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「日本は、一歩ずつ前向きに変わり始めている。」2年ぶりに帰国した夫夫が体感した、セクシュアリティに対する日本の空気。 ー Seigo & Bren x Nozomi & Micky インタビュー(前編)

アメリカのオハイオ州在住で、Youtuberとして活躍しているSeigo & Brenこと、永田靖悟さんと永田武蓮さん。2018年7月に、Re.ingがインタビューをさせていただいてから、約10ヶ月が経ちました。そんなふたりが約2年ぶりに帰国するということで、先日Re.ingとコラボレーションし、初めてのトークイベント・交流会を2日間に渡って開催しました。カップルでお越しの方も多く、年齢性別問わず、沢山の方に参加していただきました。(レポートは後日お楽しみに!)

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(左) Seigo Nagata 永田 靖悟 / (右) Bren Nagata 永田 武蓮

そんなSeigo & Brenと同時に帰国したのが、大親友のご夫夫Nozomi & Micky

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(左)Michael Iwata / (右) Nozomi Iwata 岩田 望

2017年9月にイギリスにて結婚し、現在はロンドンに住んでいます。ふたりも、ブログを通じて結婚生活や、移住に関する情報などを発信しています。

今回は、ふた組の結婚生活、アメリカとイギリスの環境、日本について、未来への希望。そして、同じ悩みや葛藤を抱える人たちに伝えたいこと。様々な想いを、いっぱいに語ってもらいました。前編後編にわたってお届けします。


『一人じゃない』と初めて感じることができた、レインボープライド

ー 今回みなさんが同じタイミングで帰国した理由を、聞かせてください。

Nozomi「SeigoとBrenが帰国し、東京レインボープライドにも行くということで衝動的にチケットを取ったんです。実はSeigoとBrenと初めて会ったのは、2年前の東京レインボープライドで。」

Seigo「ちょうど東京レインボープライドの時期に、のんちゃん(Nozomi)がブレンにメッセージをくれたんです。ずっとSNSでやりとりをしていたのですが、『よかったら会いませんか』という流れになって。なので、今回2年ぶりに一緒に行けるということで、ワクワクしています。実は、今度ふたりがアメリカに来る計画をしていて、久しぶりに会えることは決まっていたんですよ。でもやっぱり日本で、レインボープライドに一緒に行けるのは嬉しいですね。」

ー レインボープライドには、特別な思い出があるんですね。レインボープライドという存在は、やはり今でも皆さんにとって大切なイベントですか?

Seigo「カミングアウト前、初めてレインボープライドに行った時にとっても驚いたんです。日本でも、ゲイやレズビアンであると自認している人たちは、こんなにいっぱいいるんだと。そこで、『一人じゃない』と、感じることができて。こんなに沢山、自分と同じような人がいるって初めて目に見えて分かった場所なんですよね。自分にとってレインボープライドは、仲間がいるって思える場所です。

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ー 今年は4人で行くということで、もっと楽しめそうですね!何かもう予定は立てているのですか?

ALL「特に決まっていないのですが、楽しく遊べたらと思います!」

ー 最近、日本でも本当に沢山の方や企業が参加していますよね。去年は過去最高の15万人を動員したそうです。アメリカやイギリスのレインボープライドはどのような感じですか?

Bren「僕たちは、コロンバスのレインボープライドに行きました。とても大きなイベントで、多くの企業や人が参加しています。」

Seigo「日本ではLGBTQが集まるイベントというイメージがありますが、コロンバスではもっと多様な人たちが集まる場所になっているんです。セクシュアルマイノリティだけではなく、いろんな人がいました。例えば、男性は上のシャツを脱いで胸を見せても問題ないとされているけど、なぜ女性はダメなのか。そういった性別に対するバイアスに異論を唱えて上半身裸でパレードを歩く女性がいたり。本当にいろんな意味で、“性の自由や多様性”を表現するイベントでした。

Nozomi「ロンドンのレインボープライドは、東京よりも規模がもっと大きくて。もちろんストレートの人もいますし、セクシュアリティは関係なく、マイノリティやマジョリティも関係ない雰囲気を感じました。家族連れで来ている人も、沢山います。ロンドンのメインストリート全部がパレードで埋まって、歩けないくらいたくさんの人が参加しています。」

Micky「イギリスの大手企業や、政党もスポンサードしていますね。とても大きなお祭りです。」

珍しいことでも特別なことでもなく
僕たちはただ、普通に結婚しているだけ

ー それぞれの国によって、ジェンダーやセクシュアリティに対する感覚も大きく違いますよね。結婚生活はどうでしょう?

Micky「今は結婚して一年半くらい経ったのですが、ただただ普通です。特別なことではなく、普通の生活です。」

Nozomi「去年の冬に、今の家に引っ越したんです。隣の人に挨拶に行った時、僕たちがカップルであることは恐らく雰囲気で分かっていたと思いますが、特に何も言われず、とても自然に受け入れてくれました。『ゲイなの?』とか『結婚しているの?』など、取り立てて聞くことでもないといった感じで。ロンドンは、とても多様性を重んじる街だからということもあるかもしれません。ゲイだと見たらわかる人もいれば、見た目ではセクシャリティを判断できない人も勿論います。僕たちのことをゲイだからとかではなく、“ひとりの人”として接してくれる感じがしました。男性同士の結婚も珍しくて特別なことではなく、ただ『僕たちは、結婚しています』というだけです。

ー 結婚生活は楽しいですか?

Nozomi & Micky「本当に、楽しいです!」

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ー ふたりが醸し出す空気から、幸せな感じが伝わってきます!Seigo君とBren君はどうですか?

Bren「まったく同じ答えになります(笑)。普通です!何も特別なことはなく、普通に生活しています。アメリカでは、変なこと言ってくる人はほぼいないですね。毎日、楽しいです。」

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Seigo「本当に、楽しいよね。周りも普通に受け入れてくれて、夫夫であることを言うのが怖いということもないですね。ただ、もう少しアメリカの南部に行くとまた違ってくるかもしれません。人によりますが、州によって怖いところもあります。今、私たちが生活している場所が、寛容な地域だからというのもあるかもしれません。」

ー 結婚生活でよく話題になる家事分担について聞きたいのですが、役割は決めていますか?

Nozomi「できる時に、できる方がやります!結婚して移住した当初、僕は1年間ほどいわゆる主夫をやっていたんです。その時、僕は日本人的な感覚で『仕事をしていないんだから、自分が家事をやらなきゃ!』という一心で、全部やろうとしていたのですが、途中で疲れてしまって凹んでしまったことがあって。そんな僕に対してMickyは『気にしなくていいんだよ。家事は、やれるほうがやればいいんだから。』と言ってくれて。なので僕たちは特に当番も決めていません。日本食を食べたい時は、僕が料理をします。洗濯は、気づくほうがやります。でも最近は、僕のほうがMickyに対して『なんで、やらないの?』と怒ることが多いかもしれません(笑)。」

Micky「ごめんなさい。ちゃんと洗濯機に服を入れます(笑)。」

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Nozomi「でも、掃除とか身体を張る仕事はMickyがやってくれることが多いですね。」

ー 上手く、自然に分担できているのは理想ですね。Seigo君とBren君も同じ感じですか?

Seigo「料理に関しては、Brenが美味しく作れるので、僕は手を出しません(笑)。料理が得意なBrenに任せています。レシピを見ればなんでも作れるんですよ!」

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ー Bren君は、料理をするの好きですか?

Bren「好きです!料理は、楽しいですね。僕は和食が好きで、サバの味噌煮とか、チャーハンとかをよく作ります。あとは韓国料理!でも週末には、ふたりで作ることもあります。」

Nozomi「Mickyもナスの味噌煮が好きです。寿司も好きですし。出逢ってから初めて日本に来て、今回はもう9回目ですが、日本好きだよね。」

Micky「和食も、親切な人たちも、大好きです。」


法律で認められる婚姻関係は
心の支え


ー 今の日本では同性婚は認められていませんが、「結婚しないという選択肢も、幸せのひとつのかたち」だと言われることもありますよね。結婚して良かったと感じることはありますか?

Seigo「結婚してもしなくてもいいよね、という空気は、アメリカでも同じです。でも私たちの場合は、絆を深めることができるなと思って、国を超えて結婚しました。アメリカでは名前も変えられましたし、法的に関係が守られていると感じられているので、結婚して良かったと思っています。今、日本では“パートナーシップ制度”もありますが、結婚ではないから法的なサポートは受けられないですよね。たまに友達から『日本でも渋谷区とかで制度ができたから、結婚できるんだよね?』と言われたりするんです。でも、それはパートナーとして尊重しますよということで結婚という法的関係が適用されるわけではない。同性の結婚を、選択肢として認めて欲しいと思います。心の支えとしても、精神的に全然感覚が違います。何があっても『結婚しているから』と、頑張っていく気持ちになれますね。

Nozomi「もともと、僕はまだ大学生だったこともあって結婚願望強かったわけではありませんでした。出会って付き合い始めた頃は、遠距離恋愛だったんですね。僕はそれが辛かったので、早くイギリスに行きたくて調べていたところ、行くにはビザの関係上結婚しなければいけなくて。勿論それだけが理由ではないのですが、Mickyとは結婚したい思っていたので、その流れで結婚しました。特に何か大きく変わったことがあったというわけではありませんが、やはり、結婚という大きな区切りがあったことで『結婚している』ということを実感でき、精神的な支えができたと思います。

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Mickyお互いの関係性を、結婚を通して周りに認められて、家族や友人に祝福されることは、とても素晴らしいことだと思います。」

Nozomi「そして、苗字を変えられたのも大きいですね。僕は別姓でもよかったのですが、Mickyが苗字を一緒にしたいと言ったので僕の苗字に変えました。ワンチームみたいな感じです。イギリスでは、結婚したら異性のカップルと同様に法律的に権利が認められ、福利厚生も受けられるようになりますので、僕たちにとって結婚は、一番いい形だったと思います。」

ー それぞれ、日本の苗字にしているのは偶然ですか?何か理由があったのでしょうか。

Bren「結婚しようとした時に、苗字を変えるかどうかについてふたりで話して、いろいろ調べていたんです。もしSeigoがアメリカで苗字を変えてしまったら、日本に戻った時に複雑になってしまうんですね。書類もすべて作りなおすことになるし、日本で通用するかどうかも不安だったから。なので僕が苗字を「永田」にしました。それしか、チョイスがなかったんです。それに、僕は元々自分の苗字の響きがそこまで好きではなかったというのもあります(笑)。」

Micky「僕はNozomiと同じ苗字が欲しかったです。でも同じように、Nozomiがイギリスで僕の苗字に変えたら、そのパスポートが日本では認められるかどうか不安でした。Nozomiのいろんな身分証の整合性がつかなくなるので、僕の苗字を変えたほうが手っ取り早かったんです。」

Nozomi「僕は英語の苗字が欲しかったんだけどな〜!」

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Seigo「わかる〜!本当に!なんでもいいから英語の名前にしたかったよ。」


ー 子どものことは話したりしますか?

Seigo「実はさっきも、4人でその話していました。できれば欲しいです。すごく欲しい。(一同賛同)でも、きっと10年後とかになると思います。今すぐ、ではないかな。どういう方法にするかなど、じっくり考えようと思ってます。それなりにお金もかかりますし、代理出産だと命にもかかわってきますので。」

Nozomi「イギリスの場合、代理出産をビジネスするのは認められていないんですね。ボランティアでないと、頼めないんです。なので、アメリカに行って代理出産できる人を探す人が多いです。僕たちも方法を探らなければならないけど、やはり、いつかは欲しいです。」


日本のセクシュアリティに対する意識は
少しずつ前向きに変わっている

ー 今回日本に帰ってきてイギリス・アメリカに渡る前に変わったなと感じることはありますか?

Nozomi「LGBTQについて、メディアにたくさん取り上げられていることに驚きました。」

Seigo「LGBTQという呼び方自体が、日本で広く知られるようになりましたよね。認知度がすごく上がったイメージです。今回日本に帰ってきて、カフェに行った時女子高生が『ゲイの人ってさ』と話し始めてびっくりしました。数年前までは、誰も知らなかったんじゃないかな。自分は当事者ですが知りませんでしたし、実はアメリカに行ってからLGBTQという言葉をちゃんと知ったんです。恐らく僕たちがアメリカに行っている間、日本では政治家の発言やデモなどのニュースが大きく話題になったり、拍車をかけたかもしれないですね。」

Brenでも、前向きに変わっていると思います。ネガティブなニュースだったかもしれませんが、それをきっかけにみんなが注目してくれるのはいいことだと思います。実際に、僕たちがカミングアウトしても『そうなんだ、いいね!』と言ってくれる人たちばかりでした。ずっと怖かったけど、言ってみたら受け入れてくれる人が多かった。だからこうやって少しずつ、理解が広まっていくと嬉しいなと思います。」

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数年ぶりに帰国した、ふた組の夫夫。様々な想いを持ちながら、海外での結婚というかたちを選び、生活をしています。何も変わらない普通の結婚生活を、なぜ日本で送ることができないのか。幸せな笑顔の裏には、それぞれの葛藤もあります。だけど、少しずつ変わりゆく日本の空気に彼らは希望も見出していました。

後編では、結婚に際しての周囲との関わりやカミングアウトに対するそれぞれの考え、想いなどをお伝えします。後編は、後日掲載となります。お楽しみに!


Interview & Edit: Asuka
Photo: Moya
Writing: Yang

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