普段ワンオペ育児でも、家事をしてくれた夫に、お礼を言うべき? ノルウェーのカップル・カウンセラーに相談してみた
日本の女性達の悩み
YAHOO! 知恵袋で、こんな相談がされているのを見かけました。
夫が家事をしてくれたらお礼を言うべき?
『北欧式パートナーシップのすすめ』の作者でノルウェーのカップル・カウンセラーであるビョルク・マテアスダッテルさんに、同じ質問をしてみました。日本の女性達のおかれている状況の違いを説明した上で。
「ワンオペ育児、家事に追われる日本の多くの女性達も、ノルウェーの人達と同じように、夫が家事をしてくれたらお礼を言うべきでしょうか?」
著者の答え→はい
著者の答えはこうでした。
日本の家事分担と男女平等について教えてくれてありがとう。とても興味深いです。
家事の大半を一人で担っているのであれば、パートナーが家事をした時に、ありがとうと言わなくてはいけないのは奇妙だと思っても無理はありません。
私はカップル向けの講座を開く時、いつも互いに感謝することの重要性について話をします。今回の本『北欧式パートナーシップのすすめ』に私は、よくされるある質問について書きました。
夫が家事をしたら、お礼を言うべき?
「夫が食洗機の中の食器を食器棚に移してくれた時に、一々お礼を言わなくてはいけないって、本気で言っていますか? やるのが当然ではありませんか?」
著者の答え=お礼を言うべき
私はこう答えました。
「ええ。言うべきだと思いますよ。言わないってことは、家事を分担するのは当然ということですよね。ですが恋人がいてくれることは、当然ではないのですよ。恋人が役割を担ってくれるのも、当然ではありません。そのような日々のささいなことに、あなたが感謝の言葉を伝えることで、彼が食器を棚に戻してくれたことだけでなく、他の多くのことにも、感謝の意志を示せるのです。ありがとうと言うことで、あなたは伝えるのです。あなたのことを見ているよ! 私と日常生活を過ごしてくれて、ありがとう。あなたがいてくれて、ありがとう。私とつき合ってくれて、ありがとう、と」
もしも日本のカップルに向けて講座をするなら
日本では、女性達が家事と育児の大部分を担っていることもあり、パートナーが少し家事をしてくれた時に、ありがとうと言わなくてはいけないのを変だと思う場合もあるとのこと。
もしも私が日本のカップルに向けて講座を開き、ある女性がこう手を挙げ、質問したとしましょう。
「私はほぼ1人で子育ても家事もしています。なのに、たまに夫が家事をしてくれた時、お礼を言わなくてはいけないって、本気で言っていますか?」
私はきっとその女性に、ノルウェーの女性にしたのとほぼ同じ答えを返すと思います。でも出だしはちょっと違った言い方をするでしょう。「ええ、たとえあなたが彼よりも家事や育児を多く担っているとしても、ありがとうと言うべきだと思います。ありがとうと言うことで、彼が家事を少ししてくれたことへの感謝を伝えるだけでなく、”あなたを見ているよ!”と伝えることができるのですから」
ノルウェーでは男性も家事をするのは当たり前
この例に出てくるノルウェーの女性も日本の女性も、ありがとうと言うことを躊躇している点では共通していますが、理由は真逆のようです。ノルウェーの女性達は、男性も家事をするのは当たり前のことなので、家事をしてくれたからといって、一々ありがとうと言うのはヘンじゃないかと感じているようです。
日本の女性は男性ももっと家事をしてほしいと思っている
一方、日本の女性達は、パートナーにもっと家事や育児をやってほしいと思っていて、それゆえありがとうと言わなくてはならないのはヘンだと思っているようですね。
どちらの言い分もよく分かりますが、それらがスマートというわけではありません。
家事や育児をしてくれてありがとうと言うことを躊躇する男性
男性も女性達と同じ抵抗感を感じているかもしれません。男性達はこう考えるかもしれませんよ。「どうして彼女が家事と育児の責任を主に負っているからといって、ありがとうと言わなくてはならないのだろう? 僕みたいに、夜遅くまで雇用主のために働かなくて済んで、幸運じゃないか」
外で働いてお金を稼いでくれてありがとうと躊躇する女性
そして女性はこう考えるのかもしれません。「どうして夫/パートナーがたくさん働いて、家にお金を入れてくれていることに、感謝しなくてはならないんだろう? 彼は社会に出て、自分の才能を発揮し、自分がしていることを認めてもらえているのに」
ストレスを感じ、満ち足りていないと、他人に感謝するよりも、うらやんでしまいがち
疲れ切り、ストレスや満ち足りなさを感じている時、私達は他の人の方が自分達よりも恵まれている、という思考に陥りがちです。そして感謝するよりも、うらやんでしまうのかもしれません。感謝しないための理論的根拠を探そうとするのです。そして、互いのこと、また互いが互いにとってどれだけ大切な存在かではなく、自分のこと、それに自分がどれだけ努力、寄与しているかにばかり目が向いてしまいます。
家事を主にしている方は、パートナーが子どもとの時間を多く過ごせず、仕事のストレスとプレッシャー、経済的責任を負う重圧を負っていることに目を向けるのを忘れてしまうかもしれません。そして外で働いている方は、パートナーが家事、育児にいかに労力を割いているか、家で家事、育児をすることをどんなに心細く感じているか、自分のキャリアをいかに犠牲にしているかに目が向かないのでしょう。
誰かとパートナー関係を築いている人は、よい関係が長く続くよう願うものです。そこに愛と親密さを求めます。相手からの温かなまなざしや、愛の誓いを求めます。
感謝をしないのではなく、より感謝することに解決策を見出してはどうでしょう。感謝するのは、相手の努力、献身に気付くことです。感謝するのは、相手の献身がなければ――お金を稼いできてくれなかったら、育児や家事をしてくれなかったら――家族生活はどうなっていただろうと、考えることでもあります。なぜならこれらの家事、外での仕事のどちらも、家族生活がうまくいく上で欠かせないものだからです。
感謝すること=全てうまくいっているふりをすること
ではない
感謝することは、全てうまくいっているふりをすることではありません。感謝することは、互いに歩み寄るための一歩なのです。家族のよりよい生活を築くため、お互い力を尽くすための。
愛は様々なことに打ち勝てます。ですが、愛には1つだけ耐えられないことがあります。それは見過ごされることです。
私達は感謝する時、相手に目を向けます。私達は自分達が世界に一人ではないこと、互いを必要としていることを知っています。
感謝するという言葉の語源は、考えるという言葉と同じです。私達は感謝する時、よく考え、熟慮します。私達は立ち止まります。私達は今この瞬間を生きていますが、同時に、過去と未来に目を向けます――過去のある日には、私はあなたのことを知らなかった。未来のある日には、私達はこの世からいないかもしれない。
今、あなたがここにいてくれて、食洗機の中の食器を棚に移してくれて、ありがとう!
愛とは与え、受け止めるもの
ノルウェーではよく、愛は与え、もらうもの(give&take)だと言われます。でも、私はそのことに完全には同意できません。愛はもらうものでは全くありません。愛とは与え、受け止めるものです。
私の本『北欧式パートナーシップ』を受け止め、読んでくれた皆さん、どうもありがとうございます。この本が、愛を慈しみたいと願う多くの日本のカップルのお役に立てますように。