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Grateful Dead『Workingman's Dead』(1970)
アルバム情報
アーティスト:Greatful Dead
リリース日:1970/6/14
レーベル:Warner Bros.(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は409位でした。
メンバーの感想
The End End
バーズ『Sweetheart from the Rodeo』を聴いて出たアレルギー反応が、なぜこれを聴いても出ないのか考えた。それは、このサウンドが表している"古き良きアメリカ"像が、そこへ立ち返ることを目指すべきものとしてではなく、もうどこにもなく、二度と現実には戻ってこないものとしてのノスタルジーを内包しているからに思う。
完全な他者として過去を見つめることは、ある種のエキゾチックな興味だと言うことができる。だからこそ彼らは、アメリカを好き勝手に使いこなし、組み換え、無視することができているのかもしれない……言い過ぎ?
コーメイ
前回のアルバムより、やや味付けが濃くなっていた。とくに、「Easy Wild」の不規則なドラムが、いい意味で、危なさを出していたと思われる。他にもロック調のところが散見されたけれども、まだ味付けをしないと聴くことが出来ないアルバムであった。
桜子
なんとなくグレイトフル・デッドには穏やかなイメージがあまり無かったので、意外でした。どこか気怠げで、のんびり。フラッと身軽な感じが良いですね。ウォークマンだけ持って、このアルバムと電車旅行とかしたい。
湘南ギャル
なんでこの音楽性でこのバンド名なんだ。元気系かと思って聴いたら、すげー渋いしチルい。ブルースとフォークをうまいこと掛け合わせた感じ。一曲一曲を楽しむというよりは、リピート再生でゆる〜く聴くのが心地よいアルバムだった。
しろみけさん
ルーツ回帰……と言われても元々のルーツを知らない(もしくは、知っていても血肉とはなっていない)ので、単純なカントリーとして聞いた。ハーモニカプープー……こそはないけれど、派手なソロを入れることもなく、グレイトフル・デッドがジャムバンドであるが故の“余地”をこの作品においても諸氏貫徹して用意していることが窺える。でも、CCRとかとの差分を感じられるだけの耳が自分にはない……。
談合坂
洗濯物でもはたいてるみたいな具合に、乾かしすぎなくらいギターがパキパキしていて面白い。9月も半分過ぎたというのにバカみたいな蒸し暑さが続いてる東京とかいうシチュエーションには異質な音。それと、テンポとかではない“遅さ”が全体を貫くように漂っている。16分を刻んでも流れる時間はなんだか遅い。暑さが無理すぎて動くことができず横になっている私をどこか知らない場所へ連れて行くには十分。
葱
前作のレビューで"退廃した"と書いたが、少し印象が変わって、"映画的な"態度の音楽なのかもしれない。内面の吐露というフォーク/カントリー的なアプローチを取っているんだけど、そこに演出やト書きがしっかり据えてあるような、作り物らしさがある。しかし、ナチュラルでないことは全くマイナス要素では無く、こういったジャンルのイデアというべき意匠に貫かれていて、好きだ。
みせざき
このジャンル自体に精通していない為、どうしても外側から覗くような視点で聴いてしまう音楽に思える。でも明るくてギターも心地良いフレーズもあるので、聴くうちに好きな曲も増えそう。でもこういう音楽が今では、ひと昔前の古い音楽、としてレッテルを貼られてしまいそうだな、と思うし、それも致し方無い気もするし、少し物悲しくも感じる。
六月
この次の作品である『American Beauty』よりもフォークやカントリー的な要素が多めなので親しみやすい感じはした。もし僕がアメリカの南部うまれだったら、近所に住んでいるじいちゃんが弾いてくれそうな、そんな感じの音だ。
あと、"コカイン"という言葉が歌詞の中に出てきていた。The Velvet Undergroundがヘロインについて歌った頃からまだ3年程しか経っていないけれど、ここまで公に歌うことができるようになったんだなあと隔世の感のようなものを感じてしまった。でも誰でも歌うようになったということは、それほど手垢がついた陳腐なものになったということであるので、ここらへんでドラッグ・ミュージックとしてのロックは手垢が目立ち始めたのかなあと思った。
和田醉象
うーん。Grateful Deadが偉大なバンドなのは知ってるけど、取っつきにくいな……他の彼らの作品だとドープで長尺で聴き所満載、みたいな体力を求められるきらいが強いと思うんだけど、はっきり言ってこれは"娘さんを僕にください!"と言いに行ったらあっさり"いいよ!"と言われちゃった時みたいな拍子の抜け方だった。聞こうにもなんかとっかかりがなくて何かを言いにくい。
唯一言えばちょっとハワイアンな要素が入っているのが意外だった。この企画で聞いてきたのだと正味エルビスくらいでしか触れられないジャンルだから結構目新しさを感じた。でも尺か短くてまとまりの良いカントリーって母国語じゃないとあんまりするりと飲み込める人いないと思う。なせこの作品が偉大なのか誰か教えてくれ!
渡田
怪しさ満点なのだけれど、決してそれが前面に主張されてないのが聴きやすい。むしろ前面に出ているのは穏やかさ、優しさの方だった。
緩やかで軽く弾むテンポ、綺麗なコーラスが曲の全体の印象を作っているけれど、要所要所で奇妙な高音が爪弾かれたり、這うような低音が走ったりするのが人を惹きつける。
次回予告
次回は、Meters『Look-Ka Py Py』を扱います。