Hi-STANDARD『MAKING THE ROAD』(1999)
アルバム情報
アーティスト: Hi-STANDARD
リリース日: 1999/6/30
レーベル: PIZZA OF DEATH RECORDS(日本)
「50年の邦楽ベスト100」における順位は91位でした。
メンバーの感想
The End End
まず、”自主レーベルからでも100万枚売ることができるし、大手と契約しなくても食っていけて好きなイベントをやれる”という、その希望を示したという意味だけでもとてつもなく重要な作品でありバンドだ。
ずっと同じサウンドが鳴っているのだけど、豊かな素養をめちゃくちゃ感じる。原典にあたっている人の作品というか。ハイスタやその周辺にいたバンドと、彼らが生み出したフォロワーの大半との違いは、やっぱりそこにあると思う。洋楽コンプレックスを煽りたいわけではないのだけど、でも自分たちがやっていること/やろうとしていることがどんな道を辿って自分たちのところへやってきたのかを知っていることはとても大事だから…
フィッシュマンズの時にも書いたが、ギターやベースって意図したタイミングで音を出すこと以上に、意図したタイミングで音を止めることが本当に難しいんですよね。横山健のブリッジミュートは、そのキレに溢れた凄い演奏だと感じる。マーシャルアンプ的なドライブサウンドが苦手な私がこれを好きなのは、右手のダイナミクスやタイム感が素晴らしく豊かだから。押さえつけられているような印象がないから、パワーコードがどこまでも突き抜けて広がっていく。ステイゴールドやでしかし。
桜子
こういうやつ聴き馴染み無さすぎて苦手だ、、、何回も聴いたけど気持ちがノらなかった。疲れてしまいました。
あと一体どうして1曲ボサノバみたいな曲が入っているんだ!こういうのも出来るんかい!とクスッとしてしまいました。
俊介
ファラオサンダースのあとに聴いたら展開もスピードも早すぎて残像が引き伸ばされてみえた、ドラッグレースよろしく。
アルバム全体に翳りが圧倒的にないのとドラムがめちゃくちゃうめえ。ドラムのつんのめったタイム感がかなりバンド全体にいい緊張感をもたらしてる気がする。もし、ドラムがこれじゃなかったらアルバム全体として締まらない。
パンクをほとんど聴かない&速いテンポの音楽を聴くことがなくなった自分の耳に新鮮に突っ込んでくる恒岡氏の暴力的なまでの2ビートの迫力は、ドラムへのフォーカスを強制させてくれて、別の角度からパンクの価値を提示してくれた、ってくらいドラムのアルバムだと勝手に思ってます。
当時珍しく自身でレーベルを立ち上げて、インディペンデントなバンドの経営を始めたり、そこからインディーズレーベルブームを起こして数多の後続を生み出したことこそが彼らの功績で、個人的にはハイスタよりそのフォロワーの作る音楽の方が好みだったって言いたかったけど、改まってじっくり聴き直すと素敵な魅力があちらこちらに。
湘南ギャル
数多ある音楽ジャンルの中で、ポップパンクの類が一番苦手だ。それだけに、ハイスタを聴くのは懸念していたけれど、存外聴きやすい。この企画に参加してから、聴くことのできる音楽の幅が増えたような気がする。あまりに音楽の好き嫌いが激しかった私に対して、「聴くジャンルを幅広くしていけば嫌いな音楽は減ってくる」と、友人がアドバイスしてくれたことがある。5年越しくらいにそれを実感できてるかも。このブログもいわゆる有名作品の方がPV多いけど、そうじゃない作品を手に取るきっかけになってくれたら、もっと嬉しいな。
しろみけさん
パンクロックというより、早回しにしてフレーズよりもコードストロークに集中するようになったハードロックのよう。それはブラック・サバスのカバー「Changes」を聞けば明らかで、スターリンとかブルーハーツとかの先輩と近いようで遠い場所から出てきた人たちであるように感じた。何より、久しくこんなにミチミチなギターの音を聞いていなかったので新鮮だった。これまで聞いてきたアルバムでは鳴っていなかった音だが、今「ギターのかっこいい音」と聞いて多くのプレイヤーが求めるのは、こういうハムの太い音なのだと直感している。
p.s. 横山健が所有しているギターを紹介する動画があるのだが、どんなギターもミチミチにするのが面白いのでぜひ見てほしい。こういうジャンルに疎いものからすると、聴き比べできそうにもない…。
談合坂
本当にごく自然に、なんだかこの人たちの後についていきたいと思える。芯があるけどオープンで、頼りになるというのか、寄りかかっても絶対に壊れたりしないだろうなという安心感がある。
こういう飾り気のない素直な気持ちよさに従ったギターとベースが私は好きです。10代の頃よりも、こういうサウンドに感じる心地良さがより深く刺さるようになった気もします。
葱
有名なあのジャケットと別バージョンのジャケットの裏には「道作る」とでっかく日本語で書かれていた記憶がある。でも、この作品及びHi-STANDARDが行ったことは「道を作る」ではなく「地を均す」ことだったのではないか。メジャーもインディーも楽器が上手い下手もパンクだかハードコアだかおしゃれかダサいかとか、そういう一切をごちゃ混ぜにしてただ「かっこいいかどうか」という指標のみを導入した。そんなストレートな''やっていき''がこのアルバムに満ちる魔法の秘訣だ。私もこのアルバムに掻き立てられNOFX、Blink 182、Hawaiian6、Sum41とかを漁ったパンクキッズだった時期があった。半年くらい。
Hi-STANDARDは「軽い」のが良いと思う。ツーバスじゃないし曲も短いしめちゃくちゃ喉越しが良い。西海岸の乾いた風がスーッと通り抜ける。そして「Starry Night」で少し泣く。大好きです。
みせざき
まず、恐らく日本詩を捨て去っているのはそれなりの覚悟をもってしているのだと思いますが、日本人声ではあってもGreen dayとかよりもポップなBlink 182やSum 41を想起させるポップパンクの部類の音楽の一部に感じました。ただJUST ROCKなどハードコア的な疾走感を感じる瞬間もこれまた時々感じました。しかし彼らのこれまでのカバー曲のレパートリーを見てみても、あくまで王道ロック・ポップスからの選曲が多いので、ポップさというのが大前提にはあるのだと思います。ブラックサバスのChangesはサバスには珍しいしっとりしたピアノバラードなのにサバス版よりもハードなポップパンクに変形させてしまうのもまた面白かったです。
和田醉象
本当に自分にとっての原体験に近いアルバムが続く。ただ、これは苦手な内容、嫌な思い出のあるアルバムだ。久しぶりに本当に気乗りしないレビュー。
中高時代、ウェイウェイ言っている連中は皆これとELLEGARDENとワンオクとホルモンを聞いてた。曲自体は良くてもこれらをコピーしてワーワー言っている人たちのことが苦手で、音楽は好きでも心がNG出す状況が何度もあった。多分この先自分はずっとメロコア好きになれないと思う。
頑張って聞いてみたけど、曲自体にエネルギーを感じても、「はあ」となってしまう自分がいる。
最初は同じような曲ばっかりたくさん書けるのすごいな、と思っていたが、意外にも曲調のバリエーションがあって、ブラックサバスのカバーもあってそれなりに楽しめた。
渡田
パンクは好きなジャンルだし、だからこそ聴き馴染みもあったけれど、どうしてか今まで聴いてきたパンクミュージックとは違う印象を抱いた。
思うに、自分にとってのパンクロックの魅力の本質は、パンクらしさそのものよりも、そこから垣間見える「意外な一面」のほうにあった気がする。ラモーンズやダムド、パティ・スミス…等パンクアーティストの曲を聴いていると、ラフな勢いの音の中に、しおらしさや妖艶さ、文学性なんかを感じる一瞬があって、そこに見られるアーティストの繊細さ、思慮深さに魅力を感じていた。
このアルバムも全体の印象はパンクではあるものの、時に表れる落ち着いたフレーズや、ポップな音を感じる場面のほうが印象深く残った。そういったふとした一面が、今まで聴いていたパンクとは違ったから、印象も異なったのだと思う。
次回予告
次回は、キリンジ『3』を扱います。
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