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乙女の丘 (菅原ツヅ子)。

空いてしまいましたが、また手元のレコードネタを。菅原ツヅ子の歌う「乙女の丘」。萩原四郎作詞、倉若晴生作曲で、当時テイチク一の人気女性歌手だった彼女が吹き込んだ内の一曲です。昭和2年に青森県に生まれた彼女は、実父で作曲家の陸奥明の影響を受けてか、子供の頃より音楽の才能に目覚めました。テイチクのテストを受けて、古賀政男作曲の「小楠公」を吹き込んでデビュー。その齢僅か10歳。また古賀の養女になって数年間は古賀久子と名乗っております。その間に古賀の指導もあってメキメキと上達するのですが、彼がテイチクを去ったのが原因なのか養子縁組は解消され、父の元へと帰った後で芸名も本名へチェンジ。昭和15年に映画「風の又三郎」の同名主題歌を歌いますが、戦時歌謡が溢れる中で頭角を表すには難しく、有名になるのは戦後になってからでした🎼。

「乙女の丘」は戦前に流行した“荒野もの”を思わせるメロディで、伴奏には鈴、マリンバ、バイオリン、マンドリン、ピアノ、フルートなどが使用されており、寒々しい秋の草原が浮かぶ様な雰囲気です。弦の響きが北国情緒をより滲ませていて、笛の音色は秋風の様であり、作曲者倉若晴生の才能を感じる編曲でした。歌詞は田舎の山里に一人残った乙女が、過ぎ去った恋の日々や遠い東京へと嫁いだ姉を思うと云う内容であり、今の様な情報化社会でなかった当時の人々が抱えていた孤独感が窺えます。菅原の歌声はいつものウネリあるもので、しばしば“女バタヤン”と揶揄されましたが、これは偶々耳にした朝鮮の女性歌手の歌う向こうの流行歌に感化され、その歌唱法を真似たとか。カップリングは白根一男の「君と別れて」が組まれ、レコードは昭和30年初頭に発売されています😀。


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