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Beatles『Revolver』(1966)

アルバム情報

アーティスト: Beatles
リリース日: 1966/8/5
レーベル: Parlophone(UK)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は11位でした。

メンバーの感想

The End End

 「Taxman」のベース、めっちゃ細野だ……!"ポール・マッカートニーのベースプレイは別格だった"と発言していたのを見たことがあるけれど、それがすごく腑に落ちた瞬間だった。
 多くの瞬間でボーカルがセンターではなく"左右から"鳴っていて、でもダブリング(同じ演奏/歌唱を複数回重ねることでタイミングやピッチの微細なズレにより浮いたような音像を生み出す手法)を行ったわけではなさそうだぞ……?と思っていたら、左右のチャンネルに少しだけタイミングをずらした同一の音源を収録することで擬似的なダブリング効果を生み出しているとのことらしい。1966年にもうそんなテクニックまで見つけだしてしまっている/それほどまでに"録音物を作る"ことを突き詰めているの、ちょっと凄すぎて言葉がないな。

コーメイ

 "なんの音楽聴こうかな"となった際、まず頭に思い浮かべるアルバムが、『Revolver』である。そのため、聴く回数が他のアルバムに比して、たいそう多い。が、それでも、新たな発見があり、それによって、楽しくなる。
 具体的な内容に入ると、Ringoの「She Said She Said」におけるドラムが、たいそう気に入っている。何度か動画サイトのコピーを聴いたが、あの攻める音が出ていないように思われる。それらを聴いた後、本家に戻ると、ドラムで珍しく、攻勢をかけている様子が、確認出来る。この姿勢が、何度聴いても飽きず、今回も、異なる拍に移行する際の緩急の付け方に、未発見のものが、残されていた。ぐにゃぐにゃ脱線して申し訳ないけれども、これが、醍醐味なのかもしれない。

湘南ギャル

 好きな曲の数だけで言ったらビートルズのアルバムの中でもかなり上位、なんなら一番多いくらいかも。でも、アルバムとして見るとどういう感想を持てばいいのかわからなくなる。
 イエローサブマリンとか、いきなり能天気だな!空気読めよ!って思ってたんだけど、単体で聴いたらめちゃくちゃ好きになっちゃってビビった。ずっと雰囲気明るいのに、サビのボーカルだけ聴くとすっげーダルそうなのがいい。途中で聴こえてくる効果音みたいなやつらも全部かわいいし。
 音楽聴く時は基本的にアルバムで通すことが多いけど、リボルバーだけは一曲一曲噛み締めた方が自分好みの味がする。流派には反するけど、シャッフル再生で聴いちゃおっかな。それもなんか違うんだよな。

しろみけさん

 なんかジョンとジョージくんが彼女さんとインド行ったとか聞いたんだけど、「I’m Only Sleeping」とかモロに影響受けててちょっと怖い……。ポールさんは「Eleana Rigby」とか「Got to Get You into My Life」みたいなバンド以外の音色を使う方向に進んだりして、それはそれでカッコいいんだけど、前みたいにワチャワチャ歌うような曲は減っちゃったな……。最後の曲はウネウネしてて怖いし、ライブもやってくれないし、もうなんなの!

談合坂

 『Rubber Soul』ではなんか普通だな……という印象を拭いきれずに正直リスナーとしてのコメントが特に浮かんでこなくて困っていたのだけど、このぐらい四人組バンドの構成を捨ててくれると一転してかなり楽しんで聴くことができた。というか一年経たずにこんな次弾を打ち出せるって本当にすごいですね……。けっこうアイドルっぽさがあるのも気に入ったポイントかも。いろいろな経過があった上でそれでも創作されるキラキラしてるものが私は好きなので。

 かなり破茶滅茶なことをやっていた記憶があったが、むしろ手堅くまとめているという印象。「TAXMAN」「She Said She Said」「And Your Bird Can Sing」「Doctor Robert」といった初期との接続がわかりやすい比較的ラフな曲にこそ、実験的な作風で得た地肩の強さがフィードバックされて超一流のポップソングになっている。というかアルバム全体を通しても聴きやすいし、彼らのバランス感覚はやはり凄い。ビーチボーイズのレビューの際に書いたが、この頃は技術の進化が生み出した物自体が作品に与える影響が大きくて、そこにロマンを感じる。逆再生したり、色んな音を足したり、音楽製作に対して全員がワクワクして取り組んでいる様が浮かぶ。

みせざき

 ビートルズの何かのドキュメントで、『Rubber Soul』と本作は同時期にセッションされた作品で兄弟のようなものだ、という話を聞いたが、正直全くそのような印象を受けない。本作には『Rubber Soul』には無い過度な緊張感を全般として感じる。『Pet Sounds』からのウォール・オブ・サウンドの要素は確かに感じながらも、大胆さを武器に独自のバーケードが貼られたような印象を受ける。
 また遊び心を感じる程に音楽のバリエーションが広く、特に「Taxman」から「Eleanor Rigby」の移り変わりには度肝を抜かれた。また曲によって主張される楽器が異なる気もする。例えば「Eleanor Rigby」だと管楽器で、「Good Day Sunshine」だとオルガンだったり、別の曲ではシタールだったりと、そこに大胆さを感じるのかもしれない。
 遊び心も感じながらも過度な緊張に包まれた『Revolver』の雰囲気を久々に楽しむことができた。

六月

 おクスリ(LSD)のチカラってすごい…
 明らかにヴォーカルや楽器の音にエフェクトを意図的にかけたり、ロックでは使われていない楽器の音やそもそも楽器ではない音を入れたり、どんどんいわゆるバンド・サウンドからは乖離し始めているように見えるけれど、いわゆる"相違のあるもの同士が一体化して一緒に動く"という奇跡は、人間同士が集まるバンドという形態(状態といってもいい)やそれが奏でるサウンドにそもそも最初から備わっている(バンドに限らず、集団で創作活動を行おうとしたことがある人はそれがどれだけ難しいことか、そしてそこから良い成果物が生まれるということがどれだけ奇跡なのか、わかるはずだ)。その運動を単なる演奏や、その場のアンプやエフェクターによる音色の加工だけではなく、いわゆる録音された音源を弄るという領域にまで拡大して行っていったことがやはりこのバンドの起こした発明で、革命なのだと思う。そんなことをなぜ音大を出たインテリ実験音楽家ではなく、リヴァプールのチンピラ少年であった4人が行えたのかが不思議で仕方がないが、まあ世界は往往にしてそういう不可思議な奇跡が起きるものだとしておこう。
 今まで様々な音楽をリファレンスし続けた人たちがリファレンス元になる音楽を作り始めた感じがする。いわゆる今ロックがやってること全部もうこの人らがやっとるやん!って気持ち。
 ちなみに最近出たミックスし直されたヴァージョンのデラックス版に収録されてる「Tommrow Never Knows」のテイク違い(おそらく「(Take 1)」と書かれてるやつ)は必聴です。冗談抜きでたった今この音源がリリースされても、Tame Impalaと並ぶようなサイケ・ロックの傑作として称賛されているでしょう(これがサイケの一丁目一番地なのだからそりゃそうなのだけれど)。それぐらいすごいことを成し遂げてしまったのだと震えてしまう。恐ろしい……恐ろしい!

和田醉象

 モノ盤で普段聴いてるからかもだけど、ずっと自宅感あるアルバムだと思ってる。音が近い。
 微妙に割れたギター、やけに近いコーラス。自分でスタジオで録ったみたいな親しみがある。ばかみたいなギターリフ、ヤケクソ逆回転ギター、チェンバーポップ。やれること全部やってやろうという意欲が結果何度聴いても飽きない魔法のようなアルバムを作った。
 個人的には 「For No One」が好きだ。六本木にあるビートルズレストランに行ったときにリクエストしたことがあるくらい!

渡田

 物静かで淡々とした歌詞とメロディの裏で、いろいろな楽器の音がそれぞれ交互に現れては消えしていく曲が多かった。今までこういった特徴の音楽、一聴して静かだけれど実は複雑な音楽は、夢中になるのに時間がかかることが多かったけれど、今回はすぐにその曲調に引き込まれた。
 ほとんどの曲で、再生と同時に歌詞が始まっていたからだと思う。唐突にビートルズの声が耳に入るせいで、こちらの音楽を聴く心の準備ができる前でも、そこに集中させられる。この否が応でも集中させられる感覚は意外と心地よくて、テーマパークとか演劇とか見に行った時の、こちらを非日常にみるみる引きずり込んでくれる時の感覚と似ている。音楽単体ではなかなか味わえない感覚だと思う。

次回予告

次回は、Nina Simone『Wild is the Wind』を扱います。

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