「自分自身への偏見を、持ちたくないと思った。」海外で夫夫となり、新しい家族を築く4人が伝えたいこと。 - Seigo & Bren x Nozomi & Micky インタビュー(後編)
こんにちは、Re.ingのYang(ヨウ)です。東京レインボープライド、本当に沢山の人が参加し、かなりの盛り上がりでしたね。参加された方も、多かったのではないでしょうか。
今日は昨日に続き、アメリカで結婚したご夫夫のSeigoさんとBrenさん、そしてイギリスで結婚したNozomiさんとMickyさん、4名のインタビューの後編をお届けします。前編は、こちら。
カミングアウトにSNSを使うことで
少しだけ楽に考えられた
ー 周囲に結婚の報告をした時は、どんな反応でしたか?
Nozomi「僕は当初、あまり周りに言ってませんでした。本当に近い友人には伝えましたが、おめでとうと言ってくれましたね。結婚式後、写真をFacebookにアップしたことで、皆に知られたという形です。一人ひとりにちゃんとカミングアウトするのは結構な体力が必要なので、何となく察してもらえた方が、僕にとっては楽でした。」
Seigo「私たちも、SNSを通じて報告しました。結婚した後、インスタグラムにアップしたんです。友人や知人は皆フォローしてくれているので、個別に説明する必要がなかったのは楽でしたね。ただ、当時は初めてのカミングアウトだったのでどういう反応が来るんだろうと、とても怖くて。朝起きるまで開くことができなかったのですが、Brenが『沢山おめでとうのメッセージがきているよ』と教えてくれて。コメントは全てポジティブで、とても嬉しかったですね。Brenもほぼ同じタイミングでSNSにアップしました。」
Micky「僕の場合、結婚すると周りに言ったら、友人たちがすごく喜んでくれました。『初めての、ゲイカップルの結婚式だ!』と、はしゃいでくれて。友人たちにとって、なぜか同性カップルの結婚式は異性カップルよりも楽しいイメージだったみたいで。特に何も言われることなく、ただ『楽しいパーティだ!』という感じでした。」
Nozomi「イギリスの伝統的な結婚式では、みんなの前でふたりがダンスを披露するのですが、僕は恥ずかしすぎて絶対にやりたくなくて(笑)。でも、結婚式はすごく楽しかったです。天気もよかったので最高でした。」
いつか一緒に
日本の街を手を繋いで歩きたい
ー 結婚式をやるかどうか、迷っている人が多いと思います。まだ日本では、式場を探すのに躊躇してしまう人も沢山いるんじゃないかなって。
Nozomi「イギリスでは、同性だからという理由で断ると、完全に差別という認識になるので、式場を探すのには全然苦労しませんでした。」
Bren「アメリカでも同性を理由に断ると、悪い意味で話題になってしまいます。逆にイメージダウンつながるので、あまりそういった心配はないかもしれません。」
ー 欧米では、「LGBTQを差別しない」という認識が浸透しているように思えますね。イギリス、アメリカ、日本での違いに関して、何か感じることはありますか?
Seigo「日本で僕たちは、まだ手を繋いで歩けていないんです。アメリカに行く前は、そんなこと考えもしなかったけれど、今は渋谷か新宿だったら『できるかもしれない』と思えます。いつか、何も気にせずに日本で手を繋いで歩けるようになったらな。日本はアメリカと違って、直接攻撃してくる人はいないです。電車に乗っていてBrenと距離が近かったりすると、コソコソ陰で言われたり、という感じですね。アメリカでは、普通に手を繋いで歩いていますが、場所によります。」
Nozomi「ロンドンは全く気にしなくていい空気なのですが、やはり心のどこかで自分自身が気にしてしまう部分があります。」
Bren「そう、一緒にいる時に“気にしたくない”んだよね。結婚が認められている場所にいても、踏み出せるかどうかはやはり自分次第ですね。」
ー 今はまだ難しいかもしれないけれど、手を繋いで堂々と歩いてほしいな、と思いますね。皆の幸せな姿を見たら、考えが変わる人もいるのかなって。
Nozomi「Mickyは、どこでも手をつなげるタイプです!」
Micky「どこでも、ではない(笑)。ロンドンの中心部なら、大丈夫ではないかと思えるので、気にせずに繋げます。田舎だったら、事情は変わるかもしれない。」
Bren「例えば、ニューヨークでは、周りが守ってくれる安心感があります。東京では周りが無関心な空気なので、何があっても干渉してこないし、助けてもくれないという感じですね。」
Seigo「それはあるよね。例えば、今日電車の中で妊婦さんが立っていたんですけど誰も声をかけなくて。これがアメリカだったら、座っている人が気づかなくても周りが必ず声をかけてくれるから。」
Nozomi「ロンドンも、そうですね。日本では、気づいたとしても見て見ぬ振りの人が多いなと感じます。そういった空気が、あるのかもしれません。」
ー それは日本というより、東京の空気なのかもしれないですね。田舎の方が周囲への関心度やいい意味でのお節介度は高いけれど、まだ理解が追いついていない。だから、理解と行動が伴うことが重要なのかもしれないですね。皆さん、いつか日本に住みたいと思いますか?
Micky「日本は、とてもいい場所です。交通も便利でご飯も美味しい。ずっと日本に住むかどうかは分かりませんが、一度は住んでみたいと思っています。」
Bren「日本が本当に大好きで、本当はずっと住みたいと思っていたので必ず戻ってきたいです。同性婚が認められたら、いつでも帰ってこれるようにSeigoが貯金を頑張ってくれています。」
Seigo「本当にね。結婚できたら早く、帰ってきたいよね。」
海外では「結婚しているふたり」なのに
日本ではまだ「関係のない他人」のまま
ー 皆さんは海外では「結婚」されていますが、日本に戻ってきたらどういう形になるのでしょうか。
Seigo「日本入国の税関の申請カードを書く際、家族だったら1枚だけで済むのに、僕たちは2枚書かなきゃいけないと言われた時は、とても悲しかったです。日本に戻ったら、他人になってしまうんだなって。」
Nozomi「イギリスに入国する時、僕たちは結婚しているので、イギリス国籍のレーンで一緒に入国できます。日本だと、僕たちは家族ではないので、外国人の窓口と日本国籍の窓口を通って、バラバラに入らなければいけません。イギリスで生活するにあたっては、家族として扱われるので不便なことや、悲しい気持ちになるようなことはないですね。」
ー 皆さん若くして結婚されていますが、どのような経緯で結婚を選んだのでしょう。
Seigo「私たちは、とても自然な感じで『結婚するよね?』という流れになりました。付き合う時も、結婚する時もそうでしたね。だけど、ずっと日本に住みたいとふたりとも思っていたので、渡米する時までは色々な話し合いをしました。」
Bren「アメリカに一緒に行ってくれるなんて思っていなかったから、嬉しかったですね。僕はずっと日本に住みたかったけれど、やっぱり結婚したかったので。」
Nozomi「僕たちは、出逢って2ヶ月して遠距離恋愛を始めたんです。その半年後に、スカイツリーの一番上でプロポーズされました。ひざまづいて『Would you marry me?』と聞いてくれて。映画のようで、ロマンチックだなと思いましたね。その後エレベーターに乗ったら、知らない男性が『おめでとう』と言ってくれて、とても嬉しかったです。」
ー Mickyさんは、なぜNozomiさんと結婚したいと思ったのでしょう?
Micky「一緒にいて、ただ楽しかったんです。そして遠距離は、やはり辛いなって。直感的に、NozomiはOKしてくれると思いました。婚約という事実があるだけで、遠距離だとしても、頑張れるなと思いました。実際には、遠距離恋愛でも続いたことも大きかったかもしれません。ふたりだったら、乗り越えていけると。」
ー お互いの家族も受け入れてくれて、今の関係性はとても良好なのですよね。
Nozomi「今は、そうですね。僕は最初、怖くて母にしか伝えていませんでした。Mickyが初めて日本にくることになった1週間前に、もうカミングアウトしなきゃと焦ったんです。母に言ったら『知ってたよ』と言われましたが、それでも、直面するとやはり少し戸惑っていたようで。でも、僕はどうしても理解してほしいと思い、自分でLGBTQに関する本を買って、母に読んでもらいました。その後、母から父と兄に話してくれて、去年は父と母が二人でレインボープライドにも行ってくれるようになったんです。今は、SeigoとBrenのことも息子のように可愛がっています。時間はかかりましたが、今は皆が受け入れてくれるようになり、とても幸せです。」
Bren「僕も、最初は受け入れてはもらえませんでした。『異性が好きな人に、変わってほしい』という手紙をもらったり。祖母と母は、戸惑っていてどうしたらいいかという感じだったと思うのですが、少しずつSeigoとの関係性を見て、理解を示してくれるようになりました。」
ー 今では、BrenママはYouTubeのファンの方達の間でも人気ですよね!LGBTQの支援団体で活動されていたり。
Seigo「そうなんです。Brenのママ、本当に大好き。実は、私は家族と2年間連絡を取れていないんです。ただ家族の形は、一つじゃないと思っています。結婚して、Brenがいて、Brenの家族もいて、そこからどんどん新しい家族が増えているという気持ちになれたんです。結婚したことで、たとえカミングアウトして関係が難しくなってたとしても、家族は血縁関係だけで成り立つものではないと思えました。NozomiとMickyも、友たちですが家族のようなものですし。YouTubeのチャンネル登録者の方も、本当に家族みたいな関係性だと感じています。」
自分のことを
まずは自分が受け入れることが大切
ー 結婚について迷っている人や、これからカミングアウトを考えている人に、何か伝えたいことありますか?
Seigo「今の日本では難しいかもしれませんが、自分のことを恥ずかしいと思ってほしくないです。私は昔、男性が好きということを恥ずかしいことなんだと思っていました。なので、そんなに簡単なことではないということは分かります。でも今は、世界中でセクシュアリティについてオープンに発信している人が増えましたよね。少しずつ有名な方もカミングアウトしたり、明るい口調で言及するようになっています。カミングアウトは決して『すべき』ということではありませんが、私の場合は生きやすくなりました。タイミングを見て、考えられたらいいなと思います。誰かの姿を、力に変えられることも多いのではと思っているので、これからもそういった気持ちで発信を続けていきたいですね。」
Bren「自分の人生なので、人の目や言うことを気にしていたら、いつの間にか歳を取ってしまって、後悔するかもしれないなって。まずは、周囲の人というよりも自分の中で、決断しなければいけないと思うんです。僕も時間はかかりましたが、何を言われても気にしないと思えることが大事かなと。例えば家族などに批判された時、距離を置くのは辛いと思いますが、やはり自分を尊重してくれて、大切に想ってくれる人や、パートナーとの生活が一番大事だと、今は思います。」
Nozomi「カミングアウトに関して言えば、簡単なことじゃないと思います。僕自身、家族に言えない時期が長かったですから。でも、しなければいけないわけではありません。『カミングアウトをしなきゃ』と、そのことばかり考えるとネガティブな感情しか湧かないですし、ネガティブな結果しか考えられないので、自分のタイミングを探していけばいいと思うんです。無理やりする必要は、絶対にない。でもカミングアウトしたら、少しだけ肩の荷が降りると思います。なので、ゆっくり、一人ずつ、仲間や味方を増やしていけたらいいですよね。本当の自分を出せると、気持ち的にとても楽になると思います。」
Micky「あまり、考えすぎないでほしいです。僕の場合、仲の良い大好きなおじいちゃんにさえ、22歳まで言えませんでした。カミングアウトは、心の準備できてからでいいので、24歳でも25歳でも、40歳でもいいんじゃないかな。僕の場合は、幸運にも家族と友人は温かく受け入れてくれました。だけど、その勇気が出るまでに、長い年月がかかりました。一番最初にやるべきことは、自分が自分を受け入れること。自分が自分に、偏見を持ちたくないなと思います。」
Nozomi「僕のおばあちゃんは、岩手の田舎に住んでいて、2年前に亡くなったんです。『田舎だし、昔の人だし、多分受け入れてくれないだろうな』と思ったので、ずっと言えなかったんです。ですが、亡くなってから聞かされたのは、おばあちゃんは、気づいていたということ。Mickyとの関係性を見て、知っていたと。言えば、もしかしたら祝福してくれたのかもしれないし、おばあちゃんは僕が言うのを待っていたのかもしれない。それが、大きな後悔でした。自分が、『理解してくれない』と決めつけていなければ、もっとおばあちゃんと話せたかもしれません。なので、実はこれから勇気出して、施設にいるおじいちゃんに、ちゃんと話そうと思っています。」
ー セクシュアリティに関わらず、“自分らしくいること”ってまずは“自分を受け入れてあげること”から始まるのかもしれませんね。最後に、今、皆さんは幸せですか?
ALL「幸せです!」
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カミングアウトについては、する側だけの努力ではなく、周囲が「大丈夫だよ」という気持ちを示すことも大事なのだと思ってます。いつかは何も言わずに、皆が好きな人について、結婚する相手について、自由に気にせずに話せるようになったら、もっと幸せな気持ちを共有できる人が増えるのかもしれません。ですが、まだ“同性が好き”という事実を「言えない」と感じてしまう空気が残っている以上、少しずつお互いに歩み寄ることが大事なのではと思います。
パートナーシップとは、結婚とは、愛とは、誰のためのものなのか。幸せいっぱいの4人が、いつか「結婚しているふたり」だと認められ、日本に住める日が来るように。堂々と手を繋いで、街を歩けるように。Re.ingではこれからも一緒に考え、行動していきたいなと思っています。
Interview & Edit: Asuka
Photo: Moya
Writing: Yang
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