「温泉の科学」〜温泉ってなあに?〜しぜんのかがくep.22 ぼうさい豆知識〜冬の災害の備え〜
(この記事は、サイエンスアイ新書「温泉の科学」佐々木信行著を参考にしています。)
12月になり、寒くなりましたね。私は毎晩、温かいお風呂にゆっくり浸かりたくなります。お風呂といえば、やっぱり温泉♨️!そもそも温泉って何?というところからお話します。
「温泉」は英語でも「hot spring」と同じ意味です。泉(spring)なので、地中から湧き出ているイメージですね。
最近は「onsen」でも外国で通じるそうですよ。それだけ日本の温泉は世界的にも知名度が高いんですね。
温泉はその言葉にあるように、温かい泉(水)が湧き出ているという意味ですね。温泉の名称は、中国・後漢の政治家・文人にして自然科学者でもあった張衡(ちょうこう)(78~139)によって名付けられました。彼は世界最古の地震計も発明したんですよ。
現在は1948年(昭和23年)制定の「温泉法」(環境省)でその条件が決められ、「地中から湧き出る温水、鉱水および水蒸気その他のガスで、温度または物資を有するもの」と定められています。つまり、温泉は「温度」と「成分(物質がどのくらい溶けているか?)」の2点で定義されています。
なぜ温泉法が制定されたかというと、温泉の開発によって湧出量の減少、温泉の権利に関する紛争などの問題が出てきて、温泉の保護と適正な利用を図るため。冷たい地下水をあたためるのも有効成分が含まれていればOK、火山や温泉地の水蒸気が冷水を温めてもOKです。
温度…
温泉の定義では、温泉はどのくらいの温度でしょうか?
(クイズ)①15℃以上(地球の平均気温)②25℃以上③35℃以上(猛暑日の気温)
正解は、②25℃以上です。
なぜ25℃になったかというと、国内で最も平均気温が高い場所の温度が25度だったからです。場所は温泉法が制定された昭和23年に日本の統治下にあった台湾。その年平均気温が24.9度でした。この気温より高い温度の水なら気温だけでなく地下の熱源の影響を少しでも受けている、それは温泉水だということで25度以上が基準になりました。
実は、深さ10mくらいの地温は、年平均気温にほぼ等しくなっています。四国九州の南部で20℃、北海道で10℃、東京や大阪では17℃程度です。もちろん深くなれば地温は上昇しますが、100m程度の深さでは温度の上昇は2~4℃程度です。
成分(物質)… 通常の水より特定の成分が高い水が基準。医学的に良いと言われる成分です。温泉法には18種類提示されています。例えば、溶存物質(ナトリウムやカリウムなど一般的な成分を除く)としては、炭酸ソーダ(炭酸水素ナトリウム)、フッ素イオン、臭素イオンなど。
ではどのくらいの量の物質が溶けてるといいかというと、温泉水1キログラムの中に、「ガスを除く溶存物質が1000mg(1g))以上含まれていること」という条件があります。※例外もあり、1000mg以下でも成分が少しでも含まれていれば「冷鉱泉」や「単純泉」といい、温泉の一つに含まれるようです。
例えば、自宅のお風呂は通常約200リットルのお湯になります。そこに、200グラムの物質が溶けていることになります。200グラムというと‥このくらいです。結構多いと思いませんか?
温泉に行くと、以下の説明がお風呂に掲示されていることがあります。
「○○温泉。①低張性、②低アルカリ性、③低温泉」
どういう意味でしょうか?知っておくとこれから入る温泉の性質がよくわかります。
①高張性泉、等張性泉、低張性泉と3種類あります。どういう基準かというと、人間の体液と同じ浸透圧かどうか?(等張性泉)を示しています。
基準は、高張性泉(10g/kg以上)、等張性泉(8g/kg以上10g/kg未満)、低張性泉(8g/kg未満)となります。
ものが溶けると浸透圧は高くなります。人間の体液は、生理食塩水と同じ濃度になり、約8.8g/L(約0.88%)の食塩水と同等です。例えば、浸透圧が低い真水のお風呂(低張性とも言えますね。)に長く浸かると皮膚がシワシワになります。これは真水より人間の体液のほうが浸透圧が高いからです。
どれがいいのかとは言えないのですが、皮膚に影響を与えるのは高張性泉、より皮膚に優しいのは等張性泉と言えるでしょう。日本一塩分濃度の高い温泉(高張性泉)は兵庫県の有馬温泉です。塩分と鉄分を多く含み、空気に触れると鉄分が酸化して真っ赤に濁ることから「金泉」と呼ばれるそうです。(温泉の塩分が7.17%(71.7g/kg)と海水の塩分濃度(3%)の2倍程度の濃さになります。)
②温泉には、さまざまな液性(PH)があります。酸性泉(PH3未満)、弱酸性泉(PH3〜6)、中性泉(PH6〜7.5)、弱アルカリ性泉(PH7.5〜8.5)、アルカリ性泉(P8.5以上)と5種類あります。
この違いは温泉が湧き出る場所によります。
・酸性は主に火山が関係しています。火山ガスの二酸化硫黄や硫化水素が熱水に溶け込んで酸性になります。
酸性泉がなぜいいかというと、殺菌作用があり、菌が大抵死滅するので、皮膚病に効果があるようですよ。※「自然災害と温泉」の回でも詳しく取り上げます。
・平野の非火山性温泉では、塩化物泉や炭酸水素塩泉(温泉水1kg中に炭酸水素イオンを1000mg以上(炭酸水素ナトリウム(重曹))含む)などの中性ーアルカリ性泉が多くなります。
アルカリ性泉は、皮膚がぬるぬるして古い角質がとり除かれます。皮膚が溶けるんですね(実際は古い剥がれた皮膚が溶ける)。肌がきれいになるので、「美白の湯」「美人の湯」と言われます。どちらも美しくなれますね♪
③温度による分類もあります。「温泉」は25℃以上のものと先ほどお話ししましたが、温度により区分があります。高温泉(42℃以上)、温泉(普通泉)(34℃以上42℃未満)、低温泉(25℃以上34℃未満)、冷鉱泉(25℃未満)に分けられます。42℃以上がないのは、通常、水を加えて薄めたり、冷まして温泉に入るからです。人間が入るお風呂の温度や体温が基準となっていそうですね。温泉を冷ますといえば、草津温泉の湯もみが有名ですね。草津温泉は源泉が50℃〜90℃あるようです。
後はここでは詳しく記述しませんが、塩化物泉、炭酸水素泉、硫酸塩泉、鉄泉、アルミニウム泉、硫黄泉、放射能泉もありますね。このあたりは別の回(温泉の効能)で触れたいと思います。
⭐️温泉の性質がわかる、わかりやすい実験(PH試験紙にによる検査)をしてみましょう。
①草津温泉(群馬県)、②観音温泉(静岡県)、③名古屋市の温泉、地下800mを掘削して取り出した冷鉱泉です。(名古屋市)
①草津温泉は酸性で有名なのが群馬県の草津温泉ですね。硫酸塩泉です。②名古屋市の温泉は、単純泉で中性です。③観音温泉(静岡県)はアルカリ性です。炭酸水素泉です。
ぼうさい豆知識~冬の災害への備え~
今日は冬の時期に家庭で備えておきたい災害への準備についてお伝えします。
災害は季節を選びません。1995年の阪神大震災は1月17日。1946年12月21日昭和東南海地震、翌年の1月13日の三河地震は真冬の災害でした。冬は思わぬ大雪や凍結でライフラインが断絶します。南海トラフ巨大地震の想定では、被害が最大となる最悪のケースが、季節は「冬」、時間帯は「夕方」や「深夜」です。冬は寒さで体温が奪われること、夕方や深夜は周りが暗く、寝ていることもあり、逃げ遅れる可能性が高いのです。
冬はいつもの備えにプラスして「寒さ」を防ぐ備えをしましょう。
エアコンなど暖房器具が止まったときはどうしますか?
衣類を重ね着するのもいいでしょう。層をつくり空気を含ませて体温を逃がさないことがポイントです。子どもは汗をかきやすいので、インナーはすぐに着替えないと体温を奪います。多めに着替えを準備してください。災害時は新聞紙を重ねて腹巻きにし、ホット専用ペットボトルを湯たんぽ代わりにするなど身近な物で工夫できます。一番外側に風を通さないウインドブレーカーなどを着るといいです。
寒さをしのぐために一時的に車に避難することもあるでしょう。
燃料は常に確認してください。保温断熱シートや衣類、毛布も車に備えておきましょう。ポータブル電源があれば電気毛布も使えます。
電気毛布は電力消費量が非常に少なく、平均30~60W/hです。エアコンが400~500W/h(家庭の6畳用:最大1500W)なので、各段に違いますね。
また、カセットこんろを使えば、温かい食べ物で体が暖まります。
非常用の持ち出し袋は、季節に合わせて中身を見直すことを推奨。冬はカイロや衣類、普段使わなくなったダウン、冬の衣類や防寒具(帽子やマフラー、手袋など)を追加して入れておきたいですね。
以下、私の記事も参考にしてください。
⭐️Podcast本編はこちら↓宜しければお聴きください♪
神田沙織 がりれでぃ スピンオフ
ナチュラル・サイエンス・ラボ
しぜんのかがく