感謝(驚)と一生、バンドしてくれる?|diary:2024-05-07
『ガールズバンドクライ』とFishmans
今期アニメの『ガールズバンドクライ』の4話サブタイトルが「感謝(驚)」なのだそうだ。バンド『Fishmans』の曲名である。『ガールズバンドクライ』では各話サブタイにロックバンドの曲名を引用しているそうなのだが、Fishmansはロックではない、レゲエを主体として独自の音楽を切り開いたバンドであるから少し異質というか、単純にストーリーとの親和性以上の意味を感じさせる。単に構成や脚本の人の好みだとしても、それはそれで。
Fishmansは姉が世代であり熱心なファンで、自分もその影響を受け聴き続けているバンドだ。今でもだがヴォーカルの声が全幅には好きになれず、評価の導線にトリビュートライブの山崎まさよし版が必要だったのが思い出に残っている。映画『THE LONG SEASON REVUE』はその昔、姉と観に行った。
しかし『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』の話を。
で、ガールズバンドクライだがまだ観れていない。先月に観た同じくガールズバンドアニメの『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』が強烈で、同ジャンルを続けて観るには食傷気味なのだ。そして『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』は実に素晴らしく、まだ余韻に浸っていたいアニメであるせいもある。共感羞恥と痺れるような高揚を、それまで別々にはあっても同時に畳み掛けるアニメは初めてで、動悸が止まらなくなる視聴体験だった。
偉大な先駆「プリティーリズム・レインボーライブ」に類似点を見いだせつつも、1クールの絶妙な密度感が、新境地を見せてくれた作品だと思う。何人か友人にも布教しているが、熱量伝わってか時期が良かったか皆すぐに観てくれ、評判がよい。
一生、バンドしてくれたなら
『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』のストーリーは、主人公の「一生、バンドしてくれる?」という言葉により歯車が加速する。受け止め方が難しい言葉だ。それくらいの本気度で、だとか”ズッ友”のようなニュアンス程度に受け取るのが普通だろうが、主人公は冗談を言わない子であるからそのまま本当に、額面通りの意味とも取れる。ただそうであったとて、言っている本人もどこまでその意味を理解しているのか、と疑わしく思える言葉だ。
主人公は過去に所属していたバンドが解散しており、また始めればまた解散してしまう、皆が傷つき壊れてしまうことが恐怖であった。
しかし想像すると、「一生、バンドしてくれる?」というのは、単なる解散よりも怖い言葉である。
全員が、一生同じバンドをやる。それはたとえ達成されたとて、それぞれの死によって一人一人居なくなっていく悲しみが必ず訪れる。解散という形での一度での痛みではなく、徐々に、緩やかな時間をかけ孤独になっていく悲しみが。
あるいは自分自身の死が、その達成でもある。自分が一番先に、解散や誰かの脱退の前に命の幕を引くことが、確実な「一生、バンドしてくれる?」の実現であると気付く。
そこにFishmansが重なる。
そしてそんな想起をさせたのが『映画:フィッシュマンズ』で綴られるFishmansというバンドの歩みであった。
何人もメンバーが入れ替わり、減っていく。ヴォーカルの強烈なセンスとクリエィティブへのこだわりはメンバーを一人、一人とふるい落とした。アルバムリリースごとに先鋭化していく曲群、例えば1トラック40分の『LONG SEASON』が顕著だが、離脱したメンバーをして「ここには自分は存在できない」と言わせるものだった。そして売上、評価に思うように結びつかぬギャップ、現実があった。
最終的にドラムとヴォーカル、2人なってしまう。そしてドラムが『2人になってでも継続したい』とその願いを、前に進んで行こうと決意を伝えきれぬまま、ヴォーカルは死去してしまう。
そして現在、Fishmansはヴォーカルの弔いの音楽葬を機に、ドラムを中心に元メンバーやゲストを迎えて断続的にライブ活動を行っている。
本当に哀愁に満ちた歩みだ。故にか2度のドキュメンタリー映画が創られている。ゲストライブ映像を基軸にした『THE LONG SEASON REVUE』、そして上述したメンバーインタビューを中心に歩みを辿る『映画:フィッシュマンズ』だ。
今日まで知らなかったのだが、現在Fishmansは海外で高い評価を受けている。
Wikipediaにあるように、ライヴ盤を中心にレビューサイトにて高い音楽性を見出され、そこから広まっていっているようだ。
「男達の別れ」は3名体制、バンドの体をなした最後のライヴツアーである。
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