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東京レインボープライドの空気が導く「令和」にあるべき未来の形
こんにちは。Re.ingのAsukaです。昨年2018年4月にこのプロジェクトが始まり、約1年が経ちました。平成が終わり「令和」という希望の時代が来たこの年に、実はいま、Re.ingは新しい未来に向かって形を変えようとしています。(詳細は追ってお知らせ予定です!)今年の2月から、その新しい動きを担っていく一員として、Yang(ヨウ)が仲間にジョインしてくれました。
彼女は、自分自身への探究心が強い人。中国の蘇州生まれで、大学進学と同時に日本に移住してきました。日英中を話せるトライリンガルで、読書やアート好き。とても知的なのですが、内面はとても熱く、ロマンチスト。「本当に人を愛するって、なんだろう...」とか「自分ってどんな人間なんだろう」と日頃から考えています。
そんな彼女が、先日行われたTOKYOレインボープライドに参加。レインボープライドの空気に、何を感じ、何を想ったのか。その気持ちを書いてくれました。
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「そんな風に生きていくなら、タフになれ。」
NETFLIXのオリジナルドラマ『セックス・エデュケーション』の中で、こんなシーンがありました。
黒人の男の子のエリックが、“女性のような”格好をして外を歩いていたら、男性たちに絡まれ、顔に怪我をさせられてしまいます。涙を拭う余裕もないまま家に帰ると、日頃から「いい加減大人になれ」「普通になってほしい」と口うるさく言う父親が、初めて真剣に息子に向き合おうとして、力いっぱいの想いを込め、言葉を絞り出すーー
「そんな風に生きていくなら、タフになれ」
と。
エリックは、その日が誕生日。好きな格好をしてワクワクしながら出かけようとした時、父親から「コート着て。その格好じゃ、危ないよ。」と言われていました。私は、このシーンを初めてみた時「え?危ない?なぜ危ないの?」と理解できませんでした。
しかし男性が、「“女性のような”格好をする」というだけで、一方的に怪我をさせられてしまう。ああ、「差別」というのはこういうことだったのか。周囲の奇特な眼差し、言葉の暴力、無視や嫌がらせ、そして最悪なパターンーー身体への攻撃。
さらに、このようなあからさまな差別だけではなく、家族や友人に向き合う時の巨大なプレッシャーも、日々付き纏う。親は、失望するだろうか。心配するだろうか。受け入れてくれるだろうか。友人とは疎遠になるだろうか。
そのような言葉にできないプレッシャーに、悩み、闘い、時には自分自身の本音に蓋をしたり、やり場のない気持ちを抱えながら生きている「マイノリティー」と称される人たち。ただ、好きな服を着たいだけなのに。ただ好、きな人に好きを伝えたいだけなのに。「タフ」にならなければ、好きなものに「好き」と言えない、どうにもならない現状。
アピールしないと
「受け入れてもらえない」社会
私自身、実は今年まで東京レインボープライドについて、ちゃんと知りませんでした。
「何が本当の愛なのか」を常に頭を悩ませている自分なのですが、それを深く考えていくと、どうしても本質的には不必要なものーー年齢・性別・国籍など、自分では簡単に変えられない「初期設定」的なものを、まずは取り除く傾向があります。
「まず“一人の人間”として、愛してほしい。」
という声が、自然に脳内に響いてしまいます。
中学生の頃、欧米のメタル音楽が大好きな先輩(ボーイッシュな見た目の女性)が、同じクラスの可愛い女の子への思いに悩んでいることを、授業をサボってどこかのベンチで、何となく話してくれました。私もその話を何となく聞きながら、一緒に秋の空を眺めていました。
私の周囲には、同性と恋人関係にあった人たちは“普通に”いましたし、“普通に”それについて話してもいました。あからさまに差別が行われているような経験は、ありませんでした。
正直な話、このようなことを純粋に考えた時に、そこに差別や排除などがあるのは、あまりにも理解不可能で、ひいては「パレードや催しなどをやってアピールしないと、受け入れてもらえない社会」が存在していることについて、最も驚きを覚えたのは正直な気持ちでした。
アンチテーゼとして、最も良い形の答え
世の中は、自分が思っている以上にイデオロギーや、形の整った幸福論にガチガチに固定されている気がしました。鉄の檻みたいに。揺らせば、カシャンカシャンと音がして、閉じ込められていることを実感してしまうくらい。
戦後の新しい社会を築いた「昭和」、そしてその価値観を引き継いだ「平成」という時代までは、その檻が必要大多数の人間を守ってきて、彼らが思う幸せを実現してきました。今となっては、その世代の人が親となり、法における決定権を握っていたりします。
それは勿論、ジェンダーやセクシュアリティの話だけではありません。独り身は不幸せだとか、女性は若ければ若いほどいいとか、男性はお金を稼いで家を養うべきだとか。
性別やセクシュアリティなど、様々な固定観念へのアンチテーゼとして、東京レインボープライドのような形は、きっと、最も良い答えを出したのではないか、と感じました。差別の根源は「無知」と「恐怖」であることに対し、「知ってもらう」・「触れてもらう」・「楽しんでもらう」という手段で、自ら分断を超えて、コミュニケーションを創出しようとした形。
25年前、日本初のパレード開催を雑誌『アドン』で知った時、上京した大学生だった自分は「そんなのありえない…」と思ったのを覚えています。でも恐る恐る沿道から見物したら、みんな楽しそうで。翌年からは仲間と女装してフロート参加し始めました笑。人も社会も「知れば」変わる。ハッピープライド🌈 pic.twitter.com/KSMgMdB5q0
— ブルボンヌ (@bourbonne_campy) April 28, 2019
日本にこんな幸せな空間があったのかとビックリする場所があります。だから、毎年参加者が激増している。それは、東京レインボープライドです。今日も会場は盛り上がっています!
— BuzzFeed Japan News (@BFJNews) April 29, 2019
🌈1年に1度、見知らぬ人同士が東京でハイタッチする幸せな日 #TRP2019 https://t.co/gy9v8mrxrk pic.twitter.com/Qwz3ukwYa0
誰かを傷つける革命ではなく、幸せと楽しさを伝播するムーブメント。
そのムーブメントと空気に心動かされ、道端にいた通行人たちも明るい笑顔で手を振りました。社会的影響力を持つ人たちも駆けつけ、一緒に歩き、メッセージを伝えてくれました。様々な企業やスポンサーも、まずはできることから動き出し始めた。心細い思いをずっとしてきた人たちも、安心してそこにいることができ、「ひとりじゃない」と思える空間になっているのでは、と思いました。
固定概念を一つ一つ解き放っていく
先日、アメリカとイギリスで結婚したご夫夫、SeigoとBren、およびNozomiとMickyの四人をインタビューした時、最も印象に残ったのはSeigoさんの言葉。
「LGTBQの当事者ではない人たちからの応援は、とても安心するし、嬉しい。」
本当に社会の雰囲気を変えられるのは、当事者たちではなく、傍にいる私たちが「関心を向けること」だと思います。その関心はきっと、当事者の「安心」につながっていきます。東京レインボープライドで体感した幸せと感動は、いつかこのような社会が実現できるのかもしれないという「希望」は、そのまま流されることなく、それが社会のスタンダードになるまで、見つめ続けなければならないと感じました。
性別やセクシュアリティを含めた、やがて前世代の遺物になっていく固定観念を、このように一つ一つ、解放させることで、私たちよりも下の世代が、同じ苦悩に苛まれることなく、フルセットの選択肢から、平等に自由に「好き」を選ぶことができる時代に。
私たちの子ども世代が、「いや〜平成の時は同性が結婚できなかったんだよ〜ありえなくね?」と驚くくらい、前の時代のことを軽い気持ちで話せるような日が来るまで。
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Writer
Yang
中国蘇州生まれ。高校卒業後、父の影響で渡日。日本大学芸術学部に入学し、現代アートを中心とした写真表現を研究。2014年に広告代理店に就職。ストラテジック・プランナーとして、ブランディングおよび広告プロモーション分野で、ナショナルクライアントのプロダクトとサービスの立ち上げを経験。様々な業種の広告キャンペーンに関わり、日・中・英の3ヶ国語を生かしてプロジェクトを進める。株式会社Re.ingの執行役兼任。
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「まだ、日本で手を繋いで歩けていないけれど、渋谷か新宿だったらと思えるようになった。」
— Reing (@Reing_me) April 29, 2019
海外で結婚した4人(@SeigoBren/@Nozomi_UK)が、カミングアウトし、ネットで発信できるようになるまでのことを話してくれたよ🏳️🌈
自分自身との闘い、家族との関係性、そして、今。https://t.co/YPHOisf13N