アステロイド・シティ
ウェス・アンダーソンという一風変わった映画監督の存在を知ったキッカケは2014年に公開された「グランド・ブダペスト・ホテル」だった。
正しい見方というものが映画に限らず僕にはよく分かっていないのだが、彼の映画もまたストーリーなど開始早々にどうでも良くなってしまう。理路整然と筋書きを追って物事を考えることがそもそも苦手な身としては意図された散漫さと数秒に一回やってくる鮮烈なシンメトリー構図にただ溺れているだけで幸せなのだ。
しかし、前作「フレンチ・ディスパッチ」はコロナ寛解直後というタイミングもあり、苦痛この上ない映画であった。三部作の中盤、学生運動のエピソードではひらすら具合が悪くなっていく自分との戦い。なのに記憶に刻まれたのはそのシーンばかり。
そんな意味もあって今回の「アステロイド・シティ」はリベンジだったのだ。
だがしかし、名匠ウェスは一筋縄ではいかない。「ムーンライズ・キングダム」への懐古ムードが全編を支配し「フレンチ・ディスパッチ」の手法も濃厚、というハイブリッドな新作を前に終始狐につままれたような気持ちから逃れることが出来なかった。
不条理と不可思議がもたらす混乱。
でも何故か観終わると爽快。
ジェフ・ゴールドブラムのあの役にはしてやられた。ああゆうことを平然と要求されるから出演俳優の顔ぶれがあまり変わらないのだなと妙に納得。
惚れてまうやろ〜、なんだよなぁ。