俺とFEZ(2)
前回の記事↓
(前回のあらすじ)
・FEZを始めた
・キルハートにボコられた
4.敗北の原因
キルハートとの勝負に負けた原因は、完全に「ゲームに対する理解度」の差だった。
俺が好んで使っていた"ファイアランス"や"アイスジャベリン"などの中級魔法は、発生が遅く当たり判定も小さいため容易に回避されてしまう。
確実に当てられる場面で使うべきスキルであり、牽制目的で先出しするようなものではないのだ。
また、上級魔法である"ヘルファイア"は当てやすく威力も高いのだが、発動前に杖を大きく振りかぶる予備動作があるためバレバレで、タイマンでは回避されやすいという欠点があった。
つまりソーサラーのスキルで唯一先出し可能なスキルは、当てやすく隙の小さい"ライトニング"のみ。だからこそキルハートは"ライトニング"を多用してきたのだ。
俺は自分の浅さを痛感した。
「"ライトニング"の硬直は"ファイアランス"では拾えない」のような基本的なことも、キルハートに教えてもらうまで知らなかった。負けるのは当然である。
手痛い敗北ではあったが、これをきっかけにキルハートや他の有名プレイヤーたちと知り合うことができたのは幸運だった。
その後も模擬戦にはたびたび参加し、有名プレイヤーたちに教わりながら俺の実力は飛躍的に上達していった。
匿名掲示板で実力者として名前が上がることもあったくらいだ。
…この頃は、まだ、それほど有名ではなかったのだ。
5."例の人"誕生
戦闘の訓練とは別に、俺は個人的にマップ研究をしていた。
当時のFEZには10種類以上のマップがあり、それぞれのマップには「ここを重点的に攻めるべき」や「ここに建造物を建てると有利になる」などのセオリーがあった。
そういった戦術論みたいなことが大好きだった俺は、味方とはしばしば口論になった。
「そこを攻めるべきじゃないのはバカでもわかるだろうが!」
「セオリー通りにやれば勝てたのに、テメーらがアホだから負けた!」
「何やってんだ、ボケナス!」
試合中はチャットの口調が荒くなることが多かった。
それに加えて、自分がそれなりに上手くなると、今度は味方のヘタクソなプレイが気になってくる。
「は?なんで今そのスキル使ったんだ?ありえねえ」
「味方の攻撃チャンスを潰してんだよ、ゴミ野郎」
「6000ダメージしか稼いでないカスは黙れよ」
普通に最悪な暴言厨だったので、匿名掲示板に晒された。
それはもう、毎日のように晒された。週7より多かったかもしれない。
晒されすぎて、晒しスレの住人が「またコイツか」と言い始め、いつしか俺が晒されても「あーハイハイ、また例の人ね」で流されるようになってしまった。
「例の人」といえば、「暴言で有名なアイツ」というのが晒しスレで定着しつつあった。
そして俺は、自分のいないところで一方的に自分の話をされるのが嫌いだった。
だから普通に書き込んだ。
「わたし例の人だけど、そのマップのセオリーは~~~~、~~~~」
「本人降臨キターーーーーーー」
「例の人登場ワロスww」
「死ねよ暴言厨」
掲示板ではめちゃめちゃ叩かれたが、自己顕示欲が高くて自信家な俺は、自分の戦術論が否定されているのを見ると言い返さずにはいられない性格だったので、たびたび書き込んだ。
というか毎日晒されるので、毎日書き込んでいた。
そのうち晒しスレの住人も諦め、"暴言軍師「例の人」"というキャラが確立した。
しかしまあ、そう呼ばれるのはちょっと好きだったので、自分のブログのタイトルを「例の人のブログ」にしたりしていた。
まさかこのときは、この「例の人」というハンドルネームをその後15年以上使い続けることになるとは思っていなかったが…
6.E鯖カセドリアへ!
さて、味方をボケ!カス!ゴミ!と罵っていた「例の人」つまり俺だったが、所属しているB鯖ネツァワルは実際のところ強豪国で、国家としての勝率は60%近くあった。
B鯖どころか、全サーバーを通じても一番高い勝率だったのだ。
そこで俺は思った。
「この国は強すぎる。もしかして弱い国のほうが、俺が活躍するチャンスがあるんじゃねえか?」
そう思っていた矢先、別ゲーの知り合い「ブラックパピヨン」が、「E鯖でプレイしてるけど敵も味方も弱すぎワロタwww」というようなことを言っていた。
当時のFEZは人気ゲームで同時接続者は数万人。最初はABCの3つしかなかったサーバーも新たにDとEが追加され、5つのサーバーで運営されていた。
E鯖はその中でも一番新しいサーバーである。きっと初心者が多いのだろう。
ブラックパピヨンとはBネツで一緒にプレイしたこともあったが、普通に下手な部類だった。そんな彼でも無双できるというE鯖…そんなところに俺が行ったら、もしかして最強なんじゃね?
そう思った俺はさっそくE鯖にキャラを作った。
所属国はブラックパピヨンと同じカセドリアを選択。
部隊(ギルドのようなもの)に入れてほしかったからだ。
すると「朝鮮は世界の癌」とかいう目を疑うような名前のプレイヤーがいた。昨今のゲームならヘイトスピーチで一発アウトな名前である。FEZはそのへん緩かった。
そして「朝鮮は世界の癌」が話しかけてきた。
「いま部隊誘うから待ってて」
いやお前、ブラックパピヨンかよ!!
こうして、E鯖カセドリアの部隊<カセに火がついた>所属の、火属性ソーサラー「れいのひと」が誕生した。
Bネツでは暴言を吐いたり晒されたり悪名が響いてしまったから、Eカセでは大人しくプレイするぞ!
次回に続く!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?