俺と村ゲー(部族戦争編その3)
前回の続き!間が空いてしまってすいません!
前回と前々回を読んでね!
部族戦争(9) 「正義の6同盟」崩壊
"アユタヤ"vs「一・三連合」、開戦───
勢力1位vs勢力2、3位の頂上決戦は、唐突に始まった。
この開戦は"アユタヤ"と友好関係にあった我々"FL"としても寝耳に水。
世界情勢はもはや"宇宙連合"どころではない。
俺もまさかこんなに早い段階で、「正義の6同盟」同士の全面戦争が起きるとは思っていなかった。
しかしよくよく考えて見ると、この全面戦争のきっかけを作ったのは"FL"だったかもしれない。
もともと「正義の6同盟」は、「不当な侵略には連携して対抗します!」
というコンセプトの連合だった。集団的自衛権みたいなモンだ。
これは外部の勢力に対する牽制だけでなく、「もし6同盟に裏切り者が出たら5vs1で潰すぞコラ」という、相互監視のような機能も有していた、と考えられる。
ところがここで、新興勢力の"FL"が"宇宙連合"を滅ぼすという事件が起きた。
本来なら他の5部族が連携して「正義」の報復攻撃を"FL"に対して行うべきところだったが、それぞれが自らの立場や利益を優先し、誰も"FL"に対して報復をしようとしない。
「正義」が機能していないことが明らかになってしまったのである。
そして唯一、"FL"に対して報復を検討していた"三番街"に対し、"アユタヤ"が全面戦争を仕掛ければ…
「正義の6同盟」は、完全に崩壊する。
そうなったとき、情勢は完全に"アユタヤ"に有利だ。
なぜなら新興勢力の筆頭、つまり"FL"は、"アユタヤ"だけとしか同盟を組んでいない。他とは交流が無いか、せいぜい不可侵条約までだ。
「大戦争を起こし、FLを巻き込んで味方につける」
これが"アユタヤ"の首脳陣の描いた戦略だったのだろう。
部族戦争(10) "アユタヤ"の本性
さて、ここで"FL"はどう立ち回るべきか。
"アユタヤ"の戦略に乗って味方につくのか。それとも静観か。
この頃は毎日のようにSkypeで幹部会議をしていた気がする。
正直、俺はこの時点では"アユタヤ"が有利だと踏んでいた。
このゲームにおける戦争は仕掛ける側が圧倒的に有利だ。開戦前に攻撃計画を立てたり、兵力を準備しておけるというメリットは大きい。
とはいえ「一・三連合」は合算すれば"アユタヤ"を上回る規模。
戦争が長引けば"アユタヤ"が不利になるかもしれない。
そうなったとき"FL"が"アユタヤ"側で参戦すれば、恩も売れるし漁夫の利も狙える…
というのが、俺の当初の目論見だった。
ところがここで、予想外の事態が起きた。
"アユタヤ"が「軍事チャンネルを共有するよ」と言ってきたのだ。
軍事チャンネルには攻撃計画やら攻撃の成果報告やらが全て載っているのでは?それを俺らに共有しちゃっていいの?情報筒抜けよ?
どれどれ…"アユタヤ"はどんな感じで戦争してるのかな?
…
…
…
なんじゃこりゃ!!
ぜんっぜん、バラバラじゃねえか!!!
攻撃計画もクソもねえ、各自が勝手に攻撃してるだけや!!!
部族戦争は遊びじゃねえんだぞ!?
まったくもって残念なことに…
"アユタヤ"は、烏合の衆だった。
部族戦争(11) 絶対不可侵条約
"アユタヤ"は人数が多いだけで統率が取れていないことが判明したので、俺は戦略の見直しをせざるを得なかった。
とりあえず"アユタヤ"に加勢する計画はナシだ。
とはいえ、"一角獣"も大して強くない。"アユタヤ"の散発的な攻撃にすら対抗できずに村を征服されている。
"三番街"は健闘している様子だが…この戦争、泥沼化しそうだ。
こうなってくると、いまだに大きな戦争を一度もしていない"ZEON"が怖い。
無所属や弱小を食ったり、中堅から有望なプレイヤーを引き抜いたりして順調に成長してきている。兵力を貯め込んでいるかもしれない。
"アユタヤ"に加勢するしないに関わらず、"ZEON"には手を打っておいたほうがいい。
新しい戦略として、俺は"ZEON"との決戦を最終目標に定めた。
そのために必要な条件は2つ。
1つ目は、"ZEON"に単独で勝てる規模になること。
2つ目は、最終決戦まで"ZEON"とケンカしないこと。
2つ目は比較的簡単に話がついた。
幸いなことに"ZEON"の外交担当とは交流があったので、現状の「不可侵条約」を「絶対不可侵条約」というものに変えることにした。
これは「一方的に破棄できない」と同時に、「お互いの戦争に敵側で参戦しない」という相互不干渉のルールを追加したもの。
お互いがお互いを最後の敵と見定めての合意である。
これを結んだうえで、1つ目の条件をクリアするためには今以上に成長する必要がある。
まずは食べかけの"宇宙連合"を食いつくし、崩壊した「正義の6同盟」の中でも一番弱そうな"百鬼夜行"に戦争をふっかける。
実はこれには裏があって、当時"百鬼夜行"に所属する「ガジュマル」というプレイヤーから「うちの部族は農民すぎて駄目だ!FLに移籍したい!」という話があった。
話を聞いて信用できそうと判断したので百鬼夜行との不可侵条約を破棄し、ガジュマルに内部情報をスパイしてもらいつつ戦争に備えていたのだった。
もちろん、開戦直前にガジュマルは"FL"に移籍している。
戦争はね、準備が大切なのよ。
余談だが農耕民族"百鬼夜行"を離れ、戦闘民族"FL"に合流したガジュマルは百鬼夜行を攻めまくり、暴れまくり…
最終的にサーバーで3位のプレイヤーにまでになってしまった。どんだけ兵を貯めてたんだガジュマルくん…
部族戦争(12) "FL"最強!
さて、"アユタヤ"と「一・三」の戦争だが、情勢はどんどん"アユタヤ"が不利になっている。
同格の相手に無計画にケンカを売ったのだから当然ではあるが。
"三番街"は"一角獣"を捨て駒に上手く立ち回り、勢力1位に。
逆に"アユタヤ"と"一角獣"はお互いに潰しあって勢力4位、5位まで転落。
"アユタヤ"内部からも厭戦ムードが漂ってきている。
そして"FL"は"ZEON"を抜き、勢力2位。
じきに"三番街"も抜いて1位になる勢い。他の部族に比べて2倍の速度で成長しているのだ。
さらに"FL"が中堅部族"ラッタバーン"に宣戦布告。
"ラッタバーン"はCAPというプレイヤーの作った部族だ。
彼はもともと"アユタヤ"の外交担当だったのだが、何か内輪でケンカでもしたのか、数人を連れて独立したという経緯がある。
つまりこれは、"FL"は"アユタヤ"系列の部族でも攻撃しますよという表明でもある。まあ、"FL"と"アユタヤ"の同盟はまだ生きてるけど、"ラッタバーン"とは何も結んでないしね。
当然、この戦争は"FL"が圧倒的に有利だ。いまや"FL"は勢力2位。しかも戦争慣れしている。中堅クラスの"ラッタバーン"がかなうはずもない。
FL「何って…重攻撃6連と貴族4連の集中攻撃をしただけだが?」
FL「俺のダミー攻撃がおかしいって…少なすぎるって意味だよな?」
もはや、なろう小説の主人公の気分である(当時なろう小説はまだ存在しないけどね)
うおお"FL"最強!
あとは北西の新興勢力"VIGO"と手を結んで疲弊した"三番街"と"アユタヤ"を潰し、そして最後は"ZEON"との決戦に勝つ!
このゲーム、俺たちの天下だ!!!
…となれば良かったのだが。
ちょうどここで部族戦争の新サーバー開始の告知がされた。
"アユタヤ"や"ZEON"などの有名プレイヤーの中には「新サーバーを始めるから引退します」と表明する人が出てきた。
さらに"三番街"のリーダー、ぐーたら氏が病気のため引退を発表。
トドメに、うちの親分であるキルハートまで「飽きたから後はお前に任せるわ~」と言い出す始末。こいつはいつも飽きっぽいんだ。
引退者だらけのサーバーで天下を取っても、なぁ…
このへんが潮時、か。
なんとなく天下が取れそうなところだったが、俺も部族戦争を引退することにした。
なんとも消化不良な終わり方ですまない。
ちなみに、今回のオチ。
次回、番外編。
次の記事で最後です。
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