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しぜんのかがくep.51(7/19) 夏と妖怪👻 島田尚幸さん

夏休みですね!今年はラニーニャ現象の影響で本当に暑い夏になりそうです。


熱中症警戒アラート、特別警戒アラートについて

熱中症にならないように、環境省から「熱中症警戒アラート」が発令される頻度も上がりそうです。熱中症を予防するための行動を理解、実践し、日頃から熱中症に対する備えを万全にしましょう。令和6年(2024年)4月から改正気候変動適応法が施行され、熱中症特別警戒アラート(最高暑さ指数(WBGT)が35(予測値)に達する場合等)の運用が始まりました

熱中症警戒アラート(府県予報区等内において、いずれかの暑さ指数の情報提供地点における、翌日・当日の日最高暑さ指数(WBGT)が33(予測値)に達する場合に発表)は、危険な暑さが予想される場合に、暑さへの「気付き」を促し熱中症への警戒を呼びかけるものです。
熱中症の危険性が極めて高くなると予想される日の前日17時頃又は当日朝5時頃の1日2回発表されます。熱中症に関する情報は、ニュースや天気予報、環境省及び気象庁のサイトなどで確認し、適切な熱中症予防行動をとりましょう。環境省のメールサービスもあります。

夏は妖怪ですね。今回ゲストをお迎えしてお話を伺いました。

島田尚幸さん あいち妖怪保存会 共同代表
怪談・妖怪・文学などを題材とした講演会・ トークイべントに企画・出演、雑誌等でコラムも執筆。中学校の理科教諭でもある。
■編著書『愛知妖怪事典』(あいち妖怪保存会編著 一柳書房/2016)
あいち妖怪保存会HP
http://blog.livedoor.jp/aichiyokai_p_society/

夏のお化けっているんですか?なぜ夏がお化けや妖怪の季節なのでしょうか?

夏はおばけの季節ですが、夏にちなんだおばけは案外少ないです。本来お化けの現れる状況に、季節は関係ないはず、なんですね。それでは何故、夏にお化けの話が多いのか?といった話から紹介します。

 1つは暑さ対策です。暑気払いですね。怪談話など聞くだけで怖くなる話があります。周りの環境の温度は低くなっていないのになぜゾクゾクする感覚があるのか?それは脳のはたらき、神経のはたらきなんですね。
 基本的に「怖い」と感じられる状況は、先が読めない・分からない、場合によっては生命の危機につながる可能性が高いです。人は話を聞くだけで想像力がはたらき、その結果、寒気を引き起こしたり、鳥肌が立つんですね。猫は、恐怖を感じると体の毛が総毛立ちます。外敵に遭遇した際に体を大きく見せることで、威嚇をしようとしていた名残と考えられています。

総毛立っている猫

また、危機的な状況になったとき周りの温度の感覚よりも体を守ることに脳が集中することで寒気を感じたり、ゾクゾクする感情を引き起こすとも考えられています。(ストレスによって交感神経が過剰に働くと悪寒戦慄が起こり、手や足などに血液を運ぶ毛細血管が細くなって体温が末端まで送られてこなくなるため、ゾクゾクする悪寒を感じるそうです。) 

2つめは、夏の行事としてお盆がありますね。亡くなられた方が帰ってきて、近くにいるという感覚もあるかも知れません。お化けの季節というより、死者を感じ想う季節でもあります。お寺など地獄絵を見ながら、あの世はこのような世界であるとか、どんなに良い人でも地獄に落ちることもあるという話をする。だから施餓鬼供養(餓鬼道に落ちた魂を供養するもの)が大事であるんですね。夏はあの世に思いを馳せ、死者たちに触れる、感じる、考える季節でもあるのです。

岩手県花巻市 雄山寺 地獄絵

3つめは、芸能のいくつかが夕涼みとして夕方以降に行われていたことがあります。今のように冷房が利いた会場であれば、どの時間帯でもお客さんを呼ぶことができるでしょう。しかし、かつてはそうではありませんでした。
暑い中で興業を行っても、お客さんも入らなければ、演者、裏方の方々も負担が大きいです。そこで、多くの芸能が、暑い時期は夕方以降に行われていたようです。
そして、その演目も「おばけ」ものが多かったのです。妖怪やお化けは見た目が怖い、気持ち悪いものが多いです。その上、落語や歌舞伎などの芸能における「おばけ噺」となると、人の執念や嫉妬などの「心因的な怖さ」を呼び起こすようなお話も描けます。色々な階層での「怖さ」を楽しめるんですね。その上、夕方は陽がかげってきて、事故も起こり易い時間帯になります。舞台芸能では多くの人が裏方として携わるのですが、舞台を行なう中で事故に遭う人も出てきます。そうなると、「演目が演目だから」「祟りに違いない」などの噂が生まれます(場合によっては、それを興業の宣伝に用いることもあるようです)。今以上に娯楽が少なかった時代であれば、「いわくつき」の作品は話題になり、怖いもの見たさ、あるいは肝試し感覚での人手があったのに想像が難くありません。また、夕方から夜は暑さが和らぐので出歩きやすくなりますよね。夜もふけてくると、周りが今のように街灯もなく、ずっと仄暗いです。そうした中で、普段は聞かない、あるいは意識しないような物音も、聞こえてくることもあるでしょう。そうしたものを聞いた時に、想像力がはたらき、「姿は見えないけれど、得体の知れないものがいた」という感情が抱かれることになります。それらいくつかの要素が複合的に重なって、夏といえばお化けや妖怪の季節になった、と考えられます。

夏らしい妖怪ってありますか?

今度は、具体的な例で見てみましょうか。河童という妖怪がいます。水に関係する妖怪です。
元々夏は海難事故や水難事故などが起こりやすい季節です。川や海で泳いでいるとぬるっとした感触を感じたことはありませんか?急に流れが早くなるところもあります。川遊びをする際には、遊びに行く場所だけでなく、その上流の天気を見ておかなければならない、といわれます。これは、川の上流で雨が降ると、遊んでいる場所はたとえ晴れていたとしても急激に水嵩が増えることがあるからです。これらの条件が重なると、たとえ泳ぎが得意な人であっても足を掬われたり溺れたりすることもあります。「なぜ?」という問いかけの答えの一つとして、そこに妖の姿、河童をはじめとする水怪を想像し、戒めとして利用したと考えられます。

河童(鳥山石燕「画図百鬼夜行」より)

雷に関わる鬼は?夏らしい入道雲の妖怪。

夏の風物詩の一つに「入道雲」があります。この言葉も妖怪由来なんですね。
元々は「積乱雲」という、急激に、みるみるうちに大きく育っていく雨雲です。むくむくとあっという間に大きくなる姿に大入道・見越し入道・高入道などの「大きくなる」入道系の妖怪を想像したのですね。

鳥山石燕『画図百鬼夜行』より「見越」

また、夏には7月7日の「七夕の節句」があります。
節句では「穢れ」を人形を用いて水に流すなどとして、よくないものを遠ざけることが行われました。旧暦の七夕、今のカレンダーでは8月7日ごろ「眠気流し」という行事が行われます。これは、悪霊などのよくないものが寄り付くと、眠気を感じるようになる。そのため、遠ざけるために、火を灯したり、提灯を掲げたりするような祭りが行われるようになりました。「眠気」が「ねむた(い)」、「ねぶた(い)」と訛化されて、青森の「ねぶた」や弘前の「ねぷた」に繋がっていきます。

「よくないもの・ごと」を想定し遠ざける、人々の命を守る、警戒するという意味では、防災と妖怪やお化けを想像することは、深く繋がっていますね。

防災ひとこと 「暑い夏、夏休みは涼しくなる妖怪話をどうぞ。」

エアコンがないころ、昔は風鈴の涼やかな音色を聞いたり、打ち水などして、夕涼みで夕方涼しくなる時間に縁側で過ごしたり…怖いお話を聞いたりして…エアコンがない中、暑い夏を乗り切ってきたんですね。
夏は台風襲来などで停電が起こると、いつも使っているエアコンが使えなくなります。皆さんなら暑さをどう乗り切りますか?
大災害が起こった場合は難しいのですが、停電してすぐに電気が復旧する見通しがある場合は、暗い中、停電が復活するまでの時間の過ごし方を考えないといけません。外国(フィリピン)でもよく台風が襲来する場所であるため、台風が通り過ぎるまでは、家族や親しい人と安全な場所に移動して、楽しく歌いながら不安な時間を乗り切ったという話を聞きました。停電中暗い中、ランタンひとつで親しい人と地元の妖怪話などをすることで、不安な状況を暑さを感じさせずに乗り切るツールにもなるのではと思います。

⭐️Podcast本編はこちら↓宜しければお聴きください♪
神田沙織 がりれでぃ スピンオフ
ナチュラル・サイエンス・ラボ
しぜんのかがく




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