見出し画像

理想の食事なんて作れない

透析を始める父の食事について栄養指導を受けてきた。

今回で4回目。入院中の父も同席した。車椅子に乗って現れた父は、やはり体力が低下しているように見えた。体重を測るために立ち上がるのも一苦労。危なっかしい。

栄養指導の内容は予想がついた。4回目だし。
塩分とカリウムを控えること。タンパク質もね。野菜は茹でこぼし、生のフルーツは控えめに、汁物の汁は残してね。

分かってるんだよ、そんなことは。
私だって栄養士のはしくれだ。食事が大事ってことは、分かってる。

だけど、そんな理想的な食事を準備するのは無理なんだよ。できないものは、できない。父の食事を作るのは、80歳の母。今まで作ってきた食事をそんなに簡単に変えられない。

じゃ、私が作る?毎日実家に行くとか絶対イヤ!母と私が衝突するのは目に見えてる。そこまでできない。

宅配の腎臓食も試してみた。一食1000円くらいするため、実家の食費は爆上がり。試食したけど普通に美味しく食べられる。薄味なのは慣れてもらうしかない。塩分を控えないといけないんだから。

しかし、父はまずいと言って食べない。父はもともと偏食で普通の食事でも好きなものしか食べない。
しかも父は、「家のメシがまずい」と会う人ごとに言いふらしていた。

勘弁してくれ。こんなことされたんじゃ、母も私もストレスがたまる。宅配の腎臓食はやめた。

こんな思いを抱えて臨んだ4回目の栄養指導。過去3回と同じことを聞いても意味がない。どうせできないのだから。なので、今回は最初から、「できません」と伝えることにした。

「父の食事の準備をしているのは母です。高齢なため、指導通りの食事を作ることはできません。宅配の腎臓食も試してみましたが、父の口には合わず、食事量が減ってしまいました。なので、今は普通の食事をしています。理想通りの食事の準備はできませんが、できる範囲で改善したいと思います」
と言ってみた。

すると栄養士さんから、
「体力の維持を優先して考えましょう。食べないのが一番よくない。好きなものでいいので、食べられるものを食べてください」
と予想外の答え。

透析を始めることで、タンパク質の摂取制限が少し緩くなったこと、普通食だとしても完食しないで残すのあれば、そこまで制限を気にしなくていい、との説明を受けた。その上で、生のフルーツを缶詰に変えてみるなど、できる範囲でやってくださいとのことだった。

救われた気がした。今回は栄養指導というより、私へのカウンセリングだったと思う。

食べたくもないものを毎日食べて、ちょっとくらい寿命が伸びたからといって、それって幸せなんだろうか?

でも腎臓に悪いと分かっていて、食べさせるってどうなの? やっぱり私がちゃんとしないと。でもさ本人にやる気がないんだから、意味ないよね?

そもそも健康管理って自分でするもんでしょ? 食事の管理を全部丸投げってどゆこと?おかしくね? 勝手にすれば〜

父の食事については、ずっと葛藤があった。正解のない問題。今回の栄養指導で吹っ切れた。父には好きなように食事をしてもらうことにする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?