MONDO GROSSO『MG4』(2000)
アルバム情報
アーティスト: MONDO GROSSO
リリース日: 2000/11/27
レーベル: Epic
今回の選者は談合坂です。
メンバーの感想
談合坂(選考理由)
私がネットのオタクな音楽を経由してクラブミュージック的なものを知ってきたこともあって、そのルーツとしても存在しているこういう音楽が大好き、というのが何より大きいのですが……
DJを担い手としたダンスミュージックだったりUK音楽シーンだったりラテン音楽だったり、今日における日本のポップシーンとの結節点はたくさんあるだろうけどこの企画ではあまり耳にできなかったサウンド、というところで選びました。
当時の文脈だけじゃなく、派手めなローとリリースカットピアノが巷に溢れる今だからこそ、こういうポップでクラブ的でオタクな音楽のことを振り返ってみる楽しさがあるんじゃないかと思います。
The End End
ジャイルス・ピーターソンの系譜だ!この企画で、邦楽編で聴けると思わなかった。
サイモン・レイノルズの"UKハードコア連続体"という言葉があるけれど、この作品のキックとベースの取り扱いはUKの香りたっぷりでとてもとても素晴らしい!
「MG2SS」の、アップライトベースとシンセベースが溶け合ったような不思議な音もすごくすごく最高。当たり前のことなのだけど、アシッドジャズとUKガラージってやっぱりこんなに近くにいるものなのですね。
日本のミュージシャンだとAnchorsongとかも近い雰囲気かも。(彼は今ロンドンで活動しているけれど)
桜子
こういったクラブの音楽みたいなものはこの企画であまり聴けなかったので耳が嬉しいです。
2step、UKGのリバイバルがきている今聴けるのも嬉しい。歴史を見ている!
全体的に艶っぽくて、高級感あると感じました。それ故に、完全に乗っかりきれないところはあるけれど、そんな事考える必要がないほどにとにかくカッコいいから好き。あと大沢伸一さんの事を本当に尊敬しています。
俊介
渋谷系とダンスミュージックが交差する瞬間を中々知らないので新鮮。新鮮なんだけど懐かしい感じ、すごい音楽遺産。
m-floなりtowateiなり、雑に言えば出自が割かし近いアーティスト達は、渋谷系の呪縛が溶けたあとの後年のキャリアがとても好きで、mondo grossoも例に漏れることはないだろうなー。
初めて聴いたけど、このアルバムをきっかけに他のアルバムまで聴きたくなった。
湘南ギャル
LIFE聴いて思わず、懐かしーーー!と叫んでしまった。けど、2000年なんて全然物心ない。おそらく、リリース後しばらく経っても、J-WAVEで頻繁に流されていたのだろう。アルバム全体を通して感じた、飽きなさみたいなものが、さらにこの説を裏付ける。シンプルな味付けで、でっかいフックもないんだけど、それゆえに細部にまで目が届く。どこをとっても緻密だから、見てて飽きない。だからといって、細部を見逃したらつまらない訳でもない。流れるグルーヴに身を任せるだけでも、グッドミュージックとして聴くことができる。職人技だな〜。
しろみけさん
当企画で聞いた砂原良徳『LOVEBEAT』と同種のアンビエンスを感じながらも、ラテン/ブラジルの要素が積極的に混入してくる様に、90年代の渋谷系なりアシッドジャズなりの影を見た。いつどこで遊んでたのか、自分が生まれる前のことだけど、何故だかわかる気がする。今作はその遊び場へのリスペクトに溢れている。アーティストの私的な表現というより、2ステップをはじめとした当時のトレンドを聴衆にすんなり食べさせるための、ホスピタリティに溢れたDJが一筆で描いた世紀末の夜の一幕。このアルバムのビートとストリングスが古く聞こえたとしても、感じたその古さこそ本作が有しているタイムカプセル性の証左だと言ってしまいたくなる。それくらい、このアルバムには、あの頃の誰かの夜が宿っている気がする。トレンドを衒わないことは立派すぎる勇気だ。
葱
MONDO GROSSOと名前を聴いたらどうしても齋藤飛鳥が参加した「惑星タントラ」や「STRANGER」について話したくなってしまうのですが、置いておきます。「MG4」はめちゃくちゃ色気がある。平成の匂いがムンムンとする。ちょっとチャラい。少し前のクラブってこのアルバムみたいな空気が漂っていたのだろう。アルバムを通して1つのフレーズが繰り返されたり、同じくらいのテンポで進んだりと「大沢伸一よるDJプレイ」を体感している気分になる。女性ボーカルが入る曲は浜崎あゆみや安室奈美恵、宇多田ヒカルなんかを思い出す。やっぱり時代の香りが染み付いている。
みせざき
しっとりとしたメロディ、ジャジーな雰囲気を取り入れながら、アップテンポさで乗せていき、曲として昇華されていく課程がとても心地よかったです。南米の民謡要素が強かったですが、ポップスとして違和感ないレベルまで落とし込まれている感覚も素晴らしいと思いました。ボーカルの声は若干タイプでは無いですが、また溶け込んでいくと良さが分かりそうです。
和田醉象
かっこいい!あんまり類する音楽を聞いたことがないからどう言葉にすればいいのかがわからないけど…
1曲目を聞いて結構ブレークコア目の作品なのかと思ったらダンサブルなボサノバだった!!
時々かもめの声とかSEは入るけど、なんかずっとおしゃれなお店にいる気分。(ピアノとかストリングスの入る作品にこういう感想しかもてない自分の語彙力を呪う)
渡田
ドラムを主役として聴ける曲が多かった。基本的に同じドラムフレーズがループしているのだけれど、一瞬つまずくように固まったり、不意に鋭くシンバルが鳴ったり、ループの節目に不規則性が入り込んでいて、聴いていて飽きない。こういうところがアシッドジャズらしさなのだろうか。
歌詞には英文も含まれていたが、それでもなおJ-popらしさを感じた。シンプルな言葉で歯切れが良く、多少気取ったような歌い方がそう感じさせたのかもしれない。
次回予告
次回は、葱の選出アルバムを扱います。
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