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The Band『The Band("The Brown Album")』(1969)
アルバム情報
アーティスト: The Band
リリース日: 1969/9/22
レーベル: Capitol(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は57位でした。
メンバーの感想
The End End
「Jemima Surrender」の重たいリフに全てを持っていかれてしまった。牧歌的なのに挑戦的で耳が混乱する、死ぬほどカッコいい……!
やっぱり、歌に伴奏がくっついているものよりも、まずリズムがあるアンサンブルの方が好きだな……そしてドタバタしたドラムの音色がすごく魅力的だと思う。
『The Music from Big Pink』の時は正直に言ってこれといった印象は残らなかったのだが、これはすっごく楽しい。ビーチ・ボーイズやビートルズの張りつくような質感のそれとはまた違った柔らかいコーラスの音質も全体のムードによく合っているし、心地よい。
コーメイ
雰囲気のやさしさが、特徴であった。カントリー調のものや楽隊がバフバフ鳴らして行進しているようなものが印象的で、とくに、後者が、サイケやハードロックが多い潮流の中で、存在感を出していたように思われる。
桜子
聴いたらホッとするような心地があるのだけれど、ダレないように展開作られているので、単純に聴きやすいと思いました。ずっとピロピロなってるオルガンとかみんな好きだと思います。私は好きです。
湘南ギャル
泥くさい。泥くさくてノれる。前回扱ったザ・バンドの作品も遊び心は満載だったけれど、今回は聴いてる側にも遊ばせてくれる。草原でぽつんとすげー音楽やってた集団が、今は肩を組んで聴衆と踊っている。これ聴いて身体揺らさない人は嘘。
しろみけさん
カタルシスはないけど、冗長でも決してない。話半分で聞いてても和めるんだけど、ちょっと耳を傾けるとカリカチュアされたアメリカが博覧会のように並んでて、その合間に途方もないドラマを見出してしまう。ラグタイム〜ロックンロールの音楽史の流れを3分間で解らせる“Look Out Cleveland”は圧巻。この編成で奏でる音のイデアに近い。それでいて、絶妙に鼻にかかっていたり間の抜けたボーカルが入れ替わり立ち替わり出てくる愛おしさよ。
談合坂
やっぱりドラムの音が好きだ。スタスタしている小太鼓とボフボフしているバスドラムって気持ちがいい。なんだか際立って丁寧に作られたバンドアンサンブルという印象を受ける。コーラス同士、ギターどうしのユニゾンなんかの精緻さに自然と聴いていて意識が向かう。アウトロでの音のいなくなり方とかを取っても、これまで出てきたなかでこんなに整っているのってあまり無かったように思う。クリアな音でノれたらいつだって良い気分。
葱
セルフタイトルの作品について考える。バンドの総括的な作品も、新境地を見せるような作品もあるだろうし、一概には言えないが、少なくとも気合いは入った状態でリリースされるはずだ。
それでいうとこの作品には気合いというよりも、もっと肩の力の抜けた、開放的なムードが漂う。そもそもいわゆる「バンド」ではなく、「楽団」のような雰囲気を漂わせていた音楽家集団だったわけで、焚き火を囲いながら語らうようなこの作品がセルフタイトルなのはやはり合点がいく。
みせざき
良い曲はその曲の描く景色も含めてパッとみせることができるのが強みなのだと思った。最後まで含め本当に良い曲が多く、『Big Pink』よりもこっちの方が好きかもしれない。枯れの曲でもいなたさがあってもその中に希望を大きく見せてくれるような曲たちに感じる。
六月
前作よりもバラエティに富みながら、それでいて一曲一曲のクオリティが高いと感じた。とにかくソング・ライティングが強いバンドだったんだなあと思った。
そして、70年代の音がここから始まっているような気がする。この企画を聞いていて時代が切り替わったことを音で知らせてくれるアルバムがあるけれど、 特に「Whispering Pines」のオルガンとかにその雰囲気が克明に記録されている。
そのほかにも、「The Night They Drove Old Dixie Down」だったり、「Up On Cripple Creek」とかは、渋いけれども、重苦しさは感じられない楽曲が多くて、あまり肩肘をはらずに、楽しんで聴けるアルバムだった。
和田醉象
自分の道を突き詰めすぎている。。。
彼らに対していつも思うのは、サイケデリクスやら、ソウルやら、どれだけ時代の幅が振れていても、覇道を突き進んでいる!全くやりたいことだけ突き進めている鋭さだ。
彼らの映画やらインタビューやら目に通したこともあるが、やはり「これをやりたい!」という意志が第一にあり、それを貫き通すために燃えている(そして燃え尽きてしまった)という情熱の感触が強い。メンバー間の結束がこれまでに強く、そして作品が出続けた事実がとても嬉しく、そしてとても羨ましいほどだった。
これだけ一点に突き進んていれば曲ごとの印象は似通いそうだが、いずれもまとまっていて素晴らしかった。どの曲もクラシックとして取り上げ続けても違和感がないほどだし、聞かれ続けるに面白みが尽きないアルバムだ。リフのアイデア、ハーモニー、サウンドの構築、ムード、いずれも大好きです。一番好きなのは「Rag Mama Rag」、「Up On Cripple Creek」あたりかな。
渡田
行進をしながら弾いてるみたい。テンポが遅いカントリーな雰囲気の中、拍の一つ一つに音が詰め込まれている。密な雰囲気とゆったりした雰囲気がどちらもあって、旅行記のような音楽になるのだと思う。
次回予告
次回は、Beatles『Abbey Road』を扱います。