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《15通目》私の6月23日⑤ 最終編
先生へ
11話から続いたお話の、最終編として15通目を書きあげたいと思います。
2人とさよならした後。時刻は14時25分。
先生、みんなとの集合時間が近づいていました。急ぎ足で資料館に戻り、ある程度大学の仲間たちと合流。
慰霊祭を終えたデニーさんがこっちに向かって歩いてきて、会釈をしました。軽く返してくれる。デニーさんって、れいんのこと、見えるんだ…。信じられない。
14:30から結構時間過ぎたけど、みんな合流して…。
先生が「〇〇(れいんの本名)なにそれ。」
と私にたずねたあのかさ、それがT子さんがくれたものです。
T子さんに出会えたこと、うれしかった。そしてそこに、Yさんがいなければ私はT子さんの名前すら知る事ができなかった。ありがとう。ありがとう。
T子さんとYさんと出会ったあとから、「平和の礎」はたくさんの名前が刻まれていることを上空から撮影したような…。礎の手前に炎が飾られるような…。そんな、有名で大規模なイメージの場所ではなくなりました。
私がT子さんと、Yさんと出くわした、平和の礎の中に潜む、小さな小さな一角。その場所こそが「私の場所」です。今もきっとその場所では、優しい風が吹いている。
そんな礎の一角は、沖縄戦を大規模な悲劇の物語として語る場所ではない。どこで誰が何をしたのか、事実を並べるだけの場所じゃない。ただ、T子さんの涙の中には何があるのか。誰が映っているのか。儚く過ぎていく時の中で鮮明に、リアルに、描き出していくような場所…。
私は礎から帰る時はいつも振り向く。そして想像する、白黒のバサーを着た私の知らない人たちが、どこまでもどこまでも並んで立っている光景。その日の帰りは、きっと先頭にT子さんのお父さんが立っていた。そんな風に思います。
先生、今年の6月23日は、去年とは全く別物でした。この大切な思い出は、大事に胸にしまっておこうと思います。
全容をお話しすると言いながら、日記の内容からたくさん省きつつ、執筆しました…。でも、きっと、こうして良かったと信じてる。
これにて、「私の6月23日」の記憶、記録を完結とします。
2024.11.12 とりあえず一区切り。待って、ポッキー忘れてたんだけど… れいん。