カミナリ
外では嵐が吹き荒れ、雷の閃光だけが誰もいない街を照らしていた。
その街は毎年続いた疫病の影響で急速に廃れてしまっていた。誰もいない、何もない、真っ暗な廃れ切った街———。
そんな中、嵐の混乱と破壊を受け入れながら、暗い夜道を歩いている人がいた。彼女はサラという。
サラはこの街と共に心中するつもりだった。荒れ果てた街を見て絶望的な気分に自分が飲み込まれてしまいそうになる度に、彼女は瞼を閉じていた。
瞼を閉じている間だけは、「これは夢だ」と信じることが出来るからだ。
しかし、この嵐の夜、誰もいない街を歩きながら、嵐による大きな破壊を目の当たりにし、彼女は興奮を覚えた。
誰の心の中にも、偉大なる破壊を愛す感情がある。爆発、倒壊、衝突、陥没———。
人々は、偉大なる破壊を前に胸を高鳴らせる。
すべてをひっくり返してやる。『私は、自分の人生を切り開くのだ』と、サラは思った。
嵐による破壊と混沌を受け入れながら、彼女の胸はドキドキしていた。サラは自分のために新しい人生を切り開く決心をしたのだ。
涙が彼女の頬を伝い、大地に零れ落ちた。そこから芽が出て、花が咲いた。その花は、「君はもう大丈夫そうだね」と彼女に告げた。
サラは過去の苦しみを捨て、自分のために新しい人生を切り開いていくことを決意した。彼女はゆっくりと目を閉じ、誰もいない嵐の夜に歩き出した。
カミナリが落ちる。
ピカドン、ピカドン。
全てをリセットする。全部、壊してしまえ。
そして彼女は嵐の中、夜の暗闇に消えた。
眩い閃光が無残な姿になった街を照らしても、彼女の姿はもうどこにもなかった。
彼女の行方は、誰も知らない。
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