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Simon & Garfunkel『Bridge Over Troubled Water』(1970)

アルバム情報

アーティスト:Simon & Garfunkel
リリース日:1970/1/26
レーベル:Columbia(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は172位でした。

メンバーの感想

The End End

 ハードコアなまでのポップネス。この作品に通底する親しみやすさは、無知からくる中庸さでも、妥協の産物でも、アジテーションのための道具でもない。あたたかな幸せと、自意識の翳りと、リズム/コード/メロディがもたらす陶酔に正面から向き合った結果生まれるものだと思う。清濁併せ呑む姿勢で我々の背中を穏やかに押してくれる、そういう親しみやすさだ。
 音響的にもいくつもチャレンジが散りばめられていて楽しい。「The Boxer」、どんなきっかけがあったらこの曲のスネアにこんなリバーブかけようと思うんだよ。

コーメイ

 表題でもある1曲目「Bridge Over Troubled Water」がつとに有名であるが、全体的に2人の声の良さと素朴なギターの音色が支えていたと思われる。この表題曲をはじめて聴いたときは、11年前であったけれども、高音の伸びにはまた感心した。他も、がなる系統ではなく、やさしく歌う印象があるアルバムであった。

桜子

 私が理想とするソングライティングがここにありますね……いいソングライティングがあれば、華美な味付けをしなくても充分に心が満たされる。テクノロジーが発展して、色んな楽器が出てきても、ソングライティングのあり方は不変だ。

湘南ギャル

 広い。広すぎて、どこで聴いていても違和感がある。建物の影から逃れられないこの場所で、どうやってこのアルバムを聴けばいいんだろう。できたら、進んでも進んでも景色が変わらないようなだだっ広い場所で、チャリでも漕ぎながら聴きたい。欲を言うなら、湿度のなくて気持ちの良い風が吹く夏に聴きたい。そして、それが可能な場所はわたしの周りにはない。

しろみけさん

 こればっかりはこの作品の半世紀後を生きている自分の、不勉強による棚からぼたもち的な幸福なんだけど、″あのメロディーの元ネタってこれなんですか!?″みたいな瞬間が各曲にある。二つの脳みそから出ていい発明の量を超えてるよ。そして極上の歌を活かすためのアレンジの味付けも丁度いい。特にスネアの軽さがロックンロールの権威性を削いでいて心地よい。その代わりをパーカッションとか、「Cecilia」のベンチをペチペチ叩く音が担っている。インスタント・クラシックとはまさにこのこと。

談合坂

 ジャケットだけ知ってるけどちゃんと聞いていなかったアルバム。NHKっぽいと言えばいいのだろうか、単なるレコードとライブのポピュラーミュージックというのではなく、より広い聴衆がしっかりと想定されているような印象がある。そのあたり合唱コン的な健全な音楽の空気が勝手に重なって苦手意識がよぎらなくもないけど、気にせず聴いてしまえばなんてことはなくゴキゲンだ。にしても映画『ベイビー・ドライバー』のエンディングで流れてた曲と「コンドルは飛んでいく」が同じアルバムに入っていたなんて……

 "歌とギターだけで十分"と評され、それでも名作と謳われるような作品であることは間違いないが、さらに編曲の妙で名作から"大名盤"に成ったような印象を受ける。特に「The Boxer」のブリッジにおけるリバーブが深くかかった叩きつけるようなスネアの音や、右チャンネルから聞こえるパーカッションの音など、編曲でスパイスを入れることでより"うた"の強さが引き立っている。

みせざき

 声が透き通っている。自分までもが透明になってしまうかのような気持ちになった。ずっと聴いていられるような崇高な美しさとその先にある悲しさまでも一望できる気がした。ただジャンルを逸脱するような影響も感じられる曲もあり、総合的に楽しめる作品だと感じた。

六月

 Simon & Garfunkelって、自分の中ではもっと昔の音楽のイメージだったから、1970年までやっていたのは意外だった。これがラスト・アルバムらしいので、一応それまでのアルバムを聴いてみると、なんで今までこのランキングに入ってこなかったんだろうと思うほどに、いい曲だし、それなりにロックっぽい瞬間とか、コンセプト・アルバムっぽい作品もあったりして、それなりに当時の最先端にいたグループなんだという発見があった。
 それで今作であるが、一曲目を再生した瞬間、高校の合唱曲が始まったのかと思った。
そしてその次の曲は「コンドルは飛んでゆく」だから、意外とこのグループは日本の音楽教育に大きな影響を与えているのだろうか?その業界で何か大事なことを決める偉い人にめちゃファンだった人がいたのかも。
 曲調としてはフォーク調を飛び越えてホーンが取り入れられたり、ラテンっぽい曲調の楽曲があったりと、多彩な作風になっているけれど、自分としては素朴な頃のアルバムの方が好きかなあと思った。最後の「Song for the Asking」は聴いててむちゃむちゃ泣きそうになるほどの名曲。

和田醉象

 なんでそんなにドラマチックなんだよ。ないちゃうだろ。
 冗談じゃなく、人の悲哀をパッケージしていると思う。大事なのは"哀"も含んでいるということだ。
 中には明るいリズムの曲もあるけど、乗り気じゃない感じがする。異国へ旅行に来たのに現地の祭りの人波に飲まれてしまった"トホホ"感。どこまでも人と出会えない一人旅である。曲として盛り上がってるときも誰かと一緒にいる喜びというよりも一人で楽しみを見出したときのはしゃぎ方だ。二人で歌っているのに。自動車に乗るというよりかは自転車、旅館というよりビジネスホテル。

渡田

 高級車のCMみたいな曲。
 穏やかな笛の音とひたすらに伸びる綺麗な歌声は夢見心地で、自分の現実に繋がっているようなリアリティは感じなかったけれど、それが却ってアニメやファンタジー映画を見る時のような気分にさせてくれる。自分の知らない世界の果てに、この音楽に相応しい静謐で美しい夜の森や月夜が存在するのではないかと考えることができた。

次回予告

次回は、Van Morrison『Moondance』を扱います。

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