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Black Sabbath『Paranoid』(1970)

アルバム情報

アーティスト:Brack Sabbath
リリース日:1970/9/18
レーベル:Vertigo(UK),Warner Bros.(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は139位でした。

メンバーの感想

The End End

 前作で褒めたと思ったらこれだ、このディストーション・サウンド。ドロドロした魔術的なムードが消え去って、これじゃあ、ただのちょっとおとなしいレッド・ツェッペリンじゃないか。
 や、良い音だとは思うんだけど、良い音だったら良いってわけじゃないから……

コーメイ

 重厚感溢れる音で構成されていて、なおかつ速度もゆっくりであった。これらの要素がアルバムで通底しており、ヘヴィさを求める聴き手には、たいそう喜ばれるそうなアルバムであった。だが、個人的には、もう少ししなやかさーーヘヴィさを失ったならば、元も子もないけれどもーーなものも聴いてみたいと思わせる作品であった。

桜子

 私の好きなアルバムベスト100には入っていると思います!好きなアルバムです!聴いていて陶酔の地に行けるうえに、間口が広い作品ですよね。この雰囲気を保ちながら、歌えるリフを載せた発明は素晴らしいです。ツェッペリンを踏襲しているだろうと思えるところもまた良い。

湘南ギャル

 動と静のコントラストが美しい。そして、予想していたサウンドより何段もスマート。自分たちが出したい音をはっきりとわかっていて、真っ直ぐにそれを追い求めているような、真面目で誠実な印象を受ける。ひとつひとつの音にエナジーがこもっていて、聴いてるだけで足元から気力がみなぎってくる。彼らの持つ美学やこだわりが随所に現れており、それがアルバムとしての一体感を生み出していた。

しろみけさん

 レッド・ツェッペリンやストゥージズなどと比べればすぐにわかるが、このバンドは激しさに主眼を置いていないのが特異。わかりやすいリフで“ここはこう”という構造の移り変わりが明示されており、ハーモニーが反教会的なのに全体としては教会的なマナーに即しているのがひねてる。あと、私はフランク・オーシャンがDJ mixで「Planet Caravan」をアンビエントとして使っていたのに衝撃を受けたクチなので……泣。

談合坂

 ミチミチに音が詰まってハイスピードで……みたいなモダンな要素がないことで、独特の緊張感が漂っているのを感じる。暗くて広い空間に放り出されたときの不安、空間の大きさなんてお構いなしに壁まで一直線に刺さりに行く電気ギター、背後に迫るアイアン・マンの足音。ただただお気楽には聴いていられなくて、どこかに引きずり込まれないように気を張っている、そういう楽しさ。

遅い。圧倒的に遅い。そして重い。この時点でオリジナリティに溢れている。同時に、そのリフたちは口ずさめてしまうほどにわかりやすい。シンプルなパワーコードやオープンコードを組み合わせて、聴く人を静かに海へ引き込む。この音楽は私にとってはメタル的な記号というよりも、スマパンやHumといったUSオルタナへ直列に連なるものに聴こえる。そういえばArctic Monkeysが21世紀で最も売れたロックアルバム『AM』の一曲目で引用してるし、私が最近聴いている"ロック"と言われる音楽への影響がとても大きい。凄く楽しく聴けた。

みせざき

 このアルバムはギターをコピーするのが最高に気持ち良い。聴く心を鷲掴みにするのは勿論の事、コピーしてみると分かるのが、指が流れるように動いていき、何処かに導かれていく感覚を覚えるのだ。「War Pig」、「Paranoid」、「Iron Man」といった曲は勿論のこと、後半の曲達がほんと圧巻だと思う。トニー・アイオミがどれ程素晴らしいリフメイカーであるかは本作で完全確立されたと思うし、本作を聴いてそれが分からない人なんて居ない筈だと思う。
 「Hand of Down」がやっぱり良い。ここまで静と動を完全に体現した組曲は無いし、ギターソロも含めてもうギターというものの完璧な表現の一つだと思う。
 曲名忘れたが最後の曲も好きだ!もう最高!こんなバンド永遠に生き続けて欲しい!!

六月

 メタル特有の引き摺る感じが苦手なのだけれど、このアルバムにはその感じがない、紋切り型になる前の目新しい表現だった頃の作品だというのもあるだろうけれど、今聴いても新鮮に感じるのは、そこに様々な実験的な精神が宿っているからだと思う。1曲目の「War Pigs」の最後の早回しになるところなんて、Corneliusかと思った。だからこそいわゆるメタルっぽくなるB面からの内容はちょっと物足りないけれど。
 「Electric Funeral」なんていうへんちきりんなタイトルが、このバンドの音楽性を端的に指し示しているような気がしてならない。電気を使用している楽器でもっておどろおどろしさを表現した音楽を作ろうとするなんて、よくよく考えたら不思議なことだと思う。音楽というものが、そういう形而上的な見えないものを現実にある音という現象に変換させるというのが音楽の作用のひとつだとするのなら、その作用を真っ当に信じている音楽だと言えるのではないか。

和田醉象

 リフというものを世の中が意識しだしたきっかけなのかもしれない。いや、みんな存在は認めていたけど、ここまでのものと思っていなかったはずだ。こんなにヘヴィで、新しい音楽すらも作り上げるものだとは思ってなかったはずだ。
 1stの時はBlack Sabbathという存在が現れたことを知らせる警鐘に過ぎなかったが、もう我々は台風の中に取り込まれてしまった。もう二度と出ることのできない黒い嵐に。

渡田

 曲が始まる際、ゆっくり低く震える音は、重々しい映画が始まる時のような緊張感で惹きつけてくれる。
 ハードロックは全然聞かないジャンルだけれど、それでもこのアルバムは自分の音楽だと思えた。
 曲のいろいろな箇所に、不気味で、緊張感のある、一筋縄でいかない演出が目立たないままにあって、そういった点から目が離せない。
 ドラムの音が、一定のテンポで細かくキラキラ響く。そういう音は、真夜中に遠くを走る列車の響きを聴いているようにも思え、正にそうした景色を見る時のような、忙しなさと、重厚さを同時に感じられる。
 "不気味さ"の持つパワーが最大風速のまま続く夢中さがあった。

次回予告

次回は、Neil Young『After the Gold Rush』を扱います。

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