戴冠式典に向け、朝日新聞社による日本からイギリスへと親善飛行が企画されましたが、その機体に付けられた愛称が「神風」なのです。使用するのは三菱が開発したキー15と云う機体で、後に有名になる九七式司令偵察機のプロトタイプでした。飯沼、塚越両飛行士がパイロットに選抜され、同年4月6日に立川飛行場を離陸。94時間17分56秒で15000キロを飛んで、3日後にロンドンに着陸を果たし世界記録を刻みました。日本の航空機の高性能ぶりが知らしめられた瞬間でもあり、内外に大きく報じられた事は言うまでもありません。早速此の偉業をテーマに歌が製作されたのでした🎼。
ビクターでは「亜欧記録飛行成功記念」と銘打って、作曲を大御所の中山晋平に委ねました。作詞は恐らく公募と思われ、A面「神風音頭」は“飯塚飛雄太郎”と云う、如何にもなPNの人の歌詞が選ばれ、B面の「神風だから」は豊坂のぼるの歌詞が採用されます。全五番の歌詞で、陰旋法ながらサラッとした軽いメロディ。一番と五番がデュエットで、他は小林と波岡が交互に歌いました。シンプルで覚え易い歌であり、イントロにはプロペラ音が挿入されて細やかながら臨場感ある演出。間奏の一部は鈴木静一が手掛けて、大空に挑む勇壮な二人の飛行士の決意が感じられます。歌う一人、波岡惣一郎はこの年デビューした新人歌手で当時27歳。折しも戦争の時代であった為に、殆ど戦時歌謡がメインでした。戦後も新曲を出し続けるも病に倒れ、昭和26年に41歳で亡くなっております😢。