ボ・ガンボス『BO & GUMBO』(1989)
アルバム情報
アーティスト: ボ・ガンボス
リリース日: 1989/7/1
レーベル: EPIC/SONY(日本)
「50年の邦楽ベスト100」における順位は65位でした。
メンバーの感想
The End End
どれだけ肉体的なアンサンブルでも、どれだけ揺らいでいても、どれだけ情熱的でも、理知的な匂いを探してしまう。結局ちょっとスノッビーなものが好きなんだなあ…それ一辺倒はあまり良いことではないと思うけど。
ただのルーツ志向でもない、ただ新しいサウンドでもない、ポップスの伝統を前提にして今に対するサウンドを鳴らしていることがとっても素晴らしい。キックに低音域を譲ったベースがとっても気持ち良い。
“良いことも~”という歌詞を聴いて“悪いこと、じゃなくて、やなこと、が続いたらいいな”と思っていたら、“やなことも~”と歌ってくれたので、ひとりでニコニコしてしまった。
桜子
くるりのカバー元、これなんだ...!知らなかったです。
ラテン音楽で使われそうな楽器とか出てきて、情熱的だと感じました。
でも歌詞では突然現実的な寂しさを突きつけてくるものがあったりして、私の事を歌ってくれていると思ってしまいました。
俊介
ここ2年くらいロックとかポップスが聴けないマインドだったけど、その中でもゆるく聴ける感じ。
歌詞に力が入ってないかんじ、楽器のルーズなかんじ、享楽的なかんじ、すべてがいいところに収まってます。なにかが傑出してる訳ではないけどどのアーティストもこの位置に立てない。
湘南ギャル
めっちゃ混ざってる〜〜。ガンボとは、ニューオリンズに伝わるごった煮スープのことらしい。名は体を表すの親善大使か?めっちゃ混ざった結果なんだろうが、アメリカでも日本でもない、この世に存在しない国の音楽を聴いている気持ちになる。この感覚がかなり楽しい。このアルバムを聴いた人は誰でも、存在しない景色にまつわる存在しない記憶を思い出すことができるだろう。
とはいえ、見返り不美人の歌詞があまりにも嫌すぎて何周もは聞けなかった。以前この企画で扱った熱い胸さわぎで、サザンは「女呼んでもんで抱いていい気持ち〜♪」と歌っていたが、そっちはかなりサイコーな気分で聴けた。なんなら、熱い胸さわぎの中で一番好きな曲だった。最悪さで言えば二つとも似た路線なのに、なんでこんなに違って聞こえるんだろう。BO GUMBOSがあまりにただの当たり屋だからかな。
しろみけさん
ごった煮のレシピ。どの評を見てもそう書いてあるように、ごった煮みたいなサウンド。それは確かにそうなのだが、細野晴臣のトロピカル三部作とかエンケン『東京ワッショイ』みたいな、これまで聞いてきたごった煮サウンドとは製法が違い、本人のキャラクターなりノリなりが先行していて、そこに各々のジャンル・ミュージックが従属しているように感じる。より手段らしくなってるというか、大文字のJ-POPらしいアルバムの作り方だと思う。それでもまとまりの無さを欠くことなく聞けるから不思議。
談合坂
このアルバムをレンタルCDショップに探しに行ったとしたら、迷わず’J-POP’コーナーの棚に足を運ぶ。もちろんこれまで聴いてきたアルバムたちだって近くに並んでいるのだろうけど、アルバムを聴いていてそんな光景が真っ先に浮かんでくるのはこの企画をやっていてここが初めてだった。
キックとベースで引っ張る音楽だけど、聴き手はあまりそれに意識を向けていなくても構わないような感じがする。そんなことを言っていると「ZOMBIE-ZOMB☆」みたいなことをしてくる。とりあえずその楽しさに身を任せていれば大丈夫。
葱
音楽に限らず「泣きながら踊る」みたいな表象が好きで、それはアイドルが卒業する時に涙を貯めながら笑ってる姿やマイク・ミルズ監督の映画を見ている時に実感するのだけど、自分のなかで本作はそのラインに並んだ。特に「Hey Flower Brother」「夢の中」「トンネルをぬけて」はクサくなりそうな泣きのメロディーを軽やかなリズムセクションに載せることで爽やかな口当たりに仕立て上げていて、そのバランス感覚は見事としか言いようが無い。
みせざき
ソウル、ファンキーなバンドサウンドに日本語の語感強い発音のボーカルが上手い塩梅で融合していました。ニュアンスが清志郎っぽさを少し感じました。心の奥底からすべてのことを吐露するような日本語歌詞が根底となる異国の音楽に別次元のオーガズムをもたらしていると思いました。
和田はるくに
ローザルクセンブルクでしかどんとの作品を知らず、ボ・ガンボスはなんとなく避けてきたけど、今回ほぼ初めて聞いて意外とわかりやすい作品ということがわかったのと、このアルバムからだと独自の色が見えてこないことがわかった。
ローザのときはあのハイペースな感じとかハイテンションな感じがニューウェーブに直結している印象を受けて、自分の好みにかなり近く、また換えが効かない存在だったように感じる。
でも、このアルバムにファンクを求めるならRCやじゃがたらを聴くというか…もっと色んな作品を聞いてみる必要があるかも。みんなはどう思ってるの?
渡田
こういった異国の音楽を取り入れたアルバムはある程度さまざまな音楽ジャンルに精通していてこそ、より楽しめるものだと思っていたが、今回のアルバムはそういうわけではなさそう。
確かに、さまざまな地域の音楽文化を取り入れた音楽ではあるものの、それでいて誰にでも聴きやすいようなまとまり方が成されている気がする。
ファンクを知らなくても、この軽快で楽しげな雰囲気に浸ることはできるし、どんな楽器の音によるものなのかは分からなくても、その変わった音色から異国のイメージを頭に浮かべて楽しむことはできる。
それも、複雑すぎないはっきりしたビートと、そこに載るシンプルな楽器の音色のおかげかと思う。
様々な技法をふんだんに用いているとか、彼らが持っている知識を尽くして作られているとかではなさそうだけれど、単純にファンクやボンガの楽しさに触れられるような最低限の要素だけでまとめ上げているように感じる。
例えば、教師や作家の中には、限られた言葉だけで物事の要点や魅力を伝えてくる人がいて驚かされることがあるが、この音楽を聴いた感覚もそれと似ている。
あるいはこういった音楽が、自分が今まで聴かなかった音楽ジャンルへの入り口になるのかもしれない。
次回予告
次回は、いとうせいこう『MESS/AGE』を扱います。
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