「参加」すること──自由の森学園の教育
なぜかふと「自由の森学園」が気になって、2冊ほど本を図書館から借りた。
『学校をつくりつづける ──自由の森学園の人と空間』自由の森学園出版プロジェクト編(桐書房 刊)
『日本で一番まっとうな学食 ──自由の森学園食生活部の軌跡』山本謙治 編著(家の光協会 刊)
これが、なかなか面白い。
5段階評価の通信簿をつけない、私立の中学・高校。
全寮制ではないが寮もあり、通学生も昼食で利用したりする食堂の食事がいろいろなこだわりに満ちていて。
しかし、1985年の開校から40年も経つ中で、時代も変わり、生徒たちの様子も多少変わり。さて、今はどうか――。
中でも、『学校をつくりつづける --自由の森学園の人と空間』の、序章「競争原理を超える学校づくり」で収録されたシンポジウム、そして卒業生でもある写真家が自分もクラスに"編入"させてもらいながら記した、飾りのない今の学園の様子がうかがえる第II章「『他者と出会う』ということ」に惹かれる。
シンポジウムの最後の方で、自由の森学園高校の鬼沢校長が「参加」の重要性について語っている。「競争原理」に基づき、優秀校への進学率などで教育が「商品化」されていく。それに対抗するすべとして、子どもたちや保護者による学校、学びへの「参加」がキーになるのではないか、といった話だ(P.52-53)。
ほかにこの本では卒業生たちの様々な声も収録されているのだが、そこでも、一人が「自由の森で得たものを一言でいうと」という問いに対してこう答えている。
「…難しいな。だって、要は、自分がどうしていくかが問題だから。何かがきっかけにはなるんだと思うんですよね。でもそれは、「自由の森」の中でも、「自由の森」以外でも、たくさんあって、それにどう突っ込んでいくかが問題。(後略)」(P.211)
それらの言葉は、「自由の森学園に行けば変わる」といった安易な「商品選び」ならぬ「学校選び」思考へのカウンター、と言うこともできるのではないか。
そして、第II章「『他者と出会う』ということ」では、「学びの自由」も重要なテーマとして触れられている。
たとえば、授業に出ないという「自由」が許されている状況は、どう考えたらいいのか。この章を綴る写真家で卒業生の竹内弘真さんは、同校高校の二十期生四組に”編入”して他の生徒と時間を過ごし、授業に参加しない生徒を見て、考え、こう書く。「サボりが認められて教室から生徒が一人減るたびに、それはほかの生徒の学びの自由がその分損なわれたということなのではとさえ感じてしまう。(改段)教員たちは生徒に、ともに授業をつくっていくという姿勢を求めているのではなかったのか」(P.116)
悩ましい。悩ましすぎる。
もう一冊の『日本で一番まっとうな学食』は、食堂、正式には「食生活部」と呼ばれる部門の取り組みにフォーカスした本。いかに添加物のない・農薬の少ない食事を提供するか、地産地消、顔の見える食材の取引、などなど。
この2冊を併読したのは、図書館のサイトで蔵書検索して出てきたというだけで偶然だったけれど、この学校のあり方や取り組みを知る上で、よかった。
今度、学園祭や音楽祭の折にでも、行ってみようかな。