Bob Dylan『Blonde on Blonde』(1966)
アルバム情報
アーティスト: Bob Dylan
リリース日: 1966/5/16
レーベル: Columbia(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は38位でした。
メンバーの感想
The End End
ここまでくると、ブルーズとフォークの境界線ってどこにあるのかわからなくなるな。少なくとも歌の構造、半ば普通に話しているようなメロディと吐き捨てるようなやるせなさを湛えた歌唱においては、このふたつはこのアルバムにおいて完璧に溶け合っている。
訳詞を読まなくても、いや、頭の中で訳さずとも、英語のままでこれを受け取る力があったらどんなに良いだろうと思う。この声で歌われるネイティブ・ランゲージの歌を聴けること、すごくすごく羨ましいな。
コーメイ
本アルバムは、なぜか聴いていて楽しくなるようなアルバムであった。おそらく、1曲目の「Rainy Day Women」の町中を大勢の人が、音楽を流しながら闊歩する様子がありありと想像出来たからであろう。のみならず、「Most Likely You Go Your Way」においても、ハーモニカと陽気な音が混ざり合って楽しい雰囲気であった。要するに、私が想像していたBob Dylanとは一線を画すアルバムであった。
湘南ギャル
なんちゅーか、すげえ華やか。パレードっぽい。ここまで扱ってきた四作はそれぞれが特徴を持っているはずが、ボブ・ディランの声や歌い方の個性がそれを上回り、自分の中でちゃんと聴き分けられていない。幸い、喋るように歌う人も、歌うように喋る人も好きなので、楽しく聴けている。
しろみけさん
「One of us must know (Sooner or later)」とか「I Want You」とか、めっちゃ素直な曲書くやんけ……。ぶっきらぼうに唾を吐きかけるアウトサイダーが人生をぐるり回って、"それでもやってくんだよ"っていうメッセージに辿り着いている。ポジティブとかではない、世間の徹底的にミクロな地点からミクロな背中を歌ってる。かと思えば普通にくだまいてる曲もある。憎いねボブくん。
談合坂
ここまで出てきたボブ・ディランのなかではいちばん多幸感を得られるアルバムだと感じた。ジャンル?シーン?に囚われずに伸びやかにやっているように聞こえる。単純に録音が良くなって、チャキチャキしたギターとかハープのリードに残る振動とかが余す所なく聞こえてくるのも大きい。これまでを振り返るとなかなか長丁場の部類だけど、苦しくならずにするすると飲み込んでいける。
葱
「I Want You」が素晴らしい曲すぎて震える。上昇を繰り返すギターのフレーズに身を任せるうちに虹の向こう側へと辿り着けそうだ。そしてこのアルバム自体も清濁を併せ呑んだ上でプラスの方向へと感情を昇華させるような生の/正のエネルギーに満ち溢れている。1番"僕らのボブ・ディラン!"と思えるアルバムなんじゃないか。
みせざき
ん、なんだこれ〜!崩れるように始まって作品が進むにつれて徐々に演奏がまとまり始めていく。こんな雰囲気のアルバムは今まで聴いたこと無く、初めて味わった感覚かも知れない。
メロウな感覚がどんどん研ぎ澄まされていくようで凄い新鮮だった。にしても凄い良い曲が多い。特に「I Want You」はシニカルさもありながらサビでシンプルに愛を表現していてカッコよくて良い曲だった。
六月
微笑ましさを感じるほどにセッションの楽しさが溢れている様なアルバムだ。前2作にあったスピード感が後退しながら、なんだか優しい感じ、多幸感や慈愛めいた感情がこのレコードを覆っているのを感じて、今まで聴いた中では一番好みに思えた。フォーク・ロックの名盤として一続きに見ていたこれら一連のアルバム群も、集中して聴いてみると、一個一個やってることがそれぞれ違うので面白い。
「One of Us Must Know (Sooner or Later) 」、「Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again」がとくに好きでした。
和田醉象
楽曲的な良し悪しについてはもはや余り書くことはない。気持ち的になんかカントリーに寄った?という感じ。以前のフォーク調よりも個人的に好感が持てるものだ。強いて言うならばM6「Stuck Inside~」は結構バンドバンドしてて楽しい。途中途中のキメとか団欒しながら作ったのかなと想像してしまう。
曲が長くなった気がする。それは楽曲の構成的な都合ではなく、Dylan側が言いたいことが増えたからな気がする。歌詞を見ても今まで以上に比喩的な表現が増えた。”彼女は言った、鉄道員はおしなべてワインのように血を飲むのよ(She said that all the railroad men just drink up your blood like wine)”ってどういうことなんだ?事実喋りっぱなしで無駄なソロが一切無い。結果的に、なんか全体的に圧迫感すごいアルバムになっている。
渡田
外国のフォーク調の歌を聴くと、確かに綺麗なメロディとは思うけれど、その国の自然とか街並みとかに具体的な郷愁を持たない分、共鳴しきれない自分を感じることがよくある。ただ今回のアルバムは、フォークの雰囲気が主軸にあるのだけれど、しっかりと引き込まれた。
このアルバムでも国とか街とか、そういった場所に関する言葉がつなげられているのだけれど、ここで感じられる共鳴は「場所」の居心地の良さ、神聖さに向けられたものではなく、その「場所」でのちょっとした疎外感に根差している気がする。
曲の中には、温かい賑やかさ、騒がしさを感じさせるものもあるのだけれど、その殷賑がいかにもわざとらしいというか、冷やかしのようというか……本質の部分は、その賑わいを横目で見る時の、冷たい気分の方なんじゃないだろうか。
次回予告
次回は、Beatles『Revolver』を扱います。