しぜんのかがくep.52(7/26) 火星のお話&アート:新井真由美さん
1.火星の居住空間や火星での農業等、火星での人類活動の可能性について研究を進めていらっしゃいます。なぜ火星に興味を持たれたのでしょうか?
中学生、高校生の時に、環境汚染とか地球破壊とかすごくメディアで騒がれていたんですね。それを解決する研究者になりたいと思っていました。また、絵を描くのが好きで、科学系の進路を選択するか、芸術系に進むか悩んでいたんですが、筑波大学の自然科学・地球科学の方に進学し、気象を専攻しました。中学生か高校生くらいの時に見た映画で、「トータル・リコール」があります。火星に青空が広がっていたのが印象的でしたね。火星に地球のような温暖な環境ができるのではないか?シミュレーションならできると思い、火星の気象の研究をしてきました。また博士課程で宇宙での農業はどのような環境でできるのか?をテーマに選びました。
研究では、火星上に温暖な環境を作るため、人工的な屋根を作るんですね。コンピューターシミュレーションで屋根の高さを変えたりすることで、太陽放射内の長波放射(赤外線など)を蓄えることができ、平均気温15度(地球の平均気温は約15度)という農業に適した環境を作り出すことができるんですね。
シアノバクテリア(ラン藻)は、乾燥状態ならば、空気が無くても(真空でも)耐えられ、その後、水をかければ再び増えることができるんです。過酷な環境でも育つ生き物です。(※地球上の酸素はシアノバクテリアが作り出しました。)
シアノバクテリア(ラン藻)は乾燥すると海苔みたいなパリパリの状態になるんですよ。乾燥状態で真空暴露しても蘇生できる。さらに光合成能力も蘇生後は復活するんです。空気中のの窒素を固定して有機体窒素(アンモニア、アミノ酸、タンパク質など)も作り出すことができるし、食べても栄養があるんです。実は味噌汁に入れたりして食べられるんですよ。火星は極や地下に水(氷)がありますので、ラン藻が育つための条件は火星環境でも揃いそうですね
2.日本の宇宙飛行士が選ばれました。アルテミス計画など今後月から火星探査を視野に入れていると思いますが、火星へ移住した人類はどのような生活になると思いますか?
火星では大気が薄いため、放射線が地球より多く降りそぎ、地上の各場所の温度変化も大きいです。人間にとって快適な環境変化の少ないマイルドな場所として地下空間に住むという案がありますね。例えば、日本でも月の縦孔探査プロジェクトがあります(JAXA 月惑星の縦孔・地下空洞探査 ~UZUME計画~)。月や火星にもそれに適した縦孔があります。ただ、宇宙空間では限られた資源で生活することになりますよね。地球の問題(環境問題など)を解決してから火星に住んでほしいと思います。
3.火星の研究をしている新井さんは火星に住みたいと思いますか?
火星に行くのは片道6、7ヶ月かかります。行くのも覚悟を持っていかないといけないですね。火星を研究すればするほど、地球のことを改めて考えてみるいい機会になると思います。
火星に行くには究極の物質循環社会を築くことはもちろん、コミュニケーションも重要です。例えば、宇宙飛行士は宇宙ステーションでロシア語、英語など多言語でコミュニケーションをとる必要がありますよね。人間だけでなく植物同士は植物ホルモン、動物同士もイルカなどは超音波等、それぞれの手法でコミュニケーションを取りながら共存しています。火星に行くということは、人類の宇宙進出という視点だけでないんです。地球は丸ごと生きている。私たちは生態系に生かされているという視点、地球の生態系全て持っていくことができれば火星での生活も快適なのではないでしょうか。
4.つくばみらい子供科学教室ではどんなことをされているのですか?
2014年に科学と文化研究会を立ち上げまして、日本科学未来館の毛利館長の言葉「科学を文化に」に影響を受けています。自分自身がもともと興味があった「サイエンスとアート」を視点に、住んでいるつくば市で活動を始めました。自分だったらこういうイベントに参加したいな、こういうイベントがあったら子供と一緒に楽しめそうだなという視点で企画しています。月1回または3か月に2本とかの頻度でイベントを実施しています。
ダヴィンチの創作や考え方は建築や数学の視点もあり、STEAM教育にもつながるんですね。
防災の視点だと、防災科学技術研究所のストローハウスのプログラムを実施しました。(アートの視点もあるので、制作物がとても美しいんですね。)
つくばみらい子供科学教室のFB
https://www.facebook.com/tsukubamirai.science.club
(新井さんはご自宅でもいろいろワークシートを作成され、お子さんと科学とアートを楽しまれています。)
「方位磁石を使った恵方巻きのワークシート」
偏角を修正して、「バッチリこの方角に向いて恵方巻きを食べよう!」
節分でサイエンスを楽しむネタとして作成しました。科学教室では日が合わなくて実施できなかったのですが、繋がっている皆様に提供したものになります。
また、美術館に行ったときに子供と一緒に楽しみながら予習して学べるワークシートを作成しています。自分用、子供用と作っています。実際に美術館に行ってわかること、その場で知る質感とか色などを知ることができるものにしています。
5.アート作品
(新井さんは国立科学博物館の筑波実験植物園のきのこ画コンテストに作品を出展されています。)こちらもアート&サイエンスの視点(キノコの進化とフィボナッチ螺旋、キノコ図鑑、牧野富太郎の世界観。)ですね。
6.NIMS(国立研究開発法人 物質・材料研究機構)について
つくば市にある研究機関です。一般公開のイベント(今年(2024年)は5/26に終了)もあり、見学に行くこともできます。
おすすめはYouTubeです。ピタゴラスイッチも制作されているユーフラテスさんが作ったYouTube動画は一見難しいと思われる材料科学の世界をわかりやすく興味深く紹介しています。
動画:NIMS x EUPHRATES 「未来の科学者たちへ」
防災ワンポイント
「火星で生活するためのポイントは地球の防災対策に活かせる。」
新井さんのお話で興味深かったのが、地球で生活するためには植物、動物を含めてコミュニケーションをとっていく、上手く共存する。地球で物資循環、環境の問題を解決する手法を身につけてから、火星に向かうと火星の生活もうまくいくのではないか?という新しい視点です。
災害時も共通点があります。普段の生活と違う環境になりますが、人と人とのコミュニケーションや周りの生活環境を循環させ整える視点は、通常の生活に戻していくためにも大事となります。
「火星に居住できるように未来の生活を想像してみよう!アートに親しむように想像しよう!」
⭐️Podcast本編はこちら↓宜しければお聴きください♪
神田沙織 がりれでぃ スピンオフ
ナチュラル・サイエンス・ラボ
しぜんのかがく
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