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天使のピアノ

先日、「天使のピアノ」と呼ばれる古い古いピアノを弾く機会をいただきました。

国立市の矢川にある滝乃川学園
その自然あふれる敷地内の教会に、とても素敵な天使の飾りのついたピアノが置いてあります。

滝乃川学園は、日本で最初の知的障害児のための福祉施設で、この天使のピアノは、その創設者の妻である石井筆子さんが愛用されていたピアノです。
明治期からのピアノで、現存して演奏できるアップライトピアノの中では日本最古のものになります。

独特の響きが特徴で、少しでも強いタッチで弾くと響きが止まってしまう。でも、うまく響かせることができると、オルガンのように太く響きが残る。現代のピアノとはまったく違う音の構造に、まったく別の楽器を弾いているかのような感覚になりました。

鹿鳴館の華と呼ばれていた貴族令嬢だった筆子さんは、産まれたお子さんが知的障害だったことに加え、下の子達や最初の夫との死別を経て、この学園の設立に尽力される石井亮一さんと共に人生を歩むことに。
障害があっても、一人ひとりに合わせた学びがあれば成長していくという信念のもと、滝乃川学園では障害児教育が行われました。
知的障害が白痴と呼ばれ、迫害されていた時代です。

筆子さんはどんな思いでこのピアノを弾いていたのだろう。
私の苦悩とは比べ物にならない苦悩の中で、言葉にならない思いをピアノで吐き出していたのではないだろうか。
何度も何度も目の前の状況に絶望して、それでも子どもたちのためにと、全力で前に進み続けた思いを想像するだけで、身につまされる思いになります。

その激動の半生は、常盤貴子さん主演で『筆子・その愛 -天使のピアノ』という映画にもなっています。
この日は滝乃川学園の高瀬理事から、少しお話を聞かせていただきました。

筆子さんは、津田塾大学をつくった津田梅子さんともとても仲がよく、そして津田梅子さんもピアノを弾く人でした。
ピアノで繋がる強く生き抜く女の人たちの姿を想像し、時を越えて私も少しだけ混ぜてもらったような、まだまだ未熟すぎて申し訳ないような。
そんな、いろんな方のいろんな思いを想像して受け取りながら弾かせてもらいました。

いや、本当のところは、現代のピアノとはまったく違う響きを引き出すのに精一杯で、そんな思いを馳せるような余裕はまったくなかったのだけど(笑)

何を弾こうかといろいろと悩んで、その場の雰囲気も受け取りながら、7曲弾かせてもらいました。
相変わらずのミス連発ですが、その分精一杯心を込めて演奏しています。

神につながる教会の響きを、女性たちの思いがあふれる天使のピアノの響きを、ぜひお聴きください。


演奏曲

♪平均律クラヴィーア曲集第1巻第1番前奏曲(バッハ)
ピアノだけではなくて、教会全体の響きを味わいながら弾かせてもらいました。音楽は教会から発展していった。その源泉を感じました。

♪ザナルカンドにて(植松伸夫)
ピアノの響きを聴いたときに、これはFFっぽい!と思って、ザナルカンドにてから弾き始めてみました。
教会がセーブポイントっぽくていい感じです!

♪Baby,God bless you(清塚信也)
石井筆子さんに、現代の母親たちの心の癒やしであるベイビーを紹介したくて、コウノドリの劇中歌を弾きました。
天使✕Babyの素敵な響きに嬉しくなります。

♪黄昏のワルツ(加古隆)
弾くつもりはなかったのに、響きを聴いてるうちにどうしても弾きたくなっちゃった曲。このピアノならではの演奏ができたかなと思います。

♪カッチーニのアヴェ・マリア(ヴァヴィロフ)
神に届ける祈りを表現できればと弾いてみました。
切ないメロディと加羽沢美濃さんの編曲が胸に刺さります。

♪For tomorrow(清塚信也)
コウノドリの劇中歌をもう1曲。清塚さんの響きとこのピアノの響きの相性がとても良くて、嬉しくなります。

♪Summer(久石譲)
最後になんかアンコール的に1曲!みたいな雰囲気で、summerを弾いたらどう演奏になるかな?と、かなり遊びながら弾きました。楽しかったー!

撮影・編集

いつも素敵な映像にしてくれる「地域と映像」のシュガーさん、
国分寺の投票率を1位にPJ」を一緒に立ち上げたひろっきー、
抜群の安定感「モヤモヤピープルもやぴ」のシュガーKさんの3人が、
一緒に撮影してくれました。ありがとうございました✨

これからも、まちなかピアニストとして、まちのピアノをたくさん弾いて、その魅力をお伝えしていきたいなと思っています!

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