デジタル時代のインサイドセールスの役割と最適な組織配置とは?

こんにちは、水嶋玲以仁(みずしま れいに)です。

私のnoteでは、「営業のデジタル化」の必要性を感じながらもその進め方に悩んでいる営業マネジャーや経営者、営業担当の方々に役立つノウハウを発信しています。

本日は、営業のデジタル化を進める時に避けては通れない営業プロセス上の役割分担や組織配置のポイントを、インサイドセールスを中心に解説していきます。とくに営業組織の改編やインサイドセールスの立ち上げを検討している方にお読みいただけると幸いです。

インサイドセールス導入と既存職務の役割更新はセットで進める

以前のnoteでもご説明したように、営業のデジタル化を進めるうえでは社内分業と営業プロセスの標準化が欠かせません。

従来は営業マンが個人単位で進めることが多かった営業活動ですが、営業デジタルシフトではマーケティング部門との協業やインサイドセールスという新たな役割分担を通して、営業の質の向上や効率化を目指します。

なかでもインサイドセールスは、SaaS系のサービスを提供する会社では急速に普及していますが、従来から営業組織を持っている日本の企業にとってはまだまだ馴染みの薄い機能であり、組織を新設する必要がある場合も多いといえます。

営業デジタルシフトに向けた取組みを具体的に進めていく時に、インサイドセールスとはどんな役割を担う職務で、その組織はどのように配置すればよいかは最大の関心事になるでしょう。この内容は本記事で解説していきます。

ただし、インサイドセールスを導入するにあたっては、既存の職務の役割定義も同時に見直す必要があります。この点はインサイドセールスの陰に隠れて見落としやすいのですが、営業プロセスの分業をうまく機能させるために非常に重要です。

本記事では営業デジタルシフトを進めるカギとなるインサイドセールスと、その導入によって更新される既存職務の役割定義をそれぞれ解説します。個々の内容だけでなく、ぜひ職務同士の連携や分担の全体像を意識してお読みください。

インサイドセールスの果たす役割

 まずはインサイドセールスに求められる役割定義を、代表的な役割、責任の範囲、職務、求められる能力という4つの観点から解説していきます。

インサイドセールスは内勤営業とも呼ばれ、メールやビデオ会議、電話などを用いて営業活動を行う手法や、それを担当する職種を指します。チーム、マネジャー、メンバーに分けて役割定義を見ていきましょう。

なお、後述する組織配置のパターンごとにインサイドセールスの役割にも若干の違いはありますが、共通する要点をご説明していきます。

※既にインサイドセールスを導入されていてその役割をよく知っている方には釈迦に説法になりますので、「インサイドセールス組織はどこに配置すべきか?」まで飛ばしていただいても構いません。

代表的な役割

 インサイドセールスのチームとしての役割
インサイドセールスは営業プロセス上でマーケティングとフィールドセールスの中間に位置します。そのため、プロセスの分業がうまく回るように両者の橋渡し役を担うことが、インサイドセールスチームの役割となります。

マネジャーの役割
具体的にはマネジャーは、フィールドセールスやマーケティングと共同で営業戦略を立案して、その実行や目標達成に向けてメンバーに適切なマネジメントやアドバイスを実施することが最も重要な役割となります。

同時に、営業プロセスを分業するにあたって、機能間での円滑な連携を先導する役割も担います。これら 社内向けの役割に加えて、キーパーソンとの関係維持・深化・拡大に向けて顧客対応の役割も担います。

メンバーの役割
一方のメンバーは実働部隊として、フィールドセールスやマーケティングと共同で営業戦略の策定・実行・達成することが主な役割となります。

責任の範囲

一般的なインサイドセールスの責任範囲
インサイドセールスの責任範囲として最も重要なのは、インサイドセールスの活動に合わせたKPIなどの指標と売上目標を達成することです。インサイドセールス自身が商談のクロージングに携わらなくても、フィールドセールスと共同で売上に責任を負うというのが大きなポイントです。

マネジャーの責任範囲
マネジャー自身もKPIなどの指標や売上目標の達成の責任を負うだけでなく、マーケティングとフィールドセールスの中間に位置することから、目標達成に必要となる営業プロセス上の他の機能との円滑な連携構築も責任範囲に含まれます。加えて、当然ながらメンバーのマネジメント全般もマネジャーが責任を負います。

メンバーの責任範囲
メンバーは、営業戦略で決められたリードやパイプラインの件数・金額などのKPI達成や、最終的な売上や収益の目標から逆算した種々のKPI(新規コンタクト件数など)の達成に責任を負います。加えて、実態としてはインサイドセールスが売上目標を持たない組織は多いですが、フィールドセールスと同様に売上目標を持つとよりよいでしょう。

職務

マネジャーの職務
マネジャーの社内向けの職務としては、フィールドセールスやマーケティングなどのマネジャー層との組織間連携や、経営層など上位マネジメントに対するレポーティングが挙げられます。レポーティングは、インサイドセールスの意義や成果を組織全体に周知する効果も期待できるので、積極的に取り組むとよいでしょう。

マネジャーの顧客対応の職務としては、キーパーソンとの関係維持・深化・拡大のための施策立案と実行管理、KPI管理とチームパフォーマンスの最大化、チームメンバーの育成・モチベーション管理、チーム内のナレッジ共有の環境づくりなどがあります。

メンバーの職務
メンバーの職務は多岐に渡りますが、新規コンタクトの発掘や、既存コンタクトとの関係深耕・拡大のための施策を立案して実行することだとまとめられます。

求められる能力

マネジャーに求められる能力
ここまでの説明で分かるように、インサイドセールスのマネジャーには他の部門や顧客との折衝調整能力が強く求められます。加えて、メンバーの戦略策定に適切に助言する能力や、メンバーの育成やマネジメントをKPIなどの数値に基づいて行う能力も求められるでしょう。

メンバーに求められる能力
メンバーには、電話、オンライン会議、メール等を用いたデジタル・コミュニケーションのスキルが求められるほか、一般的に営業に求められるような能力(顧客の置かれた環境を理解する能力、ヒアリングやプレゼンテーションなどのコミュニケーション能力、自社の商材に関する知識・理解、上位マネジメントへの提案・円滑なコミュニケーション能力など)が必要とされます。

インサイドセールス組織はどこに配置すべきか?

ここまでインサイドセールスに期待される役割をご説明してきました。役割のイメージがつかめたでしょうか。

続いて、インサイドセールスの組織配置を考えるヒントになる、代表的な組織配置パターンを見ていきましょう。

今回解説する配置パターンは全部で4つ 。自社の状況に合わせて適切なパターンを検討できるよう、それぞれのメリット・デメリットを箇条書きで整理していきます。

1. インサイドセールスが独立するパターン

従来の営業組織とは別にインサイドセールス組織を設置し、フィールドセールスとインサイドセールスそれぞれにマネジャーを配置するパターンです。

メリット
・ マネジャーがインサイドセールスのマネジメントに専従できるため、オペレーション、指導、評価などに集中して取り組める
・組織が機能別に配置されるため、インサイドセールスに課された目標に焦点を絞って活動できる
デメリット
・インサイドセールス組織が従来の営業組織と分かれるため、フィールドセールスにインサイドセールス活動の意義を理解してもらうハードルが高い
・営業プロセスが複数の組織間ではっきり分かれるため、インサイドセールスから受け渡すパイプラインの品質やフィールドセールスのクロージングの対応など互いに不満を持ちやすい
・組織立ち上げ時点でインサイドセールスの役割を厳格に決める必要があり、活動しながら役割を柔軟に見直すことが難しい

まとめると、インサイドセールスの活動品質を向上させるためには最適ですが、他の2つのパターンのどちらかで経験や実績を重ねてから採用したほうがよい、上級者向けのパターンだといえます。

2. 営業組織内に専任担当者が在籍するパターン

営業組織内にインサイドセールスを組み込み、インサイドセールスとフィールドセールスの専任担当をそれぞれ配置するのが2つめのパターンです。

メリット
・インサイドセールスとフィールドセールスが同じ組織で活動するため、チームとしての一体感が醸成されやすく、活動意義を理解してもらいやすい
・営業プロセス上での役割分担について柔軟に議論して見直しやすい
デメリット
・1人のマネジャーがインサイドセールスとフィールドセールスの両方を担当するため、異なる目標に向かって活動するメンバーを同時にマネジメントしなくてはならない
・ケアが行き届かず、インサイドセールス活動の品質が向上するまで時間がかかりやすい

まとめると、インサイドセールスの活動を進めながらフィールドセールスとの役割分担を改善しやすい一方で、マネジメントに難しい舵取りが要求されるパターンとなっています。

3. マーケティング組織内に専任担当者が在籍するパターン

マーケティング組織内にインサイドセールスを組み込み、インサイドセールスとマーケティングの専任担当者をそれぞれ配置するのが3つめのパターンです。

メリット
・インサイドセールスとマーケターが同じ組織で活動するため、リードナーチャリングのプロセス(リード獲得→パイプライン化→フィールドセールスへ受け渡し)を1人のマネジャーが管理でき、パイプラインの品質が安定しやすい
デメリット
・インサイドセールス組織が従来の営業組織と分かれるため、フィールドセールスにインサイドセールス活動の意義を理解してもらうハードルが高い(パターン1と共通)
・異なる領域で活動するメンバーを1人のマネジャーがマネジメントしなくてはならないため、インサイドセールス活動の向上に時間がかかりやすい(パターン2と共通)

まとめると、リードナーチャリングのプロセスを一貫して管理・評価する体制を構築できるのが大きな利点ですが、フィールドセールスに活動を理解してもらうことと、マネジメントの難易度が高いパターンだといえます。

4. 営業組織にフィールドセールスとインサイドセールスの兼任を配置するパターン

これまでの3パターンよりも事例は少ないですが、フィールドセールスがインサイドセールスを兼任するというのが4つめのパターンです。

メリット
・大きな組織変更や役割変更をしなくても フィールドセールスの活動内訳を変更してインサイドセールスを導入できるため、取り組むハードルが低い
デメリット
・個人の裁量でフィールドセールスとインサイドセールスの活動時間を決めることになるため、不慣れなインサイドセールスの活動が減少しがち
・専任ではないため、インサイドセールスに求められるスキルセットを向上させにくい

このパターンは導入のしやすさが大きな利点ですが、インサイドセールスを定着させるためにはある程度このパターンで経験を積んだうえで1~3のパターンに移行することを視野に入れるとよいでしょう。


インサイドセールス導入後のフィールドセールス・マーケティングの役割
冒頭で述べたように、営業デジタルシフトでは、営業プロセス上でインサイドセールスの下流・上流を担当することになるフィールドセールスとマーケティングの役割も一部を更新する必要があります。どのような変化が求められるのか、重要な変更点に絞って解説していきます。

フィールドセールスの役割更新

フィールドセールスの大きな変化としては、これまでは単独で営業活動を行って売上目標などを負っていたのが、インサイドセールスやマーケティングと共同で営業活動を行う際の司令塔的な役割を新たに求められることが挙げられます。それに伴って、営業戦略の策定や目標設定も他部門と共同で検討することになります。

この変化はマネジャーだけでなく、メンバーにも求められます。日々の営業活動を行う際にマーケティングやインサイドセールスの活動も視野に入れて、必要な情報の入手や顧客とのコミュニケーションに向けて連携して取り組む必要があります。

こうした変化は、初めのうちは単に手間が増えただけだと受け取られるかもしれませんが、長期的にはフィールドセールスの負担を軽減して、営業活動の質を向上させることにも繋がります。何を目的に役割更新を行うのか営業プロセスに携わる部門のマネジャー間で十分な議論を行い、理解を深めていくことが欠かせません。

マーケティングの役割更新


マーケティングの大きな変化としては、営業戦略に沿ったマーケティングの活動の展開が求められ、MAL数などの活動目標が営業戦略と連動して設定されるようになることが挙げられます。同時に、自分たちの活動が営業活動に直結するという意識の変化も重要な変更ポイントとだといえるでしょう。


適切な人員配置の落とし穴

本記事の最後では、インサイドセールス組織に配置する人材を検討するときに失敗しがちな事例をお伝えしたいと思います。それは、インサイドセールス組織に 外部のインサイドセールス経験者ばかりを集めてしまうことです。

経験者を集めるのはいいことなのではとお考えの方もいるかもしれませんが、インサイドセールスチームの中に自社の商材や社内の仕組みに精通したメンバーがいない点が大きな問題になるのです。人員配置の際には能力面だけでなく、 自社内での経歴も検討項目に入れるとよいでしょう。

また、新設されるインサイドセールスの組織にフィールドセールスやマーケティングなど他の部署から信頼されている人員を置くと、活動への理解や部門間連携にプラスに働くことが期待できます。人員配置を検討する時には、こちらもぜひ意識してみてください。

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