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踊る理由

詐欺引退宣言を撤回しようと思う。

かと言って5年もの間舞台から遠ざかっていた訳だから以前のようにバリバリ踊るのは土台無理だし、数々の暴言を吐き散らしてきたこんな老害にオファーを下さる方はおそらく余程の変人だろう。

外部への出演は絶望的なので、ひとまず今の自分に出来ることは映像作品を撮るなら撮るで自己満足レベルのものではなく他者の視点で合格点を出される完成度のものを創ることから改めて始めようと考えて「Bibo no aozora」を撮った。

製作中に共演者やスタッフと交わされた言葉や公開後に寄せられた視聴者からの感想のお陰で、風車を巨人と錯覚して戦いを挑んだドン・キホーテのようにならずに済んだ。


自分が意図していない部分を評価されたり、己の滑稽さを思い知らされることは快感である。一番厄介なのはダメな自分を理解しつつも転落に歯止めが掛からない状況であるからして、軌道修正どころか新天地に飛べる体力がまだ残っている事に心底感謝。

何よりも最近、踊ることや体を動かすことが楽しい。

趣味が高じて生業となったこの仕事に長らく義務感しか感じられず純粋に楽しいと感じる時間がほぼ皆無だったが、このところふと気付くとダンスを始めた頃の夢中だった感覚に戻っていることが増えた。

先生だから上手なお手本を見せなきゃとかこの表現で観ている人を感動させたいとかそういう邪心は全く無い。

とにかく無心で一生懸命踊ることが楽しい、のだ。


だから同じように楽しんで絵を描いている人の気持ちは絵を見ればすぐ分かる。プロレスをこよなく愛する彼の絵には度々有名なレスラーへのオマージュが登場し、デフォルメされたフォルムや表情に真っ直ぐな愛と愉しさを感じる。

苦しみから捻り出される芸術も尊いが、特段取り沙汰されるような苦労もしていない僕のような人間は「楽しいから踊る」、それで良いと思えるようになった。

※以下4点は本柳礼文氏の絵を拝借しました。8/28まで東京駅構内のギャラリーにて展示されていますので興味を惹かれた方は本柳氏のInstagramをチェックしてみてください。

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