Curtis Mayfield『Curtis』(1970)
アルバム情報
アーティスト: Curtis Mayfield
リリース日: 1970/9
レーベル: Curtom(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は275位でした。
メンバーの感想
The End End
こんなに官能的な男性ボーカル、今までいたかしら。シナトラやジョニー・キャッシュの色気とはまた質を異にする、どこか中性的な印象のある声だと思った。プリンスや、バラードを歌う時のジェイ・ケイみたいな……?
そして、「Move On Up」のリズムセクションがとにかく最高!トーキング・ヘッズの「The Great Curve」なんかにも通じるせわしなさがありつつ、どうしてこんなに余裕を感じるんだろう。この曲があればいつでもノリノリで家事をこなせそう。名もなき日常へのセレブレーションを感じてとってもグッときてしまいました……
コーメイ
ジェームズ・ブラウンは、あまりハマれなかったけれども、このアルバムのソウルには上手く世界に入って行けた。というのも、歌手の独りよがりではなく、聴き手を想定しているアルバムという印象を抱いたからだ。全体的に疲れてどうしようもないときに、ふとこれらの楽曲を耳にすると、心がだんだんと温まって来て、最後には"これからも頑張るか"と思わせる内容となっている。そのため、聴いていて、楽しいのはもちろん、なんだか心に火をくべてくれたアルバムであった。
湘南ギャル
ちょっとスタイリッシュすぎるよ。10年代くらいのヒップホップコンセプトアルバムみたいな、そういうまとまりをこのアルバムは纏っている。異なる毛色の曲が入っていながらも、アルバムとして一つの世界を作り上げてるあの感じ。精巧で美しいこの世界に、ずっとこもっていたくなる。曲の少なさも曲ごとの短さも、ずっとちょっと聴き足りない感じで癖になる。何周させる気だよ。
しろみけさん
このランキングに入っているミーターズとアイザック・ヘイズ、何よりスライの、R&B/ソウルを刷新せんという気概がモータウンのスターと合流した瞬間。ジミヘンのワウギターの使い方をJB流のファンクの上でやったり、黒人文化の集大成のような一枚。何より「Move On Up」の全能感よ。世界中のBGMが一つに統一されるとして、その決定権が自分にあったら、後半のインストパートをリピートすると思う。そのまま色んな色の錠剤を噛んで、デカいジープに乗ってガソリンスタンドに突っ込みたい。
談合坂
ローエンドまでしっかり満たされた密度の高いサウンド。そのいわゆるハイファイっぽさ?ゆえにだろうか、ボーカルの繊細さがものすごい旨みをもたらしてくれる。聴いていると実際にはかなり張った録音がされているようにも思えるんだけど、なんだか強弱によってつけられる抑揚のニュアンスに意識を向けさせられる。リズムだけは巡行を続けるなかで、気持ちいい曲線を描いて旋回したり上昇下降したり。とにかく体をその場にはとどめておけない。
葱
体温を徒に上げるのではなく、常温のまま優しく昂らせてくれるような味わい。リズムの抜き差しをもって最小限の音の数で組み立てていく感じが好きです。
みせざき
内容はさることながら、カーティス・メイフィールドのボーカルが心地良い。心地良いというのは、技術的なうまさとかじゃなく、凄く人間的でカッコつけていなく、脱力感がある所が好きだった。ボンゴのような楽器が装飾になってるのも面白いし、アップテンポでどこか急かされているようなビートが後のヒップホップにも通じるようなバイブスを感じる。
六月
音割れ寸前のベースが鳴り響いた瞬間、このアルバムは只者ではないなと直感した。そして、それに乗せて一通りの人種差別用語が叫ばれるのにはウケながらその予感は正しかったのだとさらに姿勢を正した。そのあとも、ハープの音色など、これまでこの企画で聴いてきたR&Bでは聴いたことのない音がたくさん出てきて楽しかった。とにかくこれまでのブラックミュージックを刷新せんとする勢いやユーモアやアイデアが詰まっていて、最近この企画では辛気臭いロックが続いていたので、よりスカッとする清涼剤のように聴こえた。
和田醉象
ごめんけどあんまり好きじゃないかも!1曲目のホーン隊、2曲目のイントロのハープ(?)の音から胸焼けするぐらいのゴージャス感。リズム隊は好きなだけに入り込んでいける余地はあるんだろうけど今は無理。「Move On Up」はかなり好きよ。単体で聴く分にはOK。
これだけだとレビューとして微妙だなと聴き返してみる。アルバムの苦手要素は前半によっている。「Miss Black America」は結構好きだった。ジミヘンの歌心の部分もかなり好きだったから、そこの上位互換みたいな感じで聴けてよかった。こんな感じ。
渡田
パーカッションで散々煽ってから始まる歌い出しや、ハウリングするのがボーカルが、豪華さを演出してくれる。
同じフレーズの繰り返しで、緊張感を煽られる感覚は、ドアーズやストゥージズ等の不気味なロックでも覚えがあった。
ロックに対してソウル、R&Bはほとんど聞かないのだけれど、このアルバムのゴージャスさと緊張感の緩急は、ロックを聴く時の楽しさにも似ていた。好きになれたアルバム。
次回予告
次回は、Grateful Dead『American Beauty』を扱います。