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不破湊 1stミニアルバム『Persona』全曲レビュー ーー一人の常連に注がれた虚実の愛?

『Persona』は、にじさんじのバーチャルホスト・不破湊が2024年9月4日に発表した1st Miniアルバムである。


1. ディストーションと抱擁

作詞・作曲:Deu 編曲:knoak

不破湊さんたちがカバーしたPEOPLE1『DOGLAND』のカバーから始まったと思われるDeu(どい)さん作詞作曲の曲が開幕1曲目である。
Bメロの「状態異常~~」からのがなりや、「ワナビーワナビーワナビー~~」から始まる追い立てるような口上は、まさにPEOPLE1のDeuさんの真骨頂である。Aメロ、Bメロが難しく聞き取りにくいところもある中で、サビは気持ちよくみんなで歌えるようなシンプルさで、ライブでも盛り上がるだろう。
さらに、この曲でえげつないのは、1曲の中に詰め込まれた怒・喜・寂といった感情をすべて不破さんが歌いきっていることである。3分のトラックに入る情報量ではない。

1曲目から、感情の奔流をたたきつけ、ファンをメロメロにしてしまう名曲。


2. Violet!?

作詞・作曲・編曲:なとり

2億再生近い大ヒット曲「Overdose」をはじめ、ダウナーで低音を活かした楽曲を得意としたなとりさんによる一曲。最初に聞いた時は、不破さんの声が死ぬほどねっっっとりしていてビビり散らかしたのを覚えている。

なとりさん本人のMVへのコメントによれば、この曲は「不破湊」への愛の曲を不破湊に歌わせるのがコンセプトだったという。だとすると、この曲は、ほとんどホストに通いすぎて、いつも貢いでいる女性が「ワンチャン」この人を自分のものにしてやるために10トンの愛を注いでいる様子を描いていることになる(こわっっっっ!!!)

配信者と視聴者という1対1のコミュニケーションを勘違いさせることができる場所のファンの心情を、「実は俺たちもわかってるぜ」と言わんばかりに不破さんに歌わせた、ファンを共犯者へと誘う恐ろしい曲。



3. 一旦ステイ TONIGHT

作詞:七条レタス 作曲・編曲:D.watt (IOSYS)


2曲目でファンをダウナーな世界に落としたかと思えば、今度は頭をふっとばして聞く・・・というか踊るための吹っ飛んだパラパラソングがやってきた。このnoteを書いている時点で、日本のYouTubeで41位を取っているヒット曲である。作詞・作曲は脳みそを吹き飛ばした電波曲の大家・IOSYS。
1~2曲目で深刻な心の内を明かしたかと思えば、今度はミームとかホストとかとりあえず属性を全部詰めた曲を投下してくるのは、気遣いができるホストである(?)
この曲に細かい補足は必要がない気がする。我々はただ、不破湊の手の平の上で踊らされ、シャンパンファイトに突撃するしかない。




4. エンデバー

作詞・作曲・編曲:wotaku


1~3曲目がつかみの曲たちだとしたら、4曲目の『エンデバー』は深夜帯に突入し始め、お酒が入った人たちがこぼした愚痴を拾っていくホストの様子を描いているように思える。しかも、つけ払いを客にさせているような歌詞もあり、いよいよホストが常連客を手に入れるためのモードに入ってきた曲である。上げて下がったところに、優しい言葉をかける恐ろしい手腕である。




5. 黄昏ラビリンス

作詞:常楽寺澪 作曲:ArmySlick, 常楽寺澪 編曲:ArmySlick

『黄昏ラビリンス』はスマートフォン向けゲーム『誰ソ彼ホテル -蕾-』のテーマ曲である。オケはかなり必要最低限までに音数を押さえられており、不破さんの率直な歌唱が楽しんでいる曲である。

しかし、この曲はどっちかというとホストの人と出会ってしまった女の人が、日中にいろいろなホストとの思い出を思い出してしまっているような曲に聞こえるのは気のせいだろうか・・・。そして、そのひとつの場所にとらわれるという意味で、この曲は誰ソ彼ホテルの主題歌にもふさわしいものになっている。



6. 4Count

作詞・作曲・編曲:眞塩楓

これまでの曲の中でも一番落ち着いたアルバムの終わりを少し感じさせる一曲。2番からラップが入ってくる様子やドラムマシーンで刻まれるリズムからも、00年代のR&Bっぽさを強く意識した曲である。

この曲では、ホストとしての仮面を外し毎日出会うようになった二人の言葉が歌われているようにも聞こえる。この4カウントが誘うのは、果たして禁断の恋か、大量のお支払かどっちなんだ・・・。


7. Mr.Sweetest

作詞:TOPHAMHAT-KYO(FAKE TYPE.) 作曲:FAKE TYPE. 編曲:DYES IWASAKI(FAKE TYPE.)

アルバム最後の曲は、聞けば一発でわかるエレクトロスウィングの名手・FAKE TYPEによる一曲。4-6曲目までかなり落ち着いた曲が多くなったからこそ、一周してこの曲では不破さんの狂暴性が導き出されているように聞こえた。FAKE TYPE.の持っている、ほとんど英語の発音のように歯切れのよいラップを歌いながら、不破湊は自分を「狩人」に見立ててあなたを狩りに来る。

優しいことに(?)この曲では、俺についてきた後に行く先は「天国か地獄」であると宣言している。「おれはこのやり方しか知らない――」とすれば、彼がこの後手にするのは本当の愛なのだろうか。
今は、私たちはそのホスト街道の行方を、パラパラを踊りながら見守ることしかできない。


不破湊は、にじさんじ所属のバーチャルホスト。男性4人組アイドルROF-MAOのメンバー。ホラーゲームの配信をしならが、バーチャルホストをしている。

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