見出し画像

世界一尖ったエコな山小屋になりたい #冷泉小屋再生プロジェクト

冷泉小屋再生プロジェクト広報部です。ぼちぼち春の足音が聞こえてきましたね。乗鞍岳はまだ雪の中ですが、下界にいる冷泉小屋再生プロジェクトは今夏のオープンに向けてぐいぐいと進んでおります。

冷泉小屋とは?
長野県松本市と岐阜県高山市にまたがる乗鞍岳の中腹に位置する山小屋です。小屋のすぐ脇に沸いている年間通して冷たい(5℃)硫黄冷泉があることが名前の由来。2006年から閉鎖中。2021年夏の再オープンを目指しています。

2月13日(土)に開催された第5回オンラインイベントのテーマは「国立公園でオフグリッドは可能か?冷泉小屋のインフラを考えてみる。」で主にエネルギーについて語りました。ご参加いただいた皆様は機材トラブルでお待たせして申し訳ございませんでした。

今回の記事では、イベントのご報告とそこで出たアイデアをご紹介します。

冷泉の恵みをどう活用する?

新しい冷泉小屋では、すぐ脇に湧いている冷泉の水を環境にやさしい形で活用したいと思っています。名前に"冷泉"小屋と付くくらいですから、小屋の由来であり目印であり、乗鞍のランドマークでもある存在です。

一般的に山小屋には水がなく、超貴重なもの。必要な水は麓から上げることが多く、シャワーなんて贅沢中の贅沢です。山好きからは「2000m級の山小屋で豊かにお水が湧いているなんて夢のよう」と言われるくらい、冷泉があることは冷泉小屋にとって大きな強みなのです。

考えられる使用用途としては
  ①生活用水として使う:お手洗いなどの水として使う際には、使った後       
   に浄水して流します。冷泉小屋ではすでにある浄化槽を稼働する
   予定です。
  ②飲み水として使う:インフラのない今は飲料水を麓から持っていくか
   途中の湧き水を汲んでいます。今後冷泉小屋が本格稼働すると大量の
   水が必要ですし、運搬するだけでエネルギーを使ってしまいます。
   現地で湧いている水を飲めるのが理想です。
  ③お風呂=温泉にする前回の記事で書いた通り、お湯を沸かすこと
   自体にエネルギーを大量に消費します。ましてや温泉で長時間
   温度を保つのにもエネルギーが必要です。プロジェクトメンバーも
   ここは悩みどころでした。

①は浄化槽を使用するとして、②の飲用水と③の温泉をどうするか?

理想の循環は冷泉⇒飲み水⇒生活用水⇒きれいな排水

硫黄泉である冷泉の湧き水は、年間通して5℃前後と非常に冷たい水です(夏場でも触ると「ひゃ!!」と言いたくなるくらい冷たい)。地元の言い伝えでは、消毒効果があること、そして冷たいことから、頭痛持ちの女性たちが冷泉で髪を洗うと頭痛が治ると言われていたくらいです。

硫黄の成分が多いということは、温泉の水として健康効果は期待できるものの、そのまま飲むのは難しい。そのため飲み水用に処理できる装置を検討しています。

たとえばこちらのベンチャー企業の水再生処理機では、排水の98%以上を再利用可能にすることができます。

こちらの機械では石鹸を使った手洗いの水が綺麗な水になって循環させることは実験済みですが、このような浄水&循環システムで飲用水が得られて、小屋内で水の循環できると理想的です。実際飲用水を確保することが可能なのか、メンテナンス(フィルター)のコスト、手間などを今後検証していく予定です。

山小屋史上最高の贅沢!?温泉をエコに実現したい

「5℃しかない冷泉を大量のエネルギーを使って温めるやや贅沢な温泉」は憧れではあるものの、正直それだけエネルギーを使うのは後ろめたい…と思っていました。効率の良いエネファームはプロパンガス(LPG)を使うことになるし、エコキュートは設置費が安いが電力を使うし、エネファームやエコキュートだけに頼ってしまったら本当に環境にいいのだろうか?…うーむ…と思ってたところ…

今回のオンラインイベントで挙がったのは「太陽熱温水器」!言ってみれば太陽の熱でお水を温めてお湯にする装置です。

実は1980年代までは太陽熱温水器が多かったのですが、一般家庭が売電ができるようになり太陽光発電機が主流になりました。

太陽熱温水給湯システムは太陽光発電に比べて効率がよく、冷泉小屋は日当たりもいいので太陽エネルギーと相性がいいので、お水を温めるには有望な選択肢です。ある程度の温度まで太陽熱で温水にして、残りを既存エネルギーで補助して温度を上げて保つことができれば、全部プロパンや電力で沸かすよりも環境にいい温泉を実現できます。そして将来的には自然エネルギーのみで温泉が実現できれば、オンサイトのエネルギーで完結ができるので、現在前向きに検討中です(後ろめたさもだいぶ改善!)。

雪室・氷室の専門家いませんか!?

写真にあるように、冷泉小屋近辺は6月ごろまで雪がたっぷり残っている高地です。オンラインイベントでは、冬の間に積雪を貯めて夏場の冷蔵庫代わりにできないのかというアイデアも出ました。

豪雪地帯には歴史的に雪室を作ってきた地域もあり、今でもその技術が活かされているようです。ぜひ雪室・氷室の専門家がいらっしゃいましたら、プロジェクトにご助言ください!

意思をもってチャレンジし続ける小屋になる

前回の記事やオンラインイベントでも取り上げた通り、電気は
 ・一般家庭では10kw/h(1日あたり)。冷泉小屋では10kw/h+αと想定。
 ・山小屋は一般家庭より家電は少ないが、温泉はエネルギーをかなり使う
  ので、上記の太陽光やマイクロ水力でどこまで賄えるかがチャレンジ
 ・マイクロ水力はかなりの落差と水量が必要なので、全部の電力を賄う
  のは難しいので組み合わせの一つとして考える
と考えています。


冷泉小屋のインフラのコンセプトは
 ①まずは安定性重視:プロパンや電力を使ってコージェネレーションに
  すれば安定したエネルギーが得られる。ただしカーボンニュートラルで
  はないし、特にプロパンは冬に道が閉鎖されれば輸送が途切れてしまう
  ので、ここに恒久的に頼ることはしない。
 ②将来的には完全なカーボンニュートラルを目指す:EV(Electric Vehicle)は
  発電所では化石燃料を燃やして充電するので、完全にカーボンニュート
  ラルとは言えません(あの風景のなかに車が常設されているのもふさわ
  しくないかも…という意見も挙がりました)。むしろマイクロ水力、
  太陽光、バイオマスを積極的に使う。それこそが国立公園にある新しい
  山小屋としてふさわしい。
 ③オンサイトでのCo2排出ゼロは要検討:バイオマス(薪などの有機
  資源)は燃やすとCo2が発生してしまいます。小屋現地ではCo2を排出
  しないとするとEVを入れるという選択肢もありますが、そこは②と
  合わせてバランスを取っていく。

ロードマップ図にあるように、最初は安定的なエネルギー確保をしつつ、徐々にあの環境のなかで完結するように目指す、つまり意思をもってトライを繰り返し、より環境にいい自然エネルギーを使うように変えていくことを想定しています。

企業努力によって技術発達が日進月歩な今、一気に完成形にならなくてもいいのだと思っています。

将来的にエコな発電100%を目指し、少しずつトライ&改善をしていくとすると、オープン時に導入する機器に関しても、設置しやすく入れ替えもしやすいもののほうが良いと考えられます。そのため、最初は設置費用が安く温水も得られるエコキュート&太陽光温水器とマイクロ水力&太陽光発電を組み合わせが有望です。

何よりも冷泉小屋は山小屋なので、要らないものをそぎ落としていくのが理想形だと考えています。インフラも町と同じ生活を送るためのものではなく、山にいる時間と空間を満喫するために整備していくものだというのが基本スタンスです。

今後はコストと時間のかかり方を検証しながら、新しい手法がどの程度実現性があるのかを見極めていきたいと思っています。ローンチ時の資金調達にも関わるので、どこまでコンセプトを尖らせることができるかを考えていきます。

今後の課題をシェアします!

次回のオンラインイベントは「冷泉小屋の今の課題」(仮)について話し合いたいと思います。お申し込みはSNSで告知していきますのでぜひそちらもご覧ください。

今後はクラウドファンディングも始める予定です。夏に向けて一歩ずつ大きな山を一歩ずつ登っていきますので、皆様も引き続きお付き合いください。

Facebook:https://www.facebook.com/ReisenHutte/
Instagram:https://www.instagram.com/reisen_hutte/
Twitter: https://twitter.com/norikura_reisen

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?