東山魁夷の北欧
図書館で偶然、この本を手に取った。
見つけたときの感動といったらすごかった。
開いただけで、あの空気を感じられるようだった。
私の記憶はもうほとんど幻想のようで、現実味はなくなっているのかもしれないと、ふと思うことがある。
帰ってきてからしばらくして振り返る風景や出会いは、どこか美化されていて、そのままの姿を留めてはいないのかもしれないと。
ページと共にその土地を巡りながら、全く同じとは言えないまでも、東山魁夷と同じ空気を味わっていると感じられ、彼が見た風景と私の記憶がつながって、より鮮明で美しい何かに塗り替えられたようだった。
一旅行者、一寄留者としての見方が映す真実があるのだと、いま一度私の中の記憶が息づいているのを感じる。
あの土地が、あの人々が醸し出す、広々とした空気に、私は自分が肯定されていると感じていたし、今こうして思い出す度に、その心地よい、さわやかな風を感じることができる。
本を通して過去の人とつながり、
私の記憶とつながり、
世界とつながるという感覚。
静かで、想像的で、何か内側を輝かせてくれる時間。
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