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Dolly Parton『Coat of Many Colors』(1971)

アルバム情報

アーティスト: Dolly Parton
リリース日: 1971/10/4
レーベル: RCA(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は257位でした。

メンバーの感想

The End End

 なんて不思議な歌声……!少女のように元気いっぱいなのに、どこかアイロニカルで、おそらく無意識的なんじゃないかと思うほど細かいビブラートがずっと付加されている。少しサチュレートするほどインプットを突っ込んだホットで滑らかなコンプのかかり方も心地よく、歌唱の魅力を追いかけているだけで28分という時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。
 ロレッタ・リンもそうだったのだけど、この企画で聴く女声ボーカルのカントリー・アルバムは、カラッとした屋外ではなく、暖炉のあるリビングルームをイメージさせるものが多い気がするな。

コーメイ

 楽器よりも、独特な声が印象に残るアルバムであろう。とくに、音が上下する際に、"上手いでしょう?"という嫌味ではなく、ごく自然に切り替えが出来ているように聞こえた点が、今回の収穫であった。

桜子

 まだあどけない子供ような、切実な歌声が、胸をキュッとさせる。どんな顔で、どんな気持ちで歌っているのか、想像せずにはいられない。聴き手に寄り添ってくれる音楽ってたくさんあるけれど、こんなにも歌ってる人の気持ちに寄り添いたくなる音楽はなかなかない。夢中になって聴いてしまいました。

湘南ギャル

 幼い頃、若草物語や赤毛のアンが好きだった。木の葉の揺れで風を感じ、知っている一番美しい色は河辺の花の色で、家に帰ると暖炉と暖かい食事がある。ドリー・パートンが歌う世界は、それらを思い出させた。彼女の世界の住民たちだって、わがままも言うし喧嘩もする。でも、根っこは心優しくて、凛としている。今からでも、どうにかそっちの世界に引っ越せないかなあ。

しろみけさん

 これまでにランクインした作品の中で、抜群に英語が聞き取りやすい。これまでにもボーカル至上主義のアルバムは何枚もあったが、ドリーはそれに加えてメッセージも明瞭で、結果的に全曲童謡とか英語の授業の教材で使えそうな仕上がりになっている。これまで"ママ・トールド・ミー"なんて言われてもピンとはこなかったが、ドリーに言われた途端しっくりきた。たしかにゆわれたかも!

談合坂

 アルバムを聴くためにApple Musicで検索したとき、めちゃくちゃコンスタントにアルバムを出しているのに驚き、何よりアーティスト・ビジュアルのでっっっけーマットブラックのハーレーとキャデラックを見て笑みがこぼれてしまった。近寄りがたさや危うさを纏った職人気質のミュージシャンたちもしばしば聞いてきているけど、こういう快活さと見渡しやすさを示すようなものもポピュラー・ミュージックの軸として重要なのだと再認識させられる。

 カントリーっぽいフレーズが曲の各所で聞こえてくるが、丁寧にバンドアレンジとして練られているため、"70年代に新しい形でカントリーっぽさを提示した人たち"なのかな、と想像した。すでにポップ・ミュージックというフィールドが”過去の音楽のあり方をいかに現代に面白く提示するか”という場所になっているのかもしれない。ただ2024年であってもHozierといったアーティストを中心にカントリー・ミュージックはリバイバルかどうか関係なく演奏され続けているし、アメリカという土地の中で連綿と続いていているだけなのかもしれない。

みせざき

 正直に言うと感想を書くのが難しいと感じた。そこまで特異な性質を持った音楽では無いし、曲も一つ一つ聴き流してしまえるような印象だった。カントリーの音楽は基本的にそういう性質があるように思う。何か惹きつけてくれる様な印象が少ない。でも声は凄い好きだと思う。カントリーという枠組みを超えた、ポップスの性質を備えたボーカルに思えた。

六月

 Wikipedia先生に頼ってこの人のことを調べてみると、1960年代半ばというかなり以前から活動をしていて、なんなら2020年代に入った今でも活動を続けているアーティストだということがわかって驚いた。Apple Musicに貼られている現在のアー写や彼女の出した各作品のジャケットを見ると、すげえアメリカという国のきな臭い部分が見え隠れする。アーティストに限らず、自らをアメリカの自画像たる存在だとしている人はかの国には腐るほどいるが、その多くがカリカチュアでしかない中で、この人は天然ボケのようにアメリカを体現している。それは単にカントリー・ミュージックをやってるからだとかではなく、その牧歌の上で歌われる声からひしひしと、あの土地の地面下にある本質を栄養として吸い取って咲いた花のように、アメリカという国を表しているように感じられる。

和田醉象

 思っていたカントリーと違った。まず、思ったよりも遥かに派手だ。結構ベースラインが際立つ場面が多かったのが新鮮だった。カントリーって、アレンジに濃淡がなくて、聴いていてあまり楽しいと思えたことがなかったんだけど、これはバンドものっぽく聴けた。
 ただ、個人的にはそれ以上のものにはならなかった。特に表題曲の『Coat Of Many Colors』の歌が苦手だった。よく聴くと分かるんだが、歌詞に字余りや字足らずが多く、無理やり休符を入れて完成させているのがなんか苦手!歌詞自体は割とちゃんと韻を踏んでいるし、内容もちゃんとカントリーらしさがあって良いのに、歌メロが無理やりな感じが気になってしまう。

渡田

 カントリーだけど、60年代のそれとは雰囲気が違う。カントリーといえば男性の嗄れた声だと思っていたが、今回のアルバムはドリー・パートンの溌剌な歌声がはっきりしていて"女の子がボーカルをしている"印象が強く残る。
 ボーカルが主役だと自然に感じられる音楽は、親しみやすく、世の中の音楽の裾野が広がっていくのを感じる。

次回予告

次回は、John Prine 『John Prine』を扱います。

また、「或る歴史と或る耳と」紙面版が好評発売中です!ぜひチェックを。

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