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DA PUMP『Expression』(1998)

アルバム情報

アーティスト: DA PUMP
リリース日: 1998/7/23
レーベル: avex tune
今回の選者は桜子です。

メンバーの感想

桜子(選考理由)

 このランキング、部活の練習試合の行き帰りで聴いた、友達のお母さんの車でかかっているようなアルバムが全然ない!!
 私は割とそういった音楽も愛してきたので、私が紹介するのもアリなんじゃないかと思い選びました。
 それと、このアルバムのコンポーザー、m.c.A・T(冨樫明生)さんおよびDA PUMPの功績って00年代周辺には確かにあったと思うのに、全然語られていないなと感じたのも理由のひとつ。
ポップミュージックにラップパートを入れるムーブを作ったのはm.c.A・Tだっていう諸説あるくらいだし...
 90年代USのサウンドを、ファンクネスに落とし込み、ISSAのハイトーンボイスを生かした分かりやすい、親しみやすいホッとするメロディをミックスして1つのジャンルを作っている。
 でもあくまでJ-POP。J-POPの範囲内でそれを成立させているのがすごく好きな所。
 デビュー時高校生だった彼らが歌う、ちょっと世間知らずで軟派っぽい歌詞もすごく可愛い。

The End End

 徹底して歌のためにスペースが空けられている。ベースはすっごく低くて、ギターは高音弦主体のカッティングをしていて、鍵盤やブラスはアタックと倍音だけ聴こえればいい、とでも言いたげな音色のチョイスをしている。ミックスはアレンジの段階から始まっている、そのことを分かりやすく示したサウンドだ。個人的にはFirst loveより好みの音像かも。
 あと、鳴るだけで笑ってまうことでお馴染みのオーケストラルヒットがバンバン飛び交っていて、ずーっとニコニコしてました。

俊介

 20世紀末のザラついてて湿った感じをそのままパッケージングしたようなかんじ。
 普遍的じゃないってこんなに素晴らしい。
 歌詞みたいな経験も感覚も持ち合わせてないけど、ふつうに聴き流せるのはビートの能天気さがあるからか。
 世紀末の空元気、素敵。

湘南ギャル

 このちょいダサ音像、好きだな〜〜。「まあ、だいじょぶっしょ!」って、テキトーだけど結構頼れる先輩が言ってくれているような音像。明るいけれど、それを押し付けようとしてこない。どんな聞き手にも開かれた存在というか、間口の広さみたいなのが垣間見える。その懐の大きさが先輩っぽい安心感を生んでいるのかもしれない。歌詞で背中を押される、とかは他の曲でもあるけれど、音像でそれを伝えられる(意図してるしてないに関わらず)のは、なかなか稀有な存在だと思う。

しろみけさん

 「We'll get The Wonderful one」の耳の奥まで飛び込んでくるブレイクビーツ。「Stay Together」のドラム缶に頭打ち付けてるみたいなスネア、そしてオケヒ……。ファンクの中に塗された異分子は、狂騒的に身体を動かそうとしてくる。アバンギャルドに外れそうで外れない、閉塞的な開放感。それはサウンドだけじゃなく、「Love Is The Final Liberty」や「We'll get The Wonderful one」で語られる時代観なんかはほんのり絶望していて、もうなんか小泉政権みたい。ノストラダムスとか本気で信じてそうだし、「死ぬのダリーーー」って言いながらオープンカーで葉山向かってる。ビーチでナンパするつもりなのに4人乗りの車に4人乗っててサイコー!

談合坂

 90年代から00年代にかけての、自分がほんの小さい頃にはまだ残っていた空気感ってこれだったなと思う。洗練しきっていないというのは語弊があるけど、決してゴージャスではなくてもあらゆるものにしっかり質量があるような感じ。
 明確に歌モノだし、明快なアレンジではあるんだけど、同じようにパフォーマンスできるかと言われたら絶対に無理だとも思える、ポップとカリスマ性の塩梅が絶妙だと感じた。

 DA PUMPというかISSAは仮面ライダーの主題歌でお世話になりまして、小さい頃に車の中で親がビートルズを流すか私が仮面ライダー主題歌全集を流すかでちょっと揉めた記憶があります。名作・仮面ライダー555の主題歌をISSAが歌っていて、今でもカラオケに行くと歌っちゃいます。そんなISSAらの声とグルービーなポップを濃縮した本作はやはり00年代付近のとめどない平成の匂いがどこまでも立ち込めてくるようで素敵です。

みせざき

 跳ねるようなビートと伸びやかなボーカル、そして素直なメロディーが丁度良い塩梅で絡み合う感覚が音楽的にも凄く楽しめる内容でした。昭和から平成に移行する際の展望・高揚感を感じ取れ、時代性、空気感がしっかり伝わってきました。国民的アイドルのキャラを残しながら硬派なリスナーへの受け入れも双方を実現させることを目的としている作品だと感じました。

和田醉象

 声があどけねぇ〜!!!若手のアイドルとかにファンが付く理由が何となく分かる。一生懸命でまぶしいんだよな。
 リズム的には、世紀末らしい結構バリエーションある。(80年代から続くリズムネイションの総決算という感じだ。)緩急付いた感じで聞いていて飽きない。「ごきげんだぜっ!」とかマイケルジャクソンのJamみたいでちょっと楽しい。この時期のエイベックスはマジでさえまくっているぜ。
 古臭い音色も一周回って愛おしい。あと歌詞とタイトルに理由の分からないにやたらとカタカナを使うのはSMAPだけだと思ってたけど、別にそんなことないのね(17guyzの歌詞を読んで流石に古くて笑ってしまった)
 寝る前に聞くとおちおち眠れなくなっちまうぜ!

渡田

 明確に歌が主役になっている曲。それだけ楽器のパートが脇役として凝られているのを感じた。ベースの音が歌声に干渉しないように緩く低く進展したり、その他の楽器ら歌詞の合間が空きそうになるとすかさず主張したり…各楽器、歌声を生かすための気が利いている。
 こうした特徴に併せて、若々しい男声、ゆっくりはっきり聞かせる歌詞といった個性がそれぞれ際立っていて、J-popとして、もっと言えば日本のアイドル音楽としての完成度を感じた。

次回予告

次回は、俊介の選出アルバムを扱います。

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