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9月中旬 黄泉の中心で音楽を叫んだ獣

早寝早起きって出来たことない。システム上、早寝さえすればオートで早起きできるはずなのにおかしいな。


CLOCK TOWER 

 小学生の頃にレンタルしたゲームセンターCXのDVDで有野課長がプレイしてた。生まれて初めて見たホラーゲームだったと思う。

 とにかく苦戦していたような記憶がある。節々の演出や恐ろしいBGMが強い魅力を放っており、十数年経っても覚えているような状況。調べてみるとコンソールサイトでプレイできるようなので
projectEGGというサービスに1200円ほど払って購入した。チュートリアルなどなく、説明書もついていないので最初の1時間は手探りで操作を確かめる。めちゃくちゃ難しい。シザーマン出てきすぎ。移動もままならない。

 結局は操作方法をググり、攻略チャートまでガン見してやっとクリアした。これをやってた昔のガキすごいやん。俺ならクリアまでに夏休みまるまる消費しちゃうかも。

 初見じゃ到底辿り着けないような骨太トゥルーエンドとか置いといて、自分が一番好きなシーンは車EDです。小学生の頃オリジナルストーリーを作ろうみたいな授業で、ここのオチを丸パクリするくらい好きだった。

 システムの話だけど、超探偵事件簿レインコードに通づるやり方だと感じた。まだクリアしてないんだけど、レインコードは日常→捜査→謎迷宮っていう流れで、街を自由に歩き回ったりサブクエストを受けたりできるのは日常パートだけだ。後戻りできないポイントがあり、そこを超えるとひたすら事件に巻き込まれていく感じ。

 clock towerも、儀式部屋の先で番犬をやり過ごすともう後戻りできない。その後はボタン連打バトルやいくつかの分岐を残すだけなので必要なフラグなどは事前に立てておく必要がある。超絶自由な捜査パートを経て、その答え合わせパートに突入する流れって結構面白い。

 凡庸なゲームしかやってこなかったので、こういう大胆な構成すごく好き。一旦流れが分かれば捜査パートを何周もしてエンディング分岐を確認することができるし、隙間時間にできるミニゲーム的な楽しみに変化する。

ハゲタカ 上下 真山仁

 バイト先のオーナーが経営に詳しいので、ビジネスとかお金の流れってどうやって勉強したら良いんですか?と聞いてみた。

「ハゲタカを読んでください」

とのことだったので、とりあえず読んでみた。
金融の知識はバンバン出てくるのに、エンタメ小説として面白い!
適度な説明を挟んでくれるから置いていかれるようなことはない。

 かなり完成度の高い小説だったが、特によかったのは外資ハゲタカファンド側にも感情移入してしまう構成だ。
日本vs外資、創業者vs買収者
こんな対立構造であればどちらに感情移入するかは明白、と思いきやそこを大きく揺るがすストーリーになっており面白すぎる。

 あの企業の経営は下手だとか、役員の節税やらの話は普通外に出ない。そういった人間味のあるネタは企業イメージを損なうからだ。そうすると外から見た企業はロボットのように無機質で頭がよく、いわゆる”ちゃんとしてる”はずだという先入観がある。しかし大勢のステークホルダーで形成され、それぞれに損得問題が絡んでいるのだから機械のようにはいかない。
 実際は全体の利益追求ではなく一部の有力者がバレずに少しだけ得をする選択が積み重なる。そうした利益誘導は法律で規制するしかないのだが、法律の制定手順にインセンティブがなければいけないというデッドロックになるかもしれない。
 大きなお金を動かす立場の人こそ、人間味が必要なんだなぁと考えさせらる。

お化けの愛し方 荒俣宏

 北阿佐ヶ谷のおしゃんな古本屋で買った本 2冊目。

 人がなぜ怪談を好むのかという哲学的な問題に対し、タイトル通り愛憎を絡めて回答している歴史書。基本的に古代中国から中世日本にかけての怪談の輸出にスポットライトを当てている。

 現代の怪談というワードからは幽霊とか超能力といったイメージが湧くが、本著で紹介される古代中国の怪談は現実世界に対比されるファンタジーとしての側面が強い。つまり現実逃避としての面白さから始まったということらしい。
 一つの物語が地域によって異なる形をとる。その差分に注目してお国柄を考察していく形式だ。物語を書き残すのはインテリ階級なので、科挙の生み出したストレスが多分に影響する点が面白かった。

 初期の怪談は恐怖を楽しむ側面のほかに、幽霊となった異性との恋物語というモチーフも多かったらしい。幽霊であれば、現実で手の届かないような美人とも結婚できる。ただし寿命は吸われるらしい。

映画 サユリ

ここ4年くらい原宿・室木おすしのありスパを聞いている。

 突然サユリの話が出てきたので動画を一旦停止して観に行った。
周りでも少しだけ評判を聞いていて、家族系という前情報だけ知っていた。そして監督は白石晃士。どちらもあんまり好みじゃないので見に行くつもりなどなかったのだが、ありスパを聞くために観に行った。

 結論、良いじゃん。白石晃士も実は良いじゃん。

 最近の私はどれだけホラーというものの恐怖感を高められるのかという純ホラー哲学にのめりこんで、分析美学にまで手を出す拗らせっぷりだったので、ホラーというジャンルを使って伝えたいことを伝えるという、クリエイティブの源流としての作品を軽視していた面がある。
 依然、寒い内輪ノリのホラー自体は大嫌いなままだが、本作の”生きろ”というメッセージは全然寒くない。面白かった。下品な表現・センシティブなシーンもあるので、皆さん一人で見てください。

詩を読む人のために 三好達治

 詩人 三好達治が、詩を読む青少年のために書き上げた入門書。
入門書といっているが、複雑な原理に立ち入っていないというだけで普通に難しい。書かれたのも91年と、比較的昔なので(古典ばかりを読んでいると91年を昔とするのは躊躇されるが、これは新書なので…)取り上げている現代詩が全然現代じゃない。
 後半では詩人を複数人とりあげて解説を挟んでくれている。

ウォルターペイターからひいた、”すべての芸術は音楽という状態に憧れている”という表現を初めて知った。すごく納得した。
しかし私は、最初から音楽として産み落とされた、単体の音楽よりも後天的に音楽の状態に到達している芸術のほうに魅力を感じる。どうしてだろうか。


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