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Rolling Stones『Sticky Fingers』(1971)

アルバム情報

アーティスト: Rolling Stones
リリース日: 1971/4/23
レーベル: Rolling Stones Records(UK)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は104位でした。

メンバーの感想

The End End

 既に歴史と関係なくなり始めているというか、ビートルズのように、"ロック史"ではなくて"ストーンズ史"の中に彼らは存在しているというか。とにかく自らのサウンドの進歩と向き合っているような印象を持った。様々な音楽や属性に対して開かれたようなムードがあって、非常にポジティブな気持ちで聴けた。
 「Wild Horses」、私が今まで触れてきた中で一番美しい12弦ギターの音かも。

コーメイ

 ブルース系の精度が向上し、ロック系の元気さと相俟ってアツアツかつカチカチのアルバムに仕上がった印象を抱いた。
 ブルース系の楽曲は、従来のアルバムには、間延びする曲があった。が、今回は、土臭さを技術で演出した感がある。この変化が、今回の収穫であった。
 ブルース系の進歩に加え、全体的にギターの音が、技術を見せびらかす為ではなく、ミック・ジャガーの声と呼応するかのようにビシビシと響いていた。自家薬籠中としている硬質な音も機能していたため、このボーカルを引き立てる音とが上手く混ざり合っていた。

しろみけさん

 A面冒頭の「Brown Sugar」とB面冒頭の「Bitch」がやけにポップだ……と思ったら、この二曲がアルバムリリース前のシングル盤で出ていた曲らしい。『Let It Bleed』や『Beggars Banquet』の時もそうだったが、ストーンズは聡い。ポップなシングルで若者を引っ張ってきて、LPの回転が中心へと向かうに連れて渋いブルースへと遷移していく。今作のA面ラストの「You Gotta Move」なんてまさにそうだ。機材の進化なのか、全体的にファットな曲が増えており、しっかりとアメリカでウケることへの目配せもできている。超クレバーだ、そりゃ半世紀も売れますわ。

談合坂

 やりたいことに技術が存分に追いついている、そんな余裕を感じる。こちらがどう受け取るかを考えるまでもなく、向こうからエスコートして心地よく聴かせてくれる。ただ一方で、あまりにもそういう"名盤"的なオーラがしっかりしていて、自分ごととして何かしら掴めた気がしないというのも正直なところ。それはそれですごい強みだとは思いつつ、もっとロックキッズ的マインドの時に出会えたらなぁと。

 やっていること自体はブルースの延長線上で、他のアルバムとそこまで大きな変化は無いのだけど、不思議と"またこういうのかよ……"みたいな気持ちは生まれない。むしろ聴くアルバムを増やしていくほどに体のローリングストーンズのグルーブへの浸透率が増していき、"これだよこれ!"みたいな感覚を帯びてくる。「Sway」のように比較的遅いサウンドの中にコーラス陣の歌が際立つ曲は後のPULPといったバンドへ連なっている。編曲はミニマルなのに、この圧倒的なふてぶてしさはなんなんだ。ミックジャガーすごい。

みせざき

 聴くだけで嬉しくなるアルバム。「Sway」とか聴くと嬉しくなる。素材が良すぎるし、楽器もしっかり暴れてくれる良さがある。「Can't You Hear Me Knocking」は自分が一番好きなギターソングの一つだ。リフから、後半のミックテイラーのギターソロに移る高揚感まで、全てが最高だ。こういうソングライティングも抜群で、演奏も脂が乗ってて、自分達のルーツを追い続けるという、所謂無敵スパンの最高域といえる瞬間がこれなのだろう。

六月

 演奏技術のあるミュージシャンが演奏するロック音楽ばかりを当たり前に聴いてたから、60年代当時では普通くらいだったのが、ずいぶんラフだなーと思うようになってきた。言葉を選ばずに言えば、下手。だけど、全く破綻せずに成り立っているというのもまたロックンロールのなせる技だ。
 「Can't You Hear Me Knocking」では、Led Zeppelinをモロに真似ていたり、そういう節操なく自分たちのやりたい好きなことをやり続けるところ、色々な意味でのルーズさみたいなものが彼らの姿勢として設定されたアルバムなのかなあと思う。

渡田

 今までのアルバムで見せてくれた、ストーンズの裾野の広さを一つのアルバムにまとめているよう。跳ねるようなポップスだったり、ポストパンク風の怪しい曲だったり、バラードらしいのも、ハード寄りのものもある。
 ミック・ジャガーのボーカルはどの曲も同じスタイルなのにこんなにも印象が変わるのは、ドラムの変幻自在さにあると思う。弾むようなビートと底を這うようなビートの緩急で曲全体の緊張感を裏から決定づけているように感じた。

次回予告

次回は、Bill Withers『Just As I Am』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


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