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Black Sabbath『Master of Reality』(1971)
アルバム情報
アーティスト: Black Sabbath
リリース日: 1971/7/21
レーベル: Vertigo(UK)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は234位でした。
メンバーの感想
The End End
遅い瞬間はおどろおどろしく、魔術的で良いと思った。ドラムのサウンドも重たさとナチュラルさとを両立していて好ましい。『Paranoid』に比べてよっぽど、自分にとってとっつきやすい作品だと感じる。深く歪んだエレキギターの美味しさのうちある側面を強調したものとして、とても真っ直ぐで衒いがない。
反対に好きになれなかったのはモジュレーションのかかったボーカルのエフェクト処理とゴムみたいなベースの音色、テンポの早いギターソロあたり。この辺は私の好みでしかないけれど……
コーメイ
"軽いのか?重いのか?"と迷ったアルバムである。以前企画で聴いたアルバムよりはPopさが増した。だが、Popにしては、だぶついた印象を抱いた。先の作品では、ギター・ベース・ドラムで重さを表現していたけれども、今回はドラムのみ、大分頑張っていた。このバランスの悪さに、なかなか上手く対応しきれなかった。
桜子
前にこの企画で聴いたアルバムはいわゆるハードロックに分類できるのかな?と感じる事が多かったのですが、そこから逸脱して、新境地にきたアルバムだと思います。ツェッペリンの影が薄くなったと感じました。
湘南ギャル
相変わらず、闘志をエンパワーメントするのがうまい。月曜日の朝とかに聴きたい。絶対に全てに勝つ。そして、1stに比べてアルバムを通した時の強弱が効いているように感じた。3、5曲目のようなinterludeの静けさと美しさは意外で、間奏と言わず曲でやってくれ!と思ったら、7曲目の「Solitude」で存分にそれを聴かせてくれた。ありがとう。他にも何か隠し持ってるんじゃないかってワクワクする。
しろみけさん
『Black Sabbath』のリリースから1年半。この短い期間の間に、ハードロックとその手法を活用した作品が群発的に世に出てきた。ただ、オリジネーターにはやはりオリジネーターなりの矜持がある。いくら世間がリフ合戦の方向へ走ったとしても、「Sweet Leaf」のようなシンプルなパワーコードの連打を是とする発想には簡単には至れない。きっと彼らは「Embryo」や「Solitude」のようなトラックを大仰なバラードに仕立ててしまうだろう。だがブラック・サバスは、それをしない。そもそも『Master of Reality』の、どう見積もっても籠りすぎな録音が雄弁にバンドの在り方を語っている。彼らはメタルなんて興味なく、ただの黒い塊を作りたかっただけなんじゃないのか?
談合坂
あれもこれもポコポコしているから軽いのかと思いきや、突然ひとかたまりになってぶっ叩いてくる。曲中のブレイクとかアルバム内の展開とか、抜きの使い方が巧いという印象を受ける。だからこそこれが選び抜かれたボスたちのステージみたいに出来上がっていて、気分を高揚させているんじゃないかと思う。それと、これはほぼ人間椅子に先に触れてしまっているせいなのだけど、この響きの怪しさには結構日本人的な親しみもあったり?
葱
重いリフを繰り返しの美学に則り発散させる様に不思議な上品さを感じるなぁ、と思いきや1曲目の後半で加速し始めて笑ってしまった。スマパンの「Quiet」だよそれは……。その後も90年代のアメリカン・オルタナティヴ・ミュージック、言い換えれば歪んだパワーコードに何かを託すような音楽で聴いたクリシェ(常套句)がたびたび登場する。古臭くはあるのだが、オリジネーター故の貫禄は大いにある。
みせざき
トニー・アイオミはとうとうダースベイダーと化したのか、バンド全体が宇宙との交信をし始めた。と言わんばかりの無敵さと唯一無二なサウンドを存分に発揮している。ホントに別次元から届けられたような音楽。とにかくかっこいい、カッコよすぎる、出るリフ一つ一つが自分を内面の奥底から搔き立てまくってくれるサウンド、、これがロックだ!!
余談だが去年カニエがブラック・サバスのリフを使いたくてオジー・オズボーンに懇願したら、オジー・オズボーンが"あんなキモいやつに俺の曲を渡してたまるか!"と断固拒否したという。最近は多少丸くなったイメージだったが、まだそうやってヒップホップに徹底抗戦している姿勢が素晴らしいと思った。やっぱまだまだロックはヒップホップに媚びちゃダメですよ。
六月
この頃になるともう、メタル・サウンドみたいなものは完成してしまっている。自分はあまりコンプレッサーとかのミックスについては無知であるのだけれど、このアルバムの音がすごい圧縮されている広がりを全く持たない感じがしているのはわかる。このアルバムでしか聴けない不思議な音。そして、リフという概念を自身の音楽を駆動させる機構として持っているバンドの両雄としてLed Zeppelinと、Black Sabbathなのだろうけれど、両者の2ndアルバムがその方法論の提示として一致していたとすれば、この作品以降が両者の進んで行った道がそれぞれ分かれた分岐点なのかなと思う。リフを徹底的にゴリ押しして反復させる曲作りの王道を進んだのがLed Zeppelinなのであれば、Black Sabbathはリフを使いながら別の世界を描きだしていこうとするような方へと行ったような気がする。
個人的には、ストリーミング・サービスで配信されている2009年リマスターはそれを抜きにしてもなんか音量が小さくてしょぼく感じるので、ミックスはそのままに、然るべき再リマスターをしてほしいと思う。
和田醉象
俺の大好きなサバスのすべてがほぼここにある。初めて聴いた時は、演奏がヘロヘロすぎる!まるでキレがない!って感じだったけど、今となってはそれがいいねんな(爆)
なんでこんなに微妙にだらしがないのにかっこいいんだろうか。(多分1曲目のとおり、甘い草を決めすぎたんだろうけど)聴いていたのが中二病な頃だったから、この暗黒感に取り込まれてたんだろうか。別に速すぎることも遅すぎることもないし、サバスの特徴とし挙げられるリフ主体な感じもあまり強くなく、どちらかというとアンサンブル主体な感じだ。音もなんだか靄がかかっていて聴こえる。ギターは多分同じように弾いた2本のテイクをそれぞれ左右にパンしてステレオで重ねてるのが原因だ。単にこの音を狙ったというよりはこの録音方法にハマってたんだろうか。「Orchid」ではアコギで重ねていて、音がズレた所から、かえってフラクタルな広がりを感じさせる。この録音がこのアルバムだけの魅力感を高めていると思う。バカみたいな音で本当に大好き。
渡田
ハードロックというジャンルはあまり馴染みがないけれど、この音楽は大好きになれた。
"ハードロック"に印象抱いていたスピーディーな力強さではなく、遅く何かを引きずるような力強さを感じさせた。重々しいと同時に激しい音楽の不気味さは緊張感を高めてくれた。
次回予告
次回は、The Who『Who's Next』を扱います。