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Carole King『Tapestry』(1971)
アルバム情報
アーティスト: Carole King
リリース日: 1971/2/10
レーベル: Ode(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は25位でした。
メンバーの感想
The End End
ニュー・ミュージック感。荒井由実や、吉田美奈子や、大貫妙子の顔が次々に浮かんでくる。小気味よく弾むリズムに抑制の効いたウワモノたちとグッドメロディ……例えにティン・パン・アレー周辺の人ばかり出してしまったけれど、そう考えるとこのソフィスティケートされた音像ってここまでの洋楽リストで出会わなかったかもしれない。
ボーカルの少し飽和したようなホットなムードが好きだ。声を張り上げた時にコンプがかかって"押さえつけられる"ことって、エモーションの演出に大きな役目を果たすことができる。
コーメイ
さわやかな朝に聴きたいアルバムであった。とくに、この季節の朝、温かい飲み物を片手に聴くと、なお良い。というのも、朝の爽快感とCarole Kingの声の透明感が重なるからだ。これを聴き終わり、「今日もやるか」と前向きにさせる作品であろう。
しろみけさん
吉田美奈子、大貫妙子、竹内まりや……ミューマガ編の時に聞いた女声ポップスの源泉がここにある。ただ、邦楽が単なるパクリをしていたわけではなく、むしろこのアルバムのリリースから数年も経たないうちに日本語ローカライズして咀嚼できていることへの尊敬の念が先にくる。ただオリジナルのきらめきはやはり唯一無二だし、最初の「I feel the Earth Move」の強烈なパンチの後に1時間くらい撫で撫で慰めるような構成なんかめっちゃ変だ。
談合坂
すごく整っている。ここではもう、60年代っぽいイメージは完全に振り切られているように感じる。シャープな成形がそう難しいものではなくなり、明確に70年代という新しい時代に切り替わった感覚があった。工業製品のようには見えも触れもしないけど、隅々の仕立てや仕上げが別物になりだしているのがなんとなく伝わる。デジタル時代までの道筋が初めて見えてきたような気がする、という感じかも。
葱
音楽リテラシーがあまりに低過ぎるあまり、キャロル・キングを再生したら流れてくるのは男性の野太い声だと思っていたのですが…。それはさておき、「Beautiful」はとても良い曲だと思った。この声で「You're Beautiful」と歌われると神からの加護を受けた気になれる。ピアノという楽器のリズミカルさ、重さ、軽やかさ、などを思い出すなど。
みせざき
"素直に心を預けたい"と思わせてくれるような、信頼できる声に感じた。ポップスだけで無くロック歌手としてのバイブスも合わせて感じる気がする。どれだけ落ち込んでてもきっと素直に前に向かせる力を持った曲達に感じる。
六月
とにかくいい曲しか入ってないなあとしみじみ思う。ピアノ主体のシンガーソングライターといえばLaura Nyroが先の作品としてこのランキングに出てきていたけれど、他の楽器とのアンサンブルとを重視している彼女の曲よりも、このアルバムの楽曲はCarole Kingが身一つでピアノに対峙してる感じ、別にドラムやらの他の楽器も全然使われているのだけども、まず何よりも彼女の歌とピアノが前景となっている感じがあって、振り返ってみるとそれ以外の音が全く思い出せない。こういった意味で、シンガーソングライターのパブリック・イメージのような音だなあと思う。
渡田
"ソロのシンガーソングライター"の印象に反して、ビートがはっきりしていた。刻まれたリズムはダンスミュージックぽささえ感じる。
穏やかに流れる室内音楽としての一面と、足踏みさせるようなダンサブルなリズムとが混ざったところが楽しい。リビングルーム・ミュージックとして聴いていたはずなのに、何か浮き足立つ感じがしてしまう。人を落ち着かせるような第一印象を纏って、その実は身体のリズムを引き起こす音楽なんじゃないだろうか。
次回予告
次回は、Alice Coltrane『Journey in Satchidananda』を扱います。