女性声優よ何処へ往く
アニメーションで少年の役を女性声優が務めているーー。
今では自明となっているその逆転現象は一体どのように起き、定着していったのか。
そんな女性声優の活動の幅を戦後から考察したのが石田美紀著『アニメと声優のメディア史 なぜ女性が少年を演じるのか』だ。
当然、女性声優の活動の幅は単なる少年役に定着するのみならず、90年代以降どんどん広がっていった。
本書では緒方恵美に着目し、セーラームーンシリーズの天王はるか、エヴァンゲリオンの碇シンジの役を通して、女性声優が男っぽい女の子、性的描写のある青年も女性声優が演じられることを証明したことを明らかにしている。
そして緒方本人が声優雑誌等では、天王はるかを彷彿とさせる出で立ちで女性ファンと触れ合った記事を紹介し、女性声優の役とリンクする形で表舞台に出ていく変化をとらえている。
声優って一体どんな存在なんだろうと思っている人はその疑問へのひとつの答えが得られる内容となっている。
ただ声優オタクにどう読まれるのかというと批判的な声も出てくるだろうと思う。
つまりこの本では、東浩紀のデータベース消費を持ち出しているが、本書が研究対象とした声優やキャラクターのチョイスも一種のデータベース消費なのではないかと感じた。
数多ある作品、キャラ、声優を選びとって論を進めているが、総数もしくは割合はどうなのか。その数字の補足があるとより説得力を増し、声優オタクの細かな批判も寄せ付けない研究となるのではないか。
でもその数字はなくとも、なるほどと思わせる説得力のある、そして熱のこもった論だった。